男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2026/08/15 12:10:59|小説「人妻」
人妻−14−
人妻−14−

 月曜日に、出社するとすぐに洋子がコーヒーを淹れてくれた。普段と変わらない態度だった。金曜日のことなど、まるでなかったようである。それを見て、私は安心した。
 社内不倫は、タブーだった。ましてやそれが上司と部下など、社内で噂にでもなれば今の地位だって危なくなる。そのことは、洋子も十分承知のことだった。
 社外の不倫は、トラブルが無ければ問題はないが、新聞や週刊誌ネタにでもなれば、会社も放っておけない。
 私は、先日洋子が言った社内恋愛をする者がいるということを思い出し、そういう目で人を見るようになった。お互いが独身であれば問題はないが、不倫となると問題になる。人事の耳に入れば、放ってはおかないだろう。
 私は、第2課長の武田の素振りがおかしいのに気が付いた。彼は、仕事ができるので私が抜擢した男だったが、部下の女性社員といかにも親しげにしていた。時たま、目配せをしたりしている。私が気付くくらいだから、女性社員の間では気付いている者がいると思われる。
 ある日、打ち合わせを理由に彼を呼び出して一緒に飲みに行った。そこで単刀直入に切り出した。
「こんなことを言うのも気が引けるのだが、君と吉永君が親しげにしているのをよく見掛ける。周囲の目もあるし行動に気を付けてくれないか。」
 彼は、素直に頷いた。
「申し訳ありません。以後気付けます。」
「君の行動にとやかく言うつもりないが、君の経歴に傷がついてもいけないからね。さあ、飲もう。今日は、それだけが言いたかったんだ。」
 吉永は、「ありがとうございました。」と言って、私のグラスにビールを注いだ。
 私と祥は、毎朝の通勤で一緒になった。満員電車の中で、抱き合うようにして、お互いの耳元で囁き合う。
「また逢いたいね。」
「えゝ、私も。」
「今日はどう?」
「すみません。今日は、会議があります。」
「そうか、それは残念だ。僕は、こんなに元気なのに。」
 私がそう言うと、彼女は私の股間に手をやって言った。
「まあ、可哀そうに。私のおっぱいも寂しがっていますわ。」
「早く、二人を逢わせてやりたいね。」
「本当に、そうですね」
そんな会話を交わしているだけで、二人は十分に快感を楽しんでいた。
 結局、二人の都合が合ったのは、次の火曜日だった。二人は、朝の電車の中でお互いの予定を確かめ合った。
「今日は大丈夫だね。」
「えゝ、何としても都合をつけますわ。あなたこそ、大丈夫?」
「あゝ、僕も何としても都合をつけるよ。」
 そう言うと、人が見ていないことを確認して、祥の額にキスをした。
         ―続く−







2026/08/14 16:21:30|小説「人妻」
人妻−13−
人妻−13−

 洋子の告白に、私は戸惑っていた。
 洋子も魅力的な女性である。彼女がここまで言うからには、酒の勢いがあるとはいえ相当の覚悟があるのだろう。思い付きで言うような彼女ではない。
 とはいえ、彼女は独身の若い女性である。いかに今の若い女性がセックスにドライであるとは言え、そのまま彼女と恋仲になっては彼女を傷付けてしまう。だからと言って、ここで拒めば彼女の面子を潰すことになってしまう。
 しばらく考えた末に言った。
「君の好意は嬉しいけど、女将も送り狼になるなと言っただろう。」
「これは、違います。私の方から誘っているのですから。」
「う〜ん・・・・・」
「ねっ、いいでしょう。部長には好きな人がいるのはわかっています。その邪魔をする気はありません。」
 弱みを握られている私は、とうとう頷いた。今来た道を引き返して、ホテルに向かった。その間、洋子は私の腕に自分の腕を絡ませていた。
 ホテルに入ると、すぐに洋子の方から抱き着いてキスをしてきた。私もキスを返す。
 衣服を脱がせると、真新しい淡い空色をした下着が目に入った。洋子が言った。
「勝負下着です。私は、こうなることに願をかけて着て来ました。」
 私は、最初から洋子がこうなることを目論んでいたことに気が付き、今までのためらいが消えた。私は、洋子を抱きしめると、強く唇を押し付けた。
 長い抱擁と愛撫の後で、私達はひとつになった。洋子は、初めての経験ではなかったが、経験を積んでいるようでもなかった。私の愛撫と、行為に静かではあるが、悦びの反応を示していた。
 私は、祥の人妻としての経験豊かなセックスに比べて、新鮮なものを感じていた。
 終わった後で、洋子が言った。
「部長、素敵でした。とても気持ちが良かったです。」
「そう、それは良かった。君も、とても素敵だったよ。」
「部長って、とても逞しいのですね。」
「それは君が素敵だからだよ。相手が魅力的な女性でなければ、とてもこうはなれない。」
「褒められて嬉しいです。部長、大好きです。」
 そう言って、私にキスをした。私は、その言葉に勇気を得たように、再度彼女に挑んで行った。
 一緒にシャワーを浴びて衣服を身に着けたときには、11時を回っていた。二人は、ホテルを出ると一緒にタクシーで家路に向かった。その間、ずっと手を握り合っていた。
         ―続く−







2026/08/13 14:58:02|小説「人妻」
人妻−12−
人妻−12−

 小料理屋には他に客はいなくて、静かな雰囲気である。私はバーボンを、洋子はスコッチのハイボールを飲んでいた。洋子は、女将とすっかり意気投合しているようだった。
 ふと時計を見ると10時を過ぎていたので、私が言った。
「そろそろ帰ろうか。独身女性を遅くまで引き留めると悪いからね。」
すると女将が言う。
「そうよ、それに送り狼にならないようにしてくださいよ。お嬢さんも、毒牙にかからないように気を付けてね。」
「はい、承知しました。」
ここでまた洋子と女将は声を揃えて笑った。
 店を出ると、タクシーを拾うために駅まで歩いた。洋子は、私の腕に手を絡ませている。
「楽しいお店ですね。女将さんも素敵な人ですし。」
「そうだね、久し振りに行ったけど、ちゃんと名前を憶えてくれたよ。」
「もう長くお店をやっているのでしょうね。」
「そうだね。若い頃からやっていたようだけど、浮いた話ひとつなくやってきたみたいだよ。」
「今でもあんなにきれいなのだから、若い頃は随分きれいだったのでしょうね。」
「そうだろうね、男からの誘惑も多かったと思うよ。でもこの世界は、男の噂が出たらおしまいなんだよ。店を長く守って来たということは、身持ちも良かったのだろうね。」
「そう言う意味では、サラリーマンやOLの方が自由ですわね。」
「アハハッ、そうかも知れないね。うちの社内でも、いろいろあるのだろうね。」
「はい、遊び上手な男性も女性もいます。何人か知っています。」
「ふ〜ん、そうなのかなあ。うちの部にもいるの?」
「それは勘弁してください。告げ口のようになりますから。」
 駅が近付いたとき、洋子が言った。
「部長、私、今日は帰りたくありません。」
「・・・・・」
「私、部長のことが好きです。」
そう言って、私の顔を見詰めている。
 私は、どうしたものかと考えていた。さっき、女将が言った『送り狼にならないように』という言葉が、頭をよぎっていたのである。
         ―続く−







2026/08/12 12:34:56|小説「人妻」
人妻−11−
人妻−11−

 5分ほど遅れて、洋子がやって来た。着替えて来たのだろう、明るい空色のスカートに白い襟の広いブラウスを着て、カーディガンを羽織っている。私は、早速彼女に聞いた。
「飲み物は何がいい?」
「ビールをいただきます。」
 私達は、まずビールで乾杯をした。
「いつもありがとう。君には感謝しているよ。」
「こちらこそありがとうございます。」
 乾杯を終えて、私はステーキとワインを注文した。洋子も同じものが良いと言う。
 洋子は、しなやかにナイフとフォークを使ってステーキを口に運んでいた。食べ終えたところで、洋子が言った。
「部長、今週はお疲れのようでしたね。」
「そうかなあ。」
「特に火曜日は、何度もあくびをなさっていました。」
「う〜ん、そうかなあ。」
「部長、恋人ができたのじゃありません?」
「・・・・・」
「いいのです。私は、それについて何も言う気はありません。でも、部の女性には、部長の一挙手一投足に目を付けているのがいます。それで敢えてこんなことを申し上げました。」
「そうか、ありがとう。気を付けるよ。」
「すみません、余計なことを申し上げました。」
 食事が終わったとき、私が言った。
「もうちょっと飲んで行くかい?」
「嬉しいですわ。」
 私は以前行ったことがある小料理屋に行った。50代の女将が一人でやっている家庭料理を出してくれる店である。
「あらっ、三宅さん。お久し振りですね。今日は、素敵な女性とご一緒なのですね。」
「うん、うちの会社の川野辺君だ。いつも世話になっているので、今日は謝恩会だよ。」
「お嬢さん、三宅さんってなかなかのやり手でしょう。仕事もできるのでしょうね。私は、会社のことはわからないけど、商売柄男を見る目はそれなりにあるつもりです。」
「そうですね、素晴らしい方です。それに優しいので、女性社員の憧れの的です。」
「そうだと思います。でも、気を付けてくださいよ。こういう人と恋に落ちると、後が大変ですから。」
「はい、肝に銘じておきます。」
 そう言って二人は笑った。
         ―続く−







2026/08/11 13:17:42|小説「人妻」
人妻−10−
人妻−10−

 次にデートをしたのは、2週間後の月曜日だった。食事をし、いつものホテルに行った。
 毎朝の電車で会っているとはいえ、身体を交えるのは10日ぶりである。朝の電車の中では、高まる欲望を抑えていた。その反動もあってか、私達はむさぼるように愛し合った。
 心地良い疲労感が残る愛の行為の後で、私が聞いた。
「休日は何をして過ごしているの?」
「家事や買い物が多いですけど、たまに公園を散歩したりします。」
「僕も、普段は身体を動かさないので、休日は良くウォーキングをするよ。」
「この季節は、気持ちが良いですね。」
 国分寺から行くとすると、立川にある昭和記念公園だろうと思った。私は、そこで逢えたらと思ったが、彼女の迷惑になってはと思い話題を変えた。
 そして再び、彼女に挑んで行った。
 月曜日の情事は、どうしても疲れが残る。それは仕事とは違う疲れだった。
 翌日の朝、庶務担当の洋子がオフィスに置いてあるコーヒーを持って来て言った。普段は自分で淹れるのだが、今日は彼女が気を利かせて持って来てくれたのである。
「部長、お疲れのようですね。」
「そうかい?そうでもないけどね。」
「でも、さっきあくびをなさっていたわ。」
「そうだったかなあ・・・」
「コーヒーで元気になってください。」
 洋子は、笑いながらそう言うと、私の前から立ち去った。
 彼女は、入社2年目に入るが、なかなか気が利いた女の子である。営業1課の所属であるが、私のスケジュール管理や、経費関係の書類の整理、来客時の茶の接待など、秘書的な役割を果たしてくれていた。細かいことに気が付くし、営業部全体の動きにも確かな目を持っているようで、「最近、営業4課の元気がないみたいです。」などと情報を入れてくれる。そんな彼女だけに、自分と祥の関係を見抜かれているのではないかと危惧した。
 洋子とは、最初のとき挨拶の意を込めて食事を共にしたが、その後はしていない。私は、社内報を持って来た彼女に言った。
「川野辺君、君の都合が良い日に食事でも付き合ってくれないか?」
「嬉しいです。ありがとうございます。」
そう言って大きくお辞儀をすると、自分の席に戻って行った。
 しばらくすると、私のプライベートの携帯にメールが届いて、洋子から金曜日の都合が良いと書かれていた。私のスケジュール管理をしている彼女だから、駄目だと言うことはできなかった。
 定時退社日の金曜日、私は先に渋谷にあるレストランに行って、洋子が来るのを待っていた。
         ―続く−