男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2020/11/01 12:25:33|エッセイ
本
 今日から11月、いよいよ晩秋です。秋の夜長はやはり読書でしょうか。
 最近は、本を買うことはなくなり、すっかり図書館通いになりましたが、昔はそれなりに新本を買っていました。かなり処分したのですが、お気に入りの本が本棚ひとつ分ほど残っています。
 見ると吉川英治の全集、山岡荘八の全集、塩野七海の「ローマ人の物語」、山本周五郎の文庫本、長谷川町子さんの「さざえさん」や「いじわるばあさん」などがあります。
 それらは、今まで何度か読み直しました。
 今更難しい本は読めませんが、読みなれた本は夜長の時間を過ごすのにいいですね。
 本も、人によって好みとか傾向があるようです。皆さんは、どんな本が好きですか?







タクシードライバー−44−
タクシードライバー−44−

 気がついたら、俺は淑子と裸で抱き合って寝ていた。いつこうなったのだろうと思うが、とにかく自然の成り行きだった。
「わたし、幸せ・・・」
淑子が言った。
 俺の腕の中の淑子は可愛かった。いつも事務所で見たり、飲んでいるときの彼女とは全く違って見えた。”俺の女”、そんな感じである。
「ああ、俺も幸せだよ。」
「本当?」
「本当だとも。」
「嬉しい!」
そう言うと、俺の首に手を廻して、キスをした。
俺達はしばらく抱き合ったままでいた。
 それからは、二人で逢うと、俺のアパートに来て、一緒に寝るようになった。セックスをするのも、当たり前のようになって行った。
 ある日、淑子が言った。
「ねえ、ここに一緒に住んでいい?」
俺だって、一緒にいれば何かと助かる。すぐに賛成したが、何分にも部屋が狭い。新しい部屋を探すことにした。
 二人で不動産屋に行ったり、実際のアパートやマンションを見ているときの淑子は本当に嬉しそうだった。
「私もお金を入れるから、いい部屋にしましょう。」とか、「将来のことも考えなくちゃね。」などと言っている。
将来のこととは結婚のことだと思うが、まだそんな話は何もしていない。しかし、俺は何も言わなかった。
 結局、決めたのは木場にある3DKのマンションだった。家賃は10万円、俺には大変な金額だが淑子は私が半分出すからと言って、そこがいいと主張した。決めるとすぐに引越しをすることにした。大した荷物はないので、レンタカーのトラックを借りることにしたが、問題がひとつあった。俺の方はいいのだが、淑子の荷物である。淑子は親と一緒に住んでいる。俺は、まだ淑子の親と顔も合わせていない。
 荷物を運ぶには淑子一人では無理だし、相手の親に手伝ってもらうにせよ、俺が運ぶにせよ、親と顔を合わせないわけにはいかない。俺は淑子がどう考えているのか気になったが、何となく俺の方からは聞きにくくてしばらく黙っていた。
                  −続く−







タクシードライバー−43−
タクシードライバー−43−

 結局、その日の午前中、淑子は俺のアパートにいて帰って行った。
 それからしばしば俺の家に来るようになった。無論、文雄も入れて3人で飲むことはあったが、二人で飲みに行くことも多くなっていた。
 一日の乗務が終って、売り上げを渡すとき、淑子の方から「今日、飲みにいかない?」と小さな声で言い、俺が黙って目でOKの合図をするといった具合である。
 二人で飲みに行った後では、コンビニで買い物をして俺のアパートに行くのが定番になっていた。しかし、二人がキスをするとかいうことはなかった。しばしば淑子はそういう雰囲気を作り出していたが、俺はそんなことをしてはいけないと思っていた。まだ結婚には早いし、一度キスでもすれば逃げられないような気がしていたのである。
 俺達は、飲んでお喋りをして、11時になると淑子が帰って行く。最初の夜、前後不覚まで飲んでいたので、深酒をすることはなかった。そんなことが何回か続いた。
 ある日のこと、同じように飲んで俺のアパートに行こうということになった。最初に飲んでいるときから、淑子は手に小さな荷物を持っていた。
 部屋に入ると、淑子が言った。
「寛君、誕生日おめでとう!」
「えっ、ああそうか!」
俺は、淑子に言われて自分の誕生日だったことを思い出した。
「ワイン、買ってきたの。一緒に乾杯しましょう。」
そういいながら、荷物を解くと、中から飾りリボンのついた高級そうなワインが出て来た。
「お店に来る酒屋さんに頼んでおいたの。お勧めのワインだそうなのよ。」
「ありがとう!」
俺は素直に嬉しかった。家でも、大きくなってからは誕生祝いなどしてもらったことがなかった。
 その日、俺は久しぶりにたくさん飲んだ。ワインの後は、家にあった日本酒を二人で飲んだ。一升瓶が空になりかける頃には、二人ともかなり酔っていた。
「寛君、好き!」
そう言って突然淑子が俺に抱きついてきたとき、俺はそのまま淑子を抱き締めていた。淑子は、目を瞑ったまま、俺の方に顔を向けている。淑子の豊かな乳房が俺の胸を圧迫している。その柔らかさを感じたとき、俺の血が騒いだ。俺は、淑子の唇に、俺の唇を押し当てていた。
                 −続く−
 







タクシードライバー−42−
タクシードライバー−42−

 強烈に喉が渇いて目覚めたら、真夜中だった。俺は布団にシャツとパンツの姿で寝ていて、その上には布団が掛けられていた。横には、淑子がやはり下着姿で毛布を被って寝ている。俺は起き上がって、流しに行き、水道の水を飲んだ。
 再び布団に潜り込むが、頭が割れるように痛い。昨夜、淑子に注がれるまま飲んだことは覚えているが、その後の記憶がない。淑子もかなり飲んでいたのは覚えている。窓から差し込む明りを頼りにテーブルを見ると、きれいに片付けられている。 淑子を起こすのも気が引けて、俺は再び布団を被って寝た。
 目が覚めると、明るい光が差し込んでいた。
「起きたのね。」
「う〜ん、頭が痛いよ。今、何時だい?」
「もう9時よ。」
「昨日は、随分飲んだみたいだね。どうやって寝たか、覚えていないんだ。」
「飲んでいるうちにそのまま寝ちゃったわ。」
「そうか・・・」
 枕元を見ると、俺のジーンズとシャツが畳まれている。自分で脱いだものか、淑子が脱がせたものかがわからない。記憶が飛んだ後で何があったのか、不安になった。
 淑子が、「ご飯とお味噌汁を作ったわ。食べましょう。」と言うので、俺は不安な気持ちのまま、食卓に着いた。味噌汁の他に、玉子焼きや板わさの切ったのも並んでいる。そんなのは冷蔵庫になかったから、朝買い物に行ったに違いなかった。
「お味噌汁、味はどう?」
「うん、美味しいよ。」
そうは言ったものの、食事をしている間も不安が付きまとい、二日酔いもあって、味はよくわからない。
「俺、どうやって寝たんだろう?」
「随分酔っているようだったから、私が寝かせてあげたの。すぐにいびきをかいて寝ちゃったわ。」
「そうか・・・」
俺は、一瞬、何かしなかったかと聞こうと思ったが、それはよした。
「泊まって大丈夫だったの?両親、心配してない?」
「大丈夫よ。お友達のところに泊まるって言っておいたわ。」
「そうか・・・」
「ねえ、今日はどこかに行かない?」
「う〜ん、頭が痛いんだ。」
「そうね、随分飲んだものね、じゃあ一日家でゆっくりしているのね。」
「うん。」
「じゃあ、わたしもしばらくいていい?このまま朝帰りじゃ、却って格好がつかないの。」
「うん、いいけど・・・」
 俺は食事を終ると、また布団に潜り込んだ。淑子は食器や鍋を洗っていたが、それが終ると俺の寝ている隣に座った。俺は、頭が痛いので黙っていたが、淑子も黙ったまま座っている。
 淑子は何か話したがっている様子だったが、俺は敢えて黙っていた。
                −続く−
 







タクシードライバー−41−
タクシードライバー−41−

 その時から、淑子は俺に対して途端にサービスが良くなった。
「ねえ、今日は私のおごりだから、どんどん飲んで!」
「だって、”ひろみ”で飲んで来たばかりじゃないか。そんなには飲めないよ。」
「いいの、私、嬉しいんだから飲んでよ。」
そう言いながら、俺のためにもう一杯生ジョッキを注文した。
「私ね、最初に寛さんが入社して来たときから、いい人だって思ったわ。」
「俺は、そんなにいい人間じゃないよ。だって、前の会社がうまく勤まらなくて途中で辞めたくらいだし、付き合いも下手なんだ。情けない人間さ。」
「でもうちの会社じゃエリートだわ。他の運転手の人達って、いい加減な人が多いの。メーターと金額が違うことはないけど、タクシーを私用に使ったり、どう見てもお金がおかしいときがあったりするのよ。」
「まさか!」
「本当なのよ。」
「でも、俺だっていい加減なところが多いよ。」
「ねえ、これから寛君の家に行っていい?」
「エッ!掃除もしていないし、汚いんだ。」
「いいの、わたし掃除してあげるわ。」
「いいよ、そんなことしなくても。今度、昼間お出でよ。」
その場では、淑子は何も言わなかった。
 1時間ほどその居酒屋にいて、俺たちは店を出た。地下鉄の駅まで来て、「じゃあな!」と俺が言っても、淑子は着いて来た。
「どうするのさ?」
「わたし、寛君の家に行くの。」
「弱ったなあ・・・」
「弱ることなんかないわ。」
「だって、こんな遅い時間だよ。」
「ねえ、明日は遅出なんでしょう。もう少し、寛君の家で飲んで行きたいの。」
俺は、黙って来た電車に乗った。
 とうとう淑子は俺のアパートに来た。玄関に入ると、すぐに寝室に行き、万年床の布団を畳んで押入れに放り入れた。そして冷蔵庫からビールを取り出すと、淑子と俺のグラスを出して注いだ。
「何にもつまみがないんだ。」
「あたし、買って来るわ。そこにコンビニがあったでしょう。」
「いいよ、俺が買って来るよ。」
「じゃあ、一緒に行きましょうよ。」
俺達は、一緒にコンビニに行って、ビールとつまみを買い、淑子はそれにウィスキーを買い足した。俺がお金を出そうとすると、淑子は自分が払うと言ってきかず、結局、淑子が全部払った。
 アパートに戻ったときには10時を過ぎていた。淑子は楽しそうだった。よく喋り、俺にどんどんビールを注いだ。俺は、いつしかかなり酔っ払っていた。そして自分の記憶がだんだん薄れて行っていた。
                   −続く−







<< 前の5件 [ 1451 - 1455 件 / 2753 件中 ] 次の5件 >>  << 最新の記事へ >>