春の行方−35−
翌日のみんなの出発時刻は朝の10時である。仁川の空港に見送って行ったが、それから佳津枝が来るまでに5時間もある。光太郎は、それまでの時間をどうすることもなく空港内の店を見て回ったり、食事をしながらひたすら佳津枝が来るのを待っていた。 佳津枝の乗っている便の到着を告げるアナウンスがあった。到着ロビーで出迎える。 佳津枝はノースリーブのシャツにジーンズ姿だった。光太郎の姿を見付けると、大きく手を振った。二人は、これから泊まるホテルにタクシーで向かった。二人共韓国語はダメなので、運転手に地図の入ったホテルの案内書を見せた。タクシーの中でも、佳津枝はやや興奮気味で、話し続けていた。 ホテルでチェックインを済ませると、部屋に入ってキスを交わす。抱擁の中、佳津枝の乳房の膨らみが光太郎を刺激した。光太郎が佳津枝をベッドに押し倒そうとすると、「待って、シャワーを浴びてから。」と言った。一緒にシャワーを浴び、愛の時間を過ごした。 夏の日もすっかり沈んで、外は暗くなっている。光太郎は、佳津枝を夜の明洞の町に連れて行った。行き先は、昨日の居酒屋である。韓国酒と韓国料理に佳津枝も舌鼓を打っている。異国でのことだと思うと、いつも佳津枝のマンションで飲んでいるのとは違った雰囲気である。 隣に座った青年が韓国語で佳津枝に話し掛けて来た。佳津枝がキョトンとしていると、今度は英語で話し掛けて来る。どこから来たのかとか、韓国は初めてかなどと聞いている。佳津枝は、笑顔で話に応じていた。更に、市内を案内しようかなどと言っている。光太郎は、嫉妬のようなものを覚えていた。その感情が刺激になったのか、光太郎はホテルに帰ると、再び佳津枝に挑んで行った。 翌日は、ソウル市内の観光である。光太郎は、昨日まで見て来たところを案内して歩いた。まずは、市内が見渡せるソウルタワーに上り、その後で景福宮、博物館、李王朝の位牌の祀られた宋廟(チョンミョ)などを見て歩き、午後には南大門の市場に行った。ここは、日本で言えばアメ横のような雰囲気の町である。食材や、ブランド物に見立てられたバッグなどを売っている。 「おねえさん、これ本物の偽物。安いよ。」などと声を掛けて来る。佳津枝は楽しそうにその様子を見ていたが、さすがに豚の頭が並べられている店の前に来ると気味悪そうにしていた。 南大門の後は、仁寺洞(インサドン)の町を歩く。ここは骨董品や美術品などを売っている店が並んでいて、佳津枝は興味深そうに見ていた。そしてお土産にするのだと言って、小さな人形を買っていた。 この日の夕食はレストランでとったが、メニューはやはり韓国料理である。光太郎は焼肉を、佳津枝は鶏料理であるサンゲタンにした。ビールを飲みながらの韓国料理は美味しい。佳津枝は、本当に楽しそうにしていた。 3日目は、午前中に明洞の町を散策して過ごし、午後からはスーパーでキムチやお菓子などのみやげを買いに行った。 観光地を歩き回るのも楽しいが、こうしてゆっくり過ごすのも異国の旅の楽しみである。佳津枝はしばしば光太郎のと腕を組んで歩いていた。 4日目は帰国である。楽しい時間の過ぎるのは早い。飛行機に乗っても、佳津枝は楽しかったを繰り返していた。 帰りの飛行機の中、佳津枝が言った。 「また、外国に行きたいわね。」 「そうだね。」 光太郎が答えた。 −続く− |