妖精の歌−13−
私がベッドに座って冷蔵庫から取り出したビールを飲んでいると、バスタオルを纏った美鈴が出て来て、私の横に腰掛けます。私は、もうひとつのグラスを美鈴に渡してビールを注ぎました。 二人でビールを飲み干してグラスを置くと、私は美鈴の手を取り引き寄せます。美鈴の身体が、勢い良く私の腕の中に飛び込んできます。私はしっかりと美鈴を抱き、キスをします。熱い抱擁と口づけは、いつしか激しい愛撫から、愛の行為へと進んで行きました。 その夜の短い時間の間に、私は二度も美鈴と激しい愛の行為を繰り返していました。二度目が終わった後でしばらくまどろんで、ふと時計を見ると11時を回っています。このまま一緒に一夜を過ごしたいという強烈な欲望に駆られますが、もしそうなると家に帰って一波乱あるでしょう。私は美鈴と別れなければならないようなことはしたくない、そんな想いから敢えて言いました。 「もう、帰らなくては。」 美鈴は、ちょっと寂しそうな顔をしましたが、私の想いを悟ったのでしょう、軽く頷きました。私は、ベッドから出ようとする美鈴を押し止め、一人ベッドから出て衣服を身に着けます。そしてベッドの美鈴にキスをすると、「また、会おう。」と言って部屋を出て行きました。 帰りの電車の中、この次にどうすればまた美鈴と会えるだろう、そのことばかりを考えていました。翌日から、あのとき私が美鈴をそのままホテルに置いて来たことで深い後悔の念に悩まされていました。別れ際の美鈴の寂しそうな顔を見たとき、一緒に一晩過ごすべきだったと思うのです。 しかし、一方で、あれで良かったんだという気持ちもありました。もしそのまま泊まれば、嘘の下手な私はきっと妻に責められ疑われてしまうでしょう。そうなると、美鈴と会うことすらできなくなってしまいます。 二度目に会ってから、益々、私の美鈴に対する思いは益々深まって来ました。切ないというか、会っていないことに対する不安感というか、とにかくじっとしていられない心境なのです。 美鈴もまた、そんな思いをメールで書いて寄越しましたし、時々、歌にして送ってくれました。
紫陽花の 心変わりを恐れつつ 雨は止めども 想いはやまず この歌は、美鈴が仙台に旅しているときに送ってくれたものですが、美鈴の気持ちが見事に、しかも素直に表現されています。こんな歌が、私の美鈴に対する思いを更に深いものにしていました。 ―続く― |