小鳩の風景−25−
私は公園の森に住む小鳩です。 今日も朝から良い天気、昼休みになるとサラリーマンやOL達が公園にやって来て弁当を広げています。彼等の何人かは私達の姿を見つけてご飯を投げてくれますので、それが楽しみで近くにいることが多いのです。 いつもの私の留っている枝の下のベンチにはOLが3人やって来て座り、弁当を拡げました。3人は、いかにも仲が良さそうにお喋りを始めました。 「ワーッ、美智の弁当、いつも豪華でいいわね。」 「これ、お母さんが作るのよ。優香のだって、なかなかじゃない?」 「私のはダメよ。自分で作るから、つい簡単なものになってしまうの。」 「有希も自分で作っているの?」 「そうよ。だって誰も作ってくれる人なんかいないんだもの。」 しばらく弁当談義が続きます。どうやら美智という人が親といっしょに住んでいて、優香さんと有希さんは一人暮らしのようです。 「一人暮らしが羨ましいわ。私なんか、いつも親の監視付きでしょう。息苦しくって。」 「あらっ、親といっしょにいられるなんて幸せよ。弁当だって作って貰えるし、それに何かと経済的にも楽でしょう?」 「違うわよ。この歳になって親の監視付きだなんてたまらないわよ。昨日の日曜日だって父親と言い合いになってしまったの。」 「そうか、確かに経済的には大変だけど、一人の良さもあるのかなあ。」 「聡子なんか、この前も彼氏が部屋に来てくれたって自慢していたわ。私なんか、そんなこと絶対にあり得ないのよ。」 「あらっ、私もそんなことないわよ。寂しいものよ。有希はどうなの?」 「ええ・・・、まあ・・・」 「あらっ、男の人が部屋に来たりするの?」 「だって、ホテルだとお金がかかるでしょう!」 「彼って、どんな人なの?」 「ええ、公務員なの。お正月にパブで知り合ったのよ。スポーツマンだし、とてもハンサムなの。」 「ヘーッ、いいわねえ。なぜ今まで黙っていたのよ。」 「別に隠すつもりじゃなかったの。美智だって、優香だって、彼氏はいるんでしょう?」 「・・・・・」 二人とも、黙っています。 「心配しなくてもすぐにできるわよ。出会いなんて、突然やって来るんだもの。」 「・・・・・」 「私ね、仕事でクサクサして、一人でパブに行ったの。そうしたら後で彼がやって来て声をかけてくれたのよ。それから付き合うようになって、3回目にはホテルに行ったわ。でも回を重ねるうちに、ホテルじゃ勿体ないってことになったの。」 「・・・・・」 「彼ったら、なかなかのテクニシャンなの。私、何人かの男の人と寝たけど、彼が一番パワフルだし、テクニックも凄いの。もう私、彼とは絶対に離れられないわ。」 「・・・・・」 二人は、黙ったまま白け切った顔をしています。そんなことにも気が付かず、有希は喋り続けています。 「ねえ、私達の結婚式には、美智も優香も来てくれるわね。きっと彼、もうすぐプロポーズしてくると思うの。」 「・・・・・」 「アッ、いけない。私、課長に言われた用事を思い出したわ。先に、帰るわね。」 取り残された二人は、しばらく顔を見合わせていましたが、美智が言いました。 「何よ、あの娘。自慢たらしそうによくもあそこまで言ったわねえ。」 「そうよ。なにがプロポーズよ。今にきっと振られるわよ。あの顔で、そんなにもてるわけがないじゃない。きっと体を利用されているだけよ。」 「そうよ、そうよ。もし間違って結婚しても、誰が行ってなんかやるものか。」 「そうだよね。今から行けない言い訳を考えておかなくっちゃね。」 どうやら、女の妬みは鳩よりも人間の方が激しいようです。 ―続く― |