男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2025/01/30 6:26:43|小説「妖精の歌」
妖精の歌−03− ​​​​​​​
妖精の歌−03−

 私達は駐車場に向かい、美鈴の車に乗り込みます。美鈴の運転は、なかなかのものでした。けっこうスピードは出すのですが運転そのものは慎重で、停まるべきところは停まり、スピードを落とすべきところはゆっくりと走っていました。
 富士山の五合目までは1時間ほどで着きました。天気も良く、五合目からの景色は遠く山並みが見え最高でした。二人並んで景色に見入っていましたが、寒いので私は美鈴の肩を抱きます。最初に美鈴の肩に手が触れたとき、美鈴の体がビクッと震えたようでした。しかし寒くなって、すぐに茶店に入ります。
「ちょっと寒いね、蕎麦でも食べようか。」
「ええ。」
 私は、美鈴といっしょにいることで、日頃の落ち着きをすっかり失っていました。自分では冷静を装っているつもりなのですが、ときどき声がうわずったりします。
 茶店での蕎麦は、とてもおいしく感じました。多分、普段の日に町で同じ物を食べたとしたら決しておいしいとは感じなかったと思いますが、山の上であること、美鈴といっしょにいることでとてもおいしいと感じることができたのです。
「私と会って、こんなおじさんなので失望しませんでしたか。」
「いいえ、とても楽しいですわ。」
「そう言ってくれて、ホッとしました。」
 普段、飲み屋なんかでママさんや女の子をからかっているときにはもっと陽気にフランクに喋ることができるのですが、今日はなぜかうまく話ができません。それは若い美鈴を相手にしているからなのですが、上手に話をしようとすればするほどぎこちなくなってしまいます。話も、つい途切れがちになってしまいました。
 いっしょに蕎麦を食べ終わると、再び車に乗って山を下りて行きます。途中、遅い桜が咲いています。
「きれいな桜だね。ちょっと降りて見てみようか。」
「じゃあ、車を停めるわ。」
 私達は車を降り、桜のところに行ってみます。このあたりの桜は背丈も低く、花も小さいのですが、それが可憐さを引き立てています。
「じゃあ、そこに立ってごらん。写真を撮ってあげよう。」
 美鈴が一本の桜の木の前に立ちます。私は、美鈴と花の美しさに感動し思わずシャッターを押し続けていました。
               ―続く―







2025/01/29 14:35:34|小説「妖精の歌」
妖精の歌−02−
妖精の歌−02−
 美鈴も、私の会いたいというメールに、すぐにOKの返事をくれました。
 美鈴は、土曜日は仕事が多く、その代わりに平日に代休をとることが多いというので、美鈴が休みの日に合わせて私も休暇を取って会うことにしました。
 その日からの私は、夢のような毎日でした。美鈴に会える、そのことで人生がバラ色のように思えてきていました。バラのような毎日の間にも、私は美鈴とメールで連絡を取り続け、会う時間と場所を相談しました。その間私はメールの中で、美鈴を女として意識しているような表現は極力避けるようにしていました。自分ではサラリとした表現のつもりですが、美鈴がどのように受け取ってくれているかはわかりません。
 約束の日が次第に近づいて来ます。それとともに、期待感の反面、私は一種の不安のようなものを感じるようになっていました。美鈴と会うのはいいけど、会って嫌われたらどうしよう、美鈴はまだ若いし夢見る乙女なのに目の前にこんなおじさんの姿を見て失望されたらどうしようなどと不安が募ってきます。
 しかしとうとう約束の日がやって来ました。私達は新富士の駅で朝の9時過ぎに会うことにしていました。今日は日帰りの出張だということにして家を出て、東京駅に出て新幹線に乗り、新富士まで行きます。新富士に着いて改札口で見渡すと、手を振ってくれる女性がいました。とても清楚な感じの女性です。初めて会うのに、私はそれが美鈴だとすぐにわかりました。
「美鈴さん。はじめまして。三橋です。」
「はじめまして、美鈴です。」
お互いに遠い親戚に久し振りに会ったような、親しそうで他人行儀なちょっと不自然な挨拶でした。
「美鈴さんって、こんなに素敵な人だったんだ。」
私が、間を持たせるように言います。
「いつも楽しいメールをありがとうございます。」
美鈴が、上手に合いの手を打ってくれます。
「じゃあ、どこかその辺でコーヒーでも飲もうか。」
「もし良かったら、どこかドライブでもしません?私、車で来ていますから。」
「いいね、でもどこがいいだろう。私は、この辺はあまり知らないのです。」
「じゃあ、私が案内しますわ。富士山に行って見ましょう。それに富士急ハイランドは平日なので空いていますけど。」
「遊園地か、それもいいね。子供に返ったような気持ちになれるしね。」
話はすぐに纏まりました。
                     ―続く―







2025/01/29 4:52:35|小説「妖精の歌」
妖精の歌−01−
妖精の歌−01−
 
 その日は、朝から雨でした。間もなく梅雨入り宣言がされてもおかしくない時期のことです。前からメール交換をしていた美鈴から、和歌が届きました。そこには、こう書かれていました。

「空泳ぐ 雲に変わりて ふわふわと 君住む町に 辿り着けたら」

 まだ30歳にもならない美鈴と、50歳になろうとしている私のメール交換が続いているのも考えてみれば不思議なことです。メールフレンド紹介コーナーで知り合って、交換するメールの内容でお互いのフィーリングがピッタリ合って、こうして1年も続いているのです。私の方からは趣味で書いているエッセイを、美鈴からは日々のでき事や、ときおり和歌や俳句を送ってくれていました。人と人の心が結ばれるのに、年齢は関係ないようにも思います。最初はインスピレーションで近づいたとしても、その後お互いが理解し合おうとすれば、人間関係は深まって来るのです。この句を読んで、私の胸がなぜか騒ぎました。それは不思議な感情でした。大きく胸が騒ぐのです。それは句に感動したというより、句の内容、句から伝わって来る美鈴の心に感動し、恋心のようなものが急に芽生えたのでした。
 人と人の心が年齢差を超えるものであっても不思議はないのですが、それが男と女の間であったとすると事情は違って来ます。50歳、もう世の中のことを概ね知り尽くし、何があっても驚くこともなく、また感動する気持ちさえ失い掛けている年齢なのに、こんな胸騒ぎがする、それは自分にとっても信じられないような現象でした。
 そのときから、私はいても立ってもいられないような気持ちになっていました。美鈴はどんな人だろう、保育園で保母さんをしているというから優しくて子供好きなのだろうし、メールの内容からしてもきっと頭のいい人に違いないなどと考えますが、実際に会ったこともなければ写真さえ見たことがありません。
私は、空想が膨らむとともに、「一度でいいから会ってみたい。」と思うようになりました。
 思い込むと、居ても立ってもいられなくなるのが私の性格です。しかし、一方で躊躇がありました。私と美鈴の年齢差、しかも私は結婚しており、それに美鈴を女として意識しているという引け目です。もし会いたいなどというメールを送って美鈴に嫌われたらどうしようという気持ちもあり、しばらく私は悶々とした日々を送りました。そういう心の中の障害が大きければ大きいほど、会いたいという気持ちは募ります。
何日かそんな苦悶の日々を送り、とうとう自分の感情に勝てず、「美鈴さんに会いたい。」というメールを送りました。
                     ―続く―







2025/01/28 13:11:51|その他
ユダヤ人
 今日は、第二次世界大戦終了時にユダヤ人が強制収容所から解放された日で、ドイツでもその記念行事が行われていると報じています。
 ナチスによる悲劇は到底許すことはできませんが、しかしユダヤ人が悲劇の民族かと言えば、決してそうではなかったと思います。
 彼等は、古代ローマの時代からローマ人に打ち解けようとせず、ユダヤ教を固守していました。その後、世界に広がって行きましたが、そこでも商魂逞しく蓄財に励みました。地元に打ち解けようとせず、金儲けに走ったのです。今では、アメリカのロビー界に食い込んで、金の力を背景にイスラエルに有利なようにアメリカの政治を動かしています。
 ユダヤ人は、大戦後長い間住んでいたパレスチナの人々をその地から追い払って、イスラエルを建国しました。
 国際社会において正義が何かは難しい問題ですが、僕は決してユダヤ人を好きになれません。







2025/01/28 4:31:49|エッセイ
誤解
 六本木に勤務していた頃のことです。ある日の夕方、美人事務官のM子さんがオフィスの僕のところにやって来て、2人で話をしていました。そのときの彼女の表情は真剣で、ちょっと憂いを含んでいて、どっちかと言うと思い詰めているような感じでした。
 彼女が帰って行った後で、我々の様子を見ていた連中が言いました。
「課長、彼女の表情を見ましたか。彼女は、きっと課長のことを思い詰めているんですよ。課長も罪なことをしますねえ。」
 M子さんは独身です。僕も、その気になりました。
「ああ、罪なことをした。自分は女性に関心を持っているとは言え、妻子ある身である。彼女にそんな思いをさせてはいけない。」そう思いながら、悩みました。
 数日後、彼女に会ったときに、彼女の方から言いました。
「先日は、ごめんなさい。せっかく課長にお会いしながら、あんな憂鬱な顔をしていたなんて。私、あのとき親不知が疼いて痛くて仕方がなかったんです。」
 どうやら虫歯が疼いて我慢できない状態だったらしく、憂いを含んだ顔も、物思いに沈んだ表情も、みんな虫歯のせいだったのです。
 女性、特に美人の場合は、ちょっとした表情の変化でも、しばしば男に誤解を与えますので、気を付けましょう。