赤い糸・白い糸−04−
神様達は、休憩時間をも惜しむように働いていた。その成果によっては、ボーナスの額が違うというお達しが出ていたのである。 しかし、さすがに3日目、4日目の夕方になると疲れが出て来る。夕食のとき、酒を飲む者も出て来る。なにしろお神酒には事欠かない。神社に行けばこも被りの樽が山のように置かれているが、それらは人間が献上したものである。 「宮崎さん、そんなに飲んで大丈夫ですか?」 「ウイッ、大丈夫だとも。こう見えても芋焼酎で鍛えていますからな。」 「でも、今日も残業があるんでしょう。」 「な〜に、このくらい飲んでも平気ですわ。九州男児、何のこれしき。」 そう言うと、宮崎から来た神様は、コップの酒を一気に飲んだ。見ると、テーブルには既に徳利が5本も倒されていた。 「さ〜て、仕事にかかるか。」 そう言って立ち上がった足はふらついていた。 その頃下界では・・・・・ 宮川陽一は、小室孝子と交際を始めて5年になる。陽一は医師で孝子は看護師だった。陽一がインターンとしてこの病院にやって来たときから交際が始まった。最初に積極的だったのは陽一だった。忙しい仕事の中で、慰めが欲しくて孝子を誘って食事に行ったのが最初で、その後交際を続けた。見習い医師の給料は忙しい割には安く、経済的な面や生活面で孝子は陰になり日向になってずっと陽一を支え続けていた。そのことは陽一も恩に着ていたし、感謝もしていた。そして2年前から同棲をするようになった。そんな二人に、周囲もいずれもが、陽一が一人前の医師になったら結婚するものだと思っていた。 2年間のインターンが終り、陽一は一人前の医師になった。 その夜、二人はささやかなお祝いのパーティをした。孝子は、腕を振るって手料理を作り、シャンペンを食卓に並べた。陽一は孝子の手料理に舌鼓を打ち、孝子は陽一がインターンを終えたことを心から喜んでいた。 それから1週間ほどしたときの昼休みのことである。病室を回って診療していた陽一が廊下に出たとき後ろから肩を叩かれた。見ると院長である。院長は、「これが終ったら、ちょっと僕の部屋まで来てくれないか。」と言った。今まで院長に呼ばれたことなどなかったので何事かと驚いた。 診療を終えて院長室に行くと、すぐに椅子を勧められた。 「君は、この度インターンを終えたそうだね。おめでとう。」 「ありがとうございます。」 「ところで君はいくつになったのかね。」 「はい、25です。」 「結婚する気はないかね。」 「・・・・・・・」 「実は娘がいてね。薬科大を出ているんだが、早めに結婚させたいんだ。そうして君がこの病院を継いでくれればと思っているんだよ。」 「・・・・・・・」 「なに、急いで結論を出すことはない。考えて見てくれないか。」 「はい。」 陽一は、そそくさと部屋を出た。 貧しい家庭に育った陽一は、一生開業などできそうもなく、今のまま行けば病院勤めで終るのがおちである。降って湧いたような話に、瞬間孝子のことも忘れていた。 −続く− |