タクシードライバー−44−
気がついたら、俺は淑子と裸で抱き合って寝ていた。いつこうなったのだろうと思うが、とにかく自然の成り行きだった。 「わたし、幸せ・・・」 淑子が言った。 俺の腕の中の淑子は可愛かった。いつも事務所で見たり、飲んでいるときの彼女とは全く違って見えた。”俺の女”、そんな感じである。 「ああ、俺も幸せだよ。」 「本当?」 「本当だとも。」 「嬉しい!」 そう言うと、俺の首に手を廻して、キスをした。 俺達はしばらく抱き合ったままでいた。 それからは、二人で逢うと、俺のアパートに来て、一緒に寝るようになった。セックスをするのも、当たり前のようになって行った。 ある日、淑子が言った。 「ねえ、ここに一緒に住んでいい?」 俺だって、一緒にいれば何かと助かる。すぐに賛成したが、何分にも部屋が狭い。新しい部屋を探すことにした。 二人で不動産屋に行ったり、実際のアパートやマンションを見ているときの淑子は本当に嬉しそうだった。 「私もお金を入れるから、いい部屋にしましょう。」とか、「将来のことも考えなくちゃね。」などと言っている。 将来のこととは結婚のことだと思うが、まだそんな話は何もしていない。しかし、俺は何も言わなかった。 結局、決めたのは木場にある3DKのマンションだった。家賃は10万円、俺には大変な金額だが淑子は私が半分出すからと言って、そこがいいと主張した。決めるとすぐに引越しをすることにした。大した荷物はないので、レンタカーのトラックを借りることにしたが、問題がひとつあった。俺の方はいいのだが、淑子の荷物である。淑子は親と一緒に住んでいる。俺は、まだ淑子の親と顔も合わせていない。 荷物を運ぶには淑子一人では無理だし、相手の親に手伝ってもらうにせよ、俺が運ぶにせよ、親と顔を合わせないわけにはいかない。俺は淑子がどう考えているのか気になったが、何となく俺の方からは聞きにくくてしばらく黙っていた。 −続く− |