人妻−19−
私と祥との逢瀬は月に2、3回の割合で続き、部下の洋子とは2〜3か月に一回の割合で続いていた。 2年ほどしたとき、私に異動の内示があった。北九州の工場へ、工場長としての赴任である。この人事は重役へのステップであるから、みんな喜んでくれたが、私は複雑な気持ちだった。祥とも洋子ともこれまでのようには逢えなくなる。本社への出張はできるが、長く工場を空けることはできないし、本社の人間も放っておかないだろうから自由はほとんどないと言ってよいだろう。 次の朝、出勤の電車の中で、そのことを祥に告げた。 「寂しいです。」 「僕も寂しいよ。宮仕えの辛いところだ。」 「でも、出張で帰って来ることはあるのでしょう。」 「うん、それはあると思うけど、帰って来ても、どこまで自由な時間が取れるかどうかわからないんだよ。」 「でも、メールがあるわ。メールで連絡を取り合えば何とかなるわよ。」 「うん、なるべくそうしようね。」 「ねっ、行く前に二人で壮行会をしましょう。」 「うん、そうしよう。」 そうは言ったものの、転勤までの日々は忙しかった。後任者の紹介を兼ねた得意先への挨拶は多かったし、相手の会社から送別会と称しての飲み会の誘いも多かった。 やっと祥と逢えたのは、転勤の3日前だった。連日の飲み会で、私は少々疲れ気味だったが、彼女と逢えるのは嬉しかった。 私達は、恵比寿の焼き肉屋で逢った。祥が、疲れているだろうからと気を使ってくれたのだった。 「連日、お忙しいのでしょう。」 「うん、酒も嫌いじゃないけど、こうも飲み会が続くとねえ。」 「お疲れ様です。今日は、ゆっくり飲んでください。」 そう言って、潤んだ目で私を見詰めた。その目は、言葉とは裏腹にこの後のことを期待しているようだった。私は、酒を飲むのを控えた。 私達は早めに店を出て、早速、恵比寿のホテルに向かった。 部屋に入ると、早速抱き合ってキスをする。それは舌を絡ませる濃厚なものだった。次回、いつ逢えるかわからないと思うと、祥も私も余計に情熱的になっていた。 その日、私は疲れているにもかかわらず、3度身体を交えた。 「次は、いつ逢えるのでしょうね。」 「うん、当面の予定はわからないけど、連絡するよ。」 「早く逢いたいです。」 「今は、遠くにいても携帯のメールで連絡できるから便利だね。なるべく連絡をするよ。」 「九州へは、奥様もご一緒?」 「いや、単身赴任だよ。」 「そう、じゃあ私が九州へ行ってもいいわね。高校の修学旅行で行ったけど、その後行っていないのです。」 「それはいいね。その頃には、僕も地元の地理にも慣れているだろうから、君を案内できると思うよ。」 その日、タクシーで帰る間、二人は手を繋ぎ合っていた。 ―続く− |