遭難記−09−
女は無言のまま、俺が寝ている寝台に近付いて来た。そして寝台の横に立つて着ているものを脱いだ。俺は仰向けに寝たまま、女の様子を見ていた。 女は、俺の横に身体を横たえると、俺に抱き着いて来た。俺は、据え膳食わぬは男の恥と思ったが、モナのことが気になった。モナは、俺のことを自分の男と思っている筈である。どうしたものかと躊躇しているときである。再び、入り口の扉が開けられて、月の光が差し込んだ。俺が、そっちを振り向くと、やはり女が立っていた。体つきからモナだとわかった。 モナは、ゆっくりと近付くと、女に何か話し掛けた。女も笑い声で何かを答えている。モナは、何か優し気な言葉を女に掛けると、そのまま出て行った。女が、再び俺に抱き着いて来た。どうやら、ここに来ることはモナの了解済みのようだった。 俺は、女を抱いた。女は喜びの声をあげた。その声が外に聞こえそうなので、俺は慌てて、身体の動きを緩めるほどだった。 俺のところに食事を運んで来る女は5人ほどいた。次の日の夜から、彼女達が交替で俺の家にやって来た。最初の女がミク、次がミト、そしてナム、ミナ、ルリである。いずれも16歳から20歳ほどの年齢だった。 無論、モナが来ることが多かったが、彼女達が鉢合わせをすることはなかった。俺は、モナが俺のところに来る女達の順番を決めているのではないと思った。村を歩いているときも、彼女達が仲良さそうに話をしているのを度々見掛けたから、憎み合ったり嫉妬しているのではないと思えた。 村には、若い男達もいる。俺のところに来る女達が、若者と親しそうに話をしているのを見掛けることがある。時には、一緒に森の中に入って行くこともあった。どうやら、性に関しては極めて開放的な民族のようだった。 村の祭りがあった。 広場では大きな焚き火が焚かれ、その周りに人々が車座になって座っている。焚き火の傍には大きな鍋が置かれて、料理が煮られていて、人々の前には椰子の葉が敷かれ、焼いた魚や煮た芋、果物などが並べられていた。しばらくすると、焚き火を囲んで踊りが始まった。男も女も太鼓や弓の形をした弦楽器の音に合わせて、踊りに興じている。身体を前後に揺すりながら激しく動く派手な踊りである。 踊りが終ると、男も女も談笑しながら料理を食べながら酒を飲んでいる。俺の横には、モナが座っていた。最初は独特のにおいになかなか馴染めなかったどぶろくのような酒だが、何度か飲んでいるうちにあまりにおいも気にならなくなり、今ではすっかりなじみ深いものになっていた。 しばらく飲んだり食べたりした後で、また踊りが始まった。男も女も、激しい踊りに陶酔状態に陥っているように見えた。一人の女が、踊りの輪から離れて俺の前に来ると手を差し伸べた。踊りの輪に加われと言っている。ちょっと躊躇したが、笑顔を作って女に導かれるまま踊りの列に加わった。 ―続く― |