男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2026/06/09 4:21:19|小説「春の行方」
春の行方−23−
春の行方−23−

 一恵のメモは、仕事納めの日に書かれたもので、これから岡山の実家に帰る、良い正月を迎えて欲しい。来年もよろしくという内容のものだった。光太郎は、それを読むと、再びポケットに仕舞い、眠りに就いた。
 故郷の駅に着いたのは、昼を過ぎた時間であった。本当ならそこから在来線に乗り換えるのだが、今回は佳津枝が車で迎えに来ていた。持っていた両手の荷物の片方を手に取りながら、佳津枝は笑顔で出迎えた。
「明けまして、おめでとう。スキー、お疲れさま。骨を折ったりしなくて良かったわ。心配していたのよ。」
「おめでとう。そんな怖いところには行かないから大丈夫だよ。もうちょっと上手になると危ないかも知れないけどね。」
「あまり、無理しないでね。まだ入社して日が浅いし、怪我でもすると大変だわ。」
「うん、でも佳津枝の車に乗るのと、どっちが危ないだろうね?」
「マア、憎らしい! こう見えても、私、ドライブテクニックには自信があるのよ。」
 ちょっと怖そうな目をしたが、そういう佳津枝の表情には光太郎と会っている安堵感のようなものが感じられた。
 車は、そのまま光太郎の家に向かった。当然のように佳津枝も引き止められ、一緒に夕食をした。お互いの家がすぐ近くであるから、運転の心配をすることはない。勧められるまま、佳津枝もビールを飲み、楽しい時間を過ごした。
 とは言っても、佳津枝だけはあまり喋らない。そんな佳津枝を代弁するように、妹の美子が言った。
「お兄ちゃん、スキーに行ったんだって。誰と?」
「うん、会社の仲間だよ。」
「女の人も一緒にいたの?」
 その質問に、光太郎はちょっと戸惑った。
「うん、いたけど、5人で行ったんだ。心配しなくても大丈夫だよ。それより、美子はスキーなんかしたことがないだろう。なかなか面白いぜ。」
 やっとの思いで光太郎が答えた。
「ふ〜ん・・・・・」
 美子は、納得していないような顔つきであったが、続けた。
「お兄ちゃん、明日はどうするの? 佳津枝さんと、初詣にでも行って来たら。」
「そうだねえ。でも佳津枝の都合はいいの?」
「ええ、私は大丈夫だけど、でもお家の方達との積もるお話もあるのでしょう。」
「いいのよ、光太郎。佳津枝さんと行ってらっしゃいよ。」
母親が、横から手助けをしてくれた。
 元旦の夕食が終り、光太郎は佳津枝を家まで送って行った。僅か数百メートルの距離であるが冬の夜道は暗い。佳津枝の家の近くまで来たとき、光太郎は彼女を抱き寄せてキスをした。
 翌日の朝、佳津枝がやって来た。車は、光太郎の家の庭に置いてあった。佳津枝は、家族に挨拶をすると、光太郎を乗せて走り始めた。
「普賢様にお参りする?」
「そうだね。去年もお参りしたよね。」
バスと違って、車で行くとすぐだった。バスだと1時間以上もかかるのだが、車だと15分もあれば着いてしまう。
 正月はさすがに初詣客が多く、参拝するのに行列を作らなければならなかった。佳津枝は、今年も長い間祈っていた。
 参拝が終ると、岬の方に車を走らせた。瀬戸内の海は、冬でも静かである。二人は車から降りて浜辺を歩いた。冬の日が暖かく二人を包んでいる。
 象鼻が岬は、島が砂洲で繋がれ、その先に更に砂嘴が伸びていて、その姿が象の鼻のように見えることからこの名前がある。瀬戸内海でも絶景の景色のひとつなのだが、交通の便が良くないせいか訪れる人は少ない。
 二人は、お互いの想いは秘めつつも黙ったまま海岸の松林を歩いていた。
               −続く−







2026/06/08 19:02:45|エッセイ
同じ日に仕入れたのに・・・

 男がレストランで食べた海老の料理が新鮮で美味しかったので、1週間後に彼女を連れて行きました。ところが全く美味しくありません。男がシェフに文句を言いました。
男  :「なんだ、これは。この前来たときには美味しかったのに、なんで今日のは不味いんだ!」
シェフ:「おかしいですねえ。この前のと一緒に仕入れた海老ですけどねえ。」

 

 鶴光さんの落語からでした。








2026/06/08 12:43:38|男の手料理
今日の昼飲み

 茶臼山トレッキングから下りて来ての今日の昼飲みはバーボン、アテは竹輪&キムチ豆腐でした。面倒臭いので、これで昼食を兼ねます。
 月曜日の午後、貧しい年金生活者のささやかな幸せなひとときです。








2026/06/08 5:08:28|小説「春の行方」
春の行方−22−
春の行方−22−

 スキーは、28日から大晦日までの予定である。
 28日の午後に上野駅を出て、途中で乗り換えながら鈍行列車で行く旅であるが、これが楽しい。最初は混んでいた電車も、東京から離れる毎に座れるようになる。5人はボックスの席を確保して、ビールやジュースなどを買い込んで既に宴会である。ここでも陽子はヒロインだった。冗談を飛ばしながらも笑顔を絶やさず喋り続けている。今までのヒロインだった久恵も、完全にお株を奪われたという感じで、静かにしている。
 スキー場のホテルに着いたときには、既に冬の陽は沈みあたりは薄暗くなっていた。男3人、女2人の別々の部屋に荷物を置くと、そのまま夕食である。このときも、陽子は賑やかだった。その話に、男達の笑い声が絶えない。食事を終えてから温泉に入り、その日は床に就いた。
 翌日からスキーが始まる。光太郎と陽子のために、大室はスキーや靴を借りるのを手伝ってくれた。いざスキーを付けると、これが大変である。レッスンのために緩やかな傾斜を歩いて行くのに何度も転んだ。それは陽子も同じで、転ぶ度に照れ笑いをしている。
 光太郎と陽子は、スキー場の開催する初心者用のレッスンを受けることにした。久恵と飯坂は、大室が教えることになり、3人はリフトの方に向かっていた。
 レッスンは疲れたが、運動神経の良い光太郎は比較的早くコツを飲み込むことができ、午前中には、緩い斜面でのボーゲンくらいは滑れるようになっていた。それに比べて陽子は大変で、何度も転んでいた。
 一日が終わったときは、みんな疲れていたが、特に光太郎と陽子はグッタリとしていた。食事のときも、陽子は静かだった。食事を終って、飲みながらお喋りをしているとき、コクリコクリと居眠りをしていた。
 3日間のスキーはアッという間に終った。
光太郎は、緩斜面でなら何とか滑れるようになっていた。やっと面白さがわかった頃である。また来たいと思った。
 スキーを終えて寮に戻ると大晦日の夕方である。光太郎は、佳津枝の家に電話をした。最初、父親が出てきたが、すぐに佳津枝に代わった。
「今、スキーから帰って来た、明日、そっちに帰るよ。」
「スキー、どうだった?楽しかったのね。」
「うん、お陰さまで。」
「明日は、何時ごろ?」
「うん、朝なるべく早く出るから、昼には着けると思う。」
「じゃあ、時間が決まったら教えて。駅まで迎えに行くわ。私、免許を取って車を買ったのよ。」
「そう、大丈夫?」
「アラッ、やだ。出発したら、電話をちょうだいね。」
「うん、じゃあネ。」
「はい、良いお年を。」
光太郎は、スキーの疲れもあってすぐに寝た。
 元旦の朝は忙しかった。昨日の夜、疲れで早く寝たので、荷造りも残っている。やっと支度を終えて寮を出ようとしたとき、ふと郵便受けを見ると一恵からのメモがあった。それを読むゆとりもないままポケットに押し込むと、急いで駅に向かった。
 元旦の電車は空いていた。初詣に行ったらしい人達が、破魔矢を持っている。
 座席指定を取らなかった新幹線の自由席も空いていた。光太郎は、ポケットに手を入れたとき、紙片があるのに気が付いた。一恵からのメモだった。
           −続く−







2026/06/07 17:44:21|エッセイ
竹輪1本の幸せ
 幼い子供の頃です。
 町の魚屋の早稲田のおじさんが、行商で山の麓で坂の上にある我が家まで自転車に魚を載せてやって来ていました。
 ある日のこと、母親と僕がいるところにおじさんがやって来て、僕に竹輪を1本くれました。戦後のまだ貧しい時代、僕にとっては、最高級なおやつです。
 ところがおじさんが行ってしまうと、すぐに母親は僕から竹輪を取り上げ、家族みんなのおかずにしてしまいました。
 恨むつもりはありませんでしたが、竹輪が1本丸ごと食べられる幸せが失われたことは大きなショックで、70年以上が過ぎた今でも覚えています。
 昨日、防府に行ったとき、竹輪を買って来ました。肉厚で、立派なものです。喜寿となった今、それを丸齧りしながら、竹輪が1本丸々食べられる幸せを味わっています。







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