蛍―06―
二人は、全裸のまま岩に座ってお握りを頬張った。山を歩き、泳いだ後のお握りも美味しかった。
美味しそうにお握りを食べている彼女は、天真爛漫そのものだった。決して自分を飾ろうとはせず、振る舞いが自然そのものなのである。そんな彼女に、私は、色情を覚えることがなかった。全裸の女性を前にして、こんなことは今までになかったことである。それも彼女の、性格から来るものだろうと思った。
30分ほどして、再び彼女が水に入って泳ぎ始めた。私も、彼女の後ろを泳いだ。
夏とはいえ、山に囲まれた谷あいの滝の場所は日暮れが早い。3時には、陽が陰り始めた。私達は、水から出て衣服を身に着けると、帰ることにした。
帰りの車の中で、私は彼女のことを思い出しては、一人で笑顔になっていた。しかし、家に帰って一人で飲んでいると、寂寥感に襲われた。昼間あったことと、今の自分が置かれた立場のギャップが大きすぎるのである。
すっかり恒例になった山に登ってから彼女と滝に泳ぎに行く日が待ち遠しかった。約束の日に雨になったりすると、その日は憂鬱だった。
9月に入ると、山は次第に秋らしくなり、さすがに泳ぐには寒い。
滝から30メートルほど離れた茂みに、岩の洞窟のようなものが見えた。草や灌木に覆われていて、かき分けながら行ってみると、案の定そこに洞窟があった。
入り口は狭いが中は広くなっており、深さが10mほどで天井も高かった。洞窟の前の広場は10m四方ほどあった。私は、洞窟を二人の隠れ家にしたいと思った。
次に山に行ったとき、そのことを彼女に提案すると、彼女はすぐに賛同してくれた。
次の日は彼女が来ない日であったが、私は持って行った鎌や携帯用ののこぎりを取り出して広場の草刈りを始めた。まずは、通路の確保である。滝つぼから洞窟までの草刈りに3時間を要した。
その日から、私は毎日のように洞窟に行って、広場やその周囲の木を伐ったり、洞窟の中の掃除をした。
洞窟の中には切った木と竹で囲いを作り、その中に草を入れてベッドを作った。また川で拾った石で簡単なかまども作った。
石を拾いに川に行ったとき、山女が泳いでいることに気が付いた。次の日、私は、簡単な釣り道具を買って来て、釣ってみた。餌は、石の下にいる川虫である。人が来ることもないので、警戒心も薄いのだろう、魚はよく釣れた。竹串に刺して焼いてみたが、美味しかった。次に彼女が来たときに食べさせたいと思った。
彼女と山で出会ったのは、1週間後だった。私は、彼女を洞窟に連れて行った。洞窟の様子を見た彼女が言った。
「まあ、きれいになりましたねえ。素敵です。」
そう言いながら、洞窟の周囲や中を見ていた。
「川に山女がいるよ。釣って来るから、火をおこしてくれない?」
そう言うと、私は川に下りて行った。30分ほどで6尾の山女が釣れた。洞窟に戻ると、彼女が火をおこしていた。
私は、山女を竹串に刺すと、塩を振って火の傍に立てた。
―続く―