男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
タクシードライバー−67−
タクシードライバー−67−

 これで恭平との話はついた。後は、智子である。智子にどう言うかは難しいと思った。智子は俺を命の恩人だと思っているようだし、好意すら持っているようである。それを恭平にとって変えろというようなものであり、彼女が納得するかどうか怪しいものである。いずれにせよ、このままでいることはできない。とにかく俺は、当たってみることにした。
 翌日の仕事の帰り、早速俺は智子に電話をした。
「こんにちは。僕です。」
「ああ、寛さん。今度は、いつ来て下さるの?」
「実は、紹介したい人がいるんですけど。」
「エッ、どなたでしょう。」
「うん、僕の友達で、いい人なんだ。彼なら、いろいろと智子さんの相談にも乗ってくれると思うんだ。」
「どういう人なんですか?」
「うん、人生で苦労もしているし、きっといい相談相手になってくれるよ。」
「マア・・・」
智子は、必ずしも納得していないような口調である。
「ねえ、近いうちにどこか喫茶店でも会わない?都合のいい日はない?」
「それは、いつでも暇ですけど・・・・・」
「うん、じゃあ、また日にちは連絡するよ。早い方がいいと思うので、明日にでも。」
それだけ言うと、俺は電話を切った。今あまり長く話すより、その方がいいような気がしたからである。それから早速恭平のところに電話をして、時間と場所を決めた。
 翌日の夕方、俺は恭平を連れて、智子のマンションの近くの喫茶店で待っていた。恭平は何となく落ち着かない様子である。
 約束の時間に少し遅れて、智子がやって来た。赤ん坊を抱いている。
「すみません。この子が泣いていたもので。」
そう言い訳をしながら、智子は俺達の前に座った。
「紹介します。こちらは吉田恭平さん、僕の友達です。それからこちらが、山本智子さんです。」
「はじめまして。」
「はじめまして。」
二人は、お互いを訝るようにしながらもお辞儀をした。
「実は、恭平さんは事情があって、奥さんや子供さんと別れて暮らしています。智子さんもご主人と別れて愛ちゃんと二人きりの暮し、何かと相談に乗れるんじゃないかと思って。」
「だけど、俺は、そこまでできるかどうか・・・」
「いや、何もカウンセラーをするわけじゃないんだ。ちょっと困ったことや、男でないと困るようなことがあったら手伝ってあげればいいんだ。ネッ、智子さんもその方が助かるでしょう?」
「ええ・・・」
二人とも、何となく煮え切らない返事である。しかしここで失敗したら取り返しがつかない。俺は、焦った。
「僕もしばらくは智子さんのところに電話をするけど、これからは恭平君が電話をする、それでどうだろう?」
「はい。」
「はい。」
二人とも、返事はしたけど、相変わらず浮かない顔をしている。
「じゃあ、お互いの電話番号を後で連絡します。いいですね。」
それから俺は雑談のようなことを話し掛けるが、二人はあまり口を開こうとしない。
そのうちに赤ん坊が目を覚まして泣き始めた。
「じゃあ、また連絡しますから。」
そう言うと、3人とも喫茶店を引き上げた。
                  −続く−







2020/11/23 13:17:08|旅・サイクリング
旅の思い出(中国:西街)

 桂林の漓江(りこう)下りの下流の町、西街です。昔ながらの街並みが残っています。







2020/11/23 12:49:25|エッセイ
眠れない夜

 眠れないことは辛くて、精神的に不安定になることさえあります。
 僕は、寝付きは良い方で、眠れないことはほとんどないのですが、それでもたまに寝そびれて、眠れなくなることがあります。
 学生の頃、西田幾太郎博士の「哲学概論」を買いました。学生であるからには、これくらいのことは勉強しておかなければと思ったのです。ところが、内容が難しくて数行読むだけで疲れて眠くなってしまいます。
 そこで眠れない夜には、「哲学概論」を読むことにしました。すると30分もしないうちに眠れます。脳が、難しい本を読むことと睡眠のどっちが楽かを自然に判断して、僕を眠りに導いてくれるのです。
 僕の「哲学概論」は、最初の数ページだけは手垢が付いていますが、それから後のページは新品同様でした。
 眠れないことがなくなったとき、古本屋に出しましたが、けっこういい値段で売れたように思います。
 皆さんは、眠れない夜はどうしていますか?








タクシードライバー−66−
タクシードライバー−66−

 俺は智子のことについて悩んでいた。智子は精神的に弱いところがある。だからこそ自殺をしようと思ったりするのである。俺がこのまま見捨てるわけにもいかないし、かと言って俺がずっと面倒をみるわけにもいかない。
 そのとき、ふと恭平のことを思い出した。恭平は、前に俺の車の中でタクシー強盗をしようとした男である。彼は、今は真面目に働いているし、智子の相談相手になれるのではないかと思った。どっちも寂しがり屋であるから、いろいろ相談するにはいいのではないかという気がしたのである。
 俺は早速、恭平に電話をした。
「実は、頼みがあるんだけど。」
「あっ、兄貴、久し振りです。頼みだなんて、改まって何ですか?」
「うん、ちょっと相談に乗って欲しいと思って。」
「嫌ですよ、そんな水臭い言い方。兄貴は命の恩人だ。何でも言ってくださいよ。」
「実は、お前に人を紹介したいと思っているんだ。」
「俺にですか?」
「そうなんだ。」
「誰です?」
「女なんだ。」
「まさか見合いとか、結婚相手じゃないんでしょうね。もう結婚はコリゴリですよ。」
「いや、そういうわけでもないんだが。」
「じゃあ、何です?」
「詳しい事情は後で話すから、一度時間をくれないか。」
「それはいいですが。」
「よし、明日の晩、仕事が終ったらひろみに来てくれないか。」
「いいですよ。」
とりあえず、そこまで話して、翌日事情を話すことにした。
 次の日、ひろみに行ってみると、もう恭平は一人で飲んでいた。
博美も久し振りなので、喜んで迎えてくれた。
「兄貴、お久し振りです。」
「兄貴というのはよしてくれないか。」
「へい、兄貴。」
「なんだ、まだ言ってる。マア、いいか、それより本題だ。」
「へえ。」
「実は、以前、入水自殺をしようとした女を助けたことがあるんだ。」
「へえ。」
「それでその後も心配で何度か逢っているんだが、俺も子供が小さいし、なかなか思うようにいかないんだ。」
「へえ。」
「その女、放っておくと、またいつ自殺するかわからないんだよ。」
「へえ。」
「そこで、お前に彼女の相談相手になって欲しいんだ。」
「へえ、でも、どんな女なんです。」
「まだ歳は30歳そこそこ、赤ん坊が一人いるんだ。」
「へえ。」
「近いうちに逢ってやって、良かったら相談相手になって欲しいんだ。」
「わかりました。でも、癖のある変な女じゃないでしょうね。」
「いや、それは大丈夫だ。とりあえず、向こうの都合を聞いてみるから、時間はまた電話をするよ。」
「へえ。」
それから久し振りに博美を交えて話をしながら飲んだ。
                 −続く−
 







タクシードライバー−65−
タクシードライバー−65−

 そんな智子の顔を見ていると、いじらしくてどうしようもなくなる。あどけないというか、無心というか、自分の気持ちがそのまま顔や態度に現れているのである。赤ん坊が可愛いのは、その心が純真というか、真っ白で邪心も駆け引きもないからだと思う。智子はまさに赤ん坊のような心の持ち主である。
 それがいけなかった。俺は、心を鬼にするつもりだったが、智子の悲しそうな顔を見ると、放っておけないような気持ちにさせられた。
「じゃあ、少しだけ、ゆっくりして行くよ。」
「嬉しい!」
そう言うと、智子は俺の胸に顔をうずめた。俺は、どうしようかと思ったが、そっと背中に手を当てて撫でていた。
しばらくそうしていた。
「私、寂しいの。」
智子がつぶやく。
「うん。」
俺は、言う言葉が見つからず、じっと智子の背中を撫でていた。
ふと見ると、愛子がこっちを見て僅かに微笑んだような気がした。赤ん坊でもその場の雰囲気は伝わって来るのだろうかと思う。
「ずっとこうしていたいわ。」
「うん。」
「でも駄目なのね。」
「うん。」
「しばらく、このままこうしていて。」
「うん。」
俺は、また智子の背中をそっと撫でた。
20分もそうしていただろうか。俺は、時計を見た。もう帰らなければ、淑子が心配するだろうと思った。
「ねえ、そろそろ帰らなくっちゃ。」
「そう、もう帰って行っちゃうのね。」
「うん。また来るよ。」
「ねえ、きっとよ。」
「うん。」
そこでやっと智子は俺から身体を離した。
「また明日も電話を下さいね。」
「ああ。」
「それから、また来てね。」
「うん。」
 俺は智子のマンションを出て、逢ってはいけないと思いながらも、また電話をし、次に来る約束をする、自分の意思の弱さに愕然とした。一人でいるときには逢ってはいけないと思いながらも、智子と面と向かうとそれが言えなくなる、それが智子のせいなのか、俺の心の中に智子を好きだと思う気持ちがあるからなのか、自分でもよくわからなかった。
 家に帰ると、淑子が「今日も、いつもよりちょっと遅いわね。」と言った。
俺はドキリとしたが、「ああ、ちょっと話し込んでね。」とだけ言うと、風呂に入った。
 俺は、智子の感触を忘れようとするかのように、石鹸をつけてゴシゴシと身体を洗った。
                  −続く−







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