男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/03/28 6:14:22|小説「遅かった春」
遅かった春−02−
遅かった春−02−
 
 焼酎のボトルを追加すると、沙千恵が話を続けた。
「ホント、最近の男ってどうなっているのかしら。これじゃ人類は滅びてしまうわ。そう言えば、昔は、逞しい先輩達がたくさんいたわねえ。佐藤さんや池田さん、それに田中さんだってそうだし、福田さんだって頑張っていたわ。中曽根さんなんて仕事は厳しかったけど、よく飲みに連れて行ってくれたわね。それに比べて今の部長や課長なんて何よ。自分の出世のことしか考えていないのよ。去年も社長へのお歳暮は何にするかなんて相談しているのよ。あ〜あ、昔の人が懐かしいけど、みんな結婚しちゃったわ。」
「そうねえ、私が入社した頃も、まだいい人が多かったわ。隣の課長だったけど、岸さんなどよく昼食を奢ってくれたわ。帰りには飲みに誘ってくれたし。」
「そうね、あの人も仕事は厳しかったけど、仕事が終ったときには優しかったみたいね。」
「ねえ、沙千恵先輩って、今までにたくさんの男の人と付き合ったのでしょう。」
「でもみんな屑ばかりよ。いい人は奥さんがいるし、独身の男はだらしなかったり、ゴマスリにしか感心がなかったりで、頼りになりそうな男はいなかったわ。加代子はどうなの?」
「私もそうなの。何人かの男性と付き合ったけど、未だにこうして独身でいるんだもの。」
「あ〜あ、いい男はいないかしらねえ。」
「そうねえ・・・・・」
二人はため息をつくと、店員を呼んで「このボトル、キープしておいて。」と言い、店を出た。
「ねえ、今までにあったことをお互いに話しましょうよ。そうすれば、これからのことの何かの参考になると思うの。」
「そうね、また飲んだときに話しましょう。加代子も話すのよ。」
「はい。」
そう言いながら、二人は電車に乗った。
                  −続く−







2021/03/27 7:41:16|小説「遅かった春」
遅かった春−01−
遅かった春−01−
 
 「何よ、あの笹原って新入社員の男の子。情けないったらありゃしない。わたしが、こっちが奢るから飲みに行こうと誘っても、僕、いいですなんて言うのよ。全く、最近の男ときたらだらしないわよね。」
さっきから居酒屋で、後輩OLの加代子を相手に息巻いているのは沙千恵である。
 二人は、上野にある商事会社に勤めている。社員100人ほどの会社で、沙千恵は今年で33歳、加代子は28歳、二人とも独身である。
 沙千恵も加代子も、飛びぬけた美人ではないが十人並み以上の顔である。沙千恵は、高校時代に合気道をしていたとかで、ガッチリした体格、加代子は痩せ型である。
 二人はアパートも同じ方向なので、仕事が終ったときなどよく一緒に飲みに行く。どっちも酒は強い。この前など、ビールを数杯空けた後で、日本酒を1升飲んだことがある。さすがにそのときは店員も呆れ顔で見ていたが、そんなことに頓着する二人ではない。
 沙千恵の方は、結婚に焦っている。高校を出てすぐに会社に入って15年、その間何人かの新入社員が後輩として同じ庶務課に入って来たが、みんな結婚しては辞めて行った。残っているのは加代子だけであり、同じ独身ということで親近感を持っていた。
 今日も1時間ほど残業をした後で、何となくいつもの調子で飲みに行こうということになった。酔うまでは会社での話とか仕事での話などをしているのだが、酔うと大変である。沙千恵の愚痴が始まる。その多くが男に振られた愚痴ばかりである。加代子はもっぱら聞き役に回らざるを得ない。
 この4月に新しく、数人の新入社員が入って来た。先日、沙千恵は、隣の課、と言っても席はすぐ隣になるのだが、に配属された新入社員の一人笹原に飲みに行こうと誘って断わられたのである。そのことをしきりに加代子に愚痴っている。
 テーブルには、この日新しく開けた焼酎のボトルが殆んど空になりかけていた。しかし、沙千恵の話は終りそうにない。
「もう1本いれましょうか?」
加代子がおずおずと聞いた。
                       −続く−







2021/02/18 5:27:02|小説「小鳩の風景」
小鳩の風景−30−(最終回)
小鳩の風景−30−(最終回)
 
 私は公園の森に住む小鳩です。お父さんのことはよく知りませんが、お母さんは体格もよく羽根の色艶もよくて雄鳩の間でも人気者です。妹もお母さん似です。私より、心も体もずっと大人で、私がちっとももてないのに対して、いつも雄鳩達から追い掛け回されていました。それで私は公園の森の小さな桜の枝を定宿のようにしていました。
 消極的な私は、公園で餌を見つけるにしても、素敵な雄鳩をみつけるにしても、いつも他の鳩達の後ろでおとなしく見ているだけでした。
 ある秋の午後です。
 いつものように桜の枝で休んでいますと、一羽の雄鳩がやってきて私の横にとまりました。私は自分の棲家に侵入されたような気分になりましたが、相手が体格も大きく威厳もありそうなので、その場から逃げ出そうとしました。
「ちょっと待って!」
雄鳩が言いました。
私が無視して飛び立とうとすると更に言います。
「ねえ、行かないでよ。君みたいな素敵な鳩はいないよ。お願いだから、僕の友達になってよ。」
私は、今までこんな優しい言葉を掛けられたことがありませんでした。
母親からも無視され、妹からは馬鹿にされ、ましてや群の他の鳩達からは余計に邪魔者扱いされていましたから尚更感動的にこの言葉を受け取りました。
「ねえ、隣町の公園まで飛んでいってみない?」
彼が誘います。
私はちょっと不安でしたが、彼の自信のありそうな態度に、行ってみようかなと思いました。
「さあ、おいでよ!」
そう言うと、彼は雄雄しく飛び立って行きました。私は、有無を言うまでもなく、慌てて彼の後を追って飛び立ちました。
 彼は、力強く飛んで行きます。私は精一杯の力で、やっと彼の後を追いかけていました。
 30分ほど飛んで、小さな公園に着きました。本当に小さな公園なので、他の鳩や小鳥さえいませんでした。
彼が小さな桜の枝に留まったので、私は彼の横に並んで留まりました。
「ねえ君、とても素敵だよ。」
彼がくちばしを私の耳に添えるようにして言います。私はその言葉に、自分を失っていました。まるで天国にでも昇るような気持ちでした。
「ねえ、小さな枝だけど、ここに巣を作ろうよ。これが僕達の家なんだ。」
彼は、人の背よりちょっと高い枝の分かれ目に行って言いました。
「人のよく通るところだけど、意外と人には目立たないんだ。こうして人に近いところにいると、カラスが襲ってこないんだよ。」
彼は私の意見を聞くでもなく、一方的に喋っています。
 でも私は幸せでした。私を愛し、私を信じてくれる彼がいる。私を強引に引っ張ってくれる彼がいてくれるのです。
「じゃあ、いいかい!明日から二人の愛の巣作りだ。ちょっと忙しくなるよ。いいよね!」
相変わらず彼は強引です。
でも私は、そんな彼に一生懸命ついて行こうと固く胸に刻んでいました。
                    −完―







2021/02/17 5:29:18|小説「小鳩の風景」
小鳩の風景−29−
小鳩の風景−29−

 私は、公園の森に住む小鳩です。
 私は、群といっしょに餌を探しに行っている時以外は、森の一角、ちょっと人目につかない場所のベンチの上の桜の枝に留っています。
 今日の昼休みのことです。中年の男と若い女性がベンチにやって来ました。
「課長、今日はご馳走様でした。」
「うん、入社以来3ヶ月が過ぎたけど、君は会社に慣れた?」
「はい、お陰様で。みんないい人なので楽しくやっています。」
「そうか、それは良かった。意地悪する人なんかいないね。」
「ええ、みんな親切にしてくれます。」
「川上さんはどう?彼女はもうすぐ定年だけど、個性が強いので今までいろいろ他の人とトラブルがあったんだけど。」
「彼女、確かに気が強いところはありますが、私には親切ですわ。いろいろ教えて下さるし、よくいっしょに食事に連れて行ってくれたりします。」
「そうか、それは良かった。じゃあ、安心だね。ところで君の係長の三池さんはいい人だろう。元々、うちの課に転入して来るときから、仕事はできるし、人当たりはいいということで評判も良かったからね。」
「・・・・・」
「おや!どうしたの?」
「はい。それが・・・」
「彼女に何か問題があるのかね。」
「あまり言いたくないのですが・・・」
「どうしたの?言ってごらん。君から聞いたなんて言わないから。」
「実は、彼女は大変なんです。上には調子が良いのですが、若い人にはきついのです。課長がおられるときは言葉使いも丁寧ですし、みんなにも親切そうにしていますけど、課長がおられないときは、私や他の課の人達に威張り散らすんです。」
「ヘーッ、ちょっと信じられないけどねえ。」
「他の人達に聞いていただければわかると思います。それに言っていることがちょっと常識を外れているので、みんな困っているんです。」
「そうか、そうだったんだ。」
「その点、川上さんは、言葉はきつくて個性は強いのですが、好き嫌いがはっきりしていて、良いことと良くないことをハッキリおっしゃいます。私、いろいろ評判はあったでしょうけど、川上さんは好きです。」
「人って、見かけや評判と随分違うものだねえ。」
「はい、私もそう思います。」
「特に女性はそうなのかなあ?」
「女性だけではありませんわ。男性だって、田上さんなんか最初はとっつきが悪くて怖い人だと思っていたけど、よくお話しをしてみるととても優しくて親切です。」
「エッ、そうなの?」
「私達にも、間違っていればハッキリ間違っていると教えてくれます。」
「そう言えば、この間、僕が仕事を指示したとき、それはおかしいと言ったのでちょっとカチンと来たんだけど。」
「それがあの方のいいところだと思います。今の仕事に誇りを持っていますし、信念を持って仕事をなさっています。」
「そうか、そうだったのか。僕は、僕に反感を持っているのかと思っていたよ。どうやら誤解をしていたようだね。」
「すみません。余計なことをお喋りして。」
「いや、いいんだ。また聞かせてくれないか。ところで君は、お酒は飲めるの?」
「はい、少しならいただきます。」
「そうか、それなら今度ゆっくり飲みながら聞くとしよう。ありがとう、今日はいいことを聞いたよ。」
それから二人は、ベンチを立って歩いて行きました。
 それにしても、自分の部下のことをよく知らないのは課長で、一番知っていたのは新入社員の若い女の子だったようです。
 人間って群を作って生きているのに、ボスが仲間のことを知らないでも生きていける動物のようです。
                  ―続く―







2021/02/16 2:54:41|小説「小鳩の風景」
小鳩の風景−28−
小鳩の風景−28−

 私は、公園の森に住む小鳩です。
 暖かい爽やかな日の続くこの時期、休日と普通の日の昼休みはたくさんの人で賑わいます。
 昼休みが終ってみんなが帰って行った後、いつものベンチにOLの制服を着た二人の若い女性がやって来て座りました。
「美由紀先輩、今日はお昼、ご馳走様でした。」
「うーん、いいのよ。また、一緒にいきましょうね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「ところで、沙織はもう銀行には慣れた?」
「ええ、でも私そそっかしいから、計算を間違えてばかりいるでしょう。そんなとき、他の先輩達に申し訳なくって!」
「最初はそんなことあるわよ。気にすることないわ。」
「でも、間違えると係長の沢田さんが露骨に嫌な顔をするの。口では言わないけど、あれって本当に辛いわ。いっそのこと、はっきり言ってくれた方がいいのに。」
「彼、前からそうなの。愚図ではっきりしない割には、なかなか根性悪なのよ。もう37歳になるけど、まだ独身でしょう。あれじゃあ、お嫁に行きたいなんて人いないわよ。」
「ところで、美由紀先輩は結婚しないのですか?そんなにきれいなんだから、お嫁に来て欲しいって言う男の人はたくさんいるでしょう。」
「私、銀行の男達を見ていると、嫌になってくるわ。みんな愚図で、ねちっこい性格でしょう。日頃、お客さんの前でニコニコばかりしているから反動が出て来るのよ。私、男は嫌いだわ。」
「そうですよねえ。私も幻滅しましたわ。それに比べると、美由紀先輩は仕事もできるし、気持ちもさっぱりしているし、美由紀先輩のような人を上司に持ちたいです。」
「マア、そんな上手を言ってもだめよ。」
そう言いながら、美由紀と呼ばれた女性が指で額をつつくようにします。
「本当なんです。」
若い方の女性が、ちょっとムキになったように言います。
「それは沙織が素直で可愛いからよ。」
そう言うと、肩を持って抱き寄せるようにしました。
「私、先輩のこと好きです。」
今度は、若い方の女性が抱きつきます。
「可愛い、沙織!」
二人は、しばらく抱き合っていました。
その間に、唇を合わせるようなこともします。しかし、人が来るのを気にするように、すぐに体を離しました。
「ねえ、今度、私の部屋に夕食に来ない?」
「エッ、いいですかあ?」
「沙織は、お酒も飲めるんでしょう?」
「はい、少しなら。」
「じゃあ、メニューはお酒の肴中心がいいわね。」
「私も、手伝いますわ。」
「それなら、今度の土曜日がいいかしら?」
「はい、お願いします。」
「じゃあ、約束よ。土曜日の夕方からにしましょう。飲み過ぎたら、泊まって行っていいのよ。」
「いいですかあ?それなら安心して飲めますわ。それに美由紀先輩の家なら両親も安心しますから。」
「じゃあ、待っているわ。さあ、もうこんな時間、銀行に帰らなくては。」
「はい。」
 どうやらこの二人、並の友情を超えてしまったようです。女と女が好きになり合う、それにしても人間ってなんと不思議な動物なのでしょう。
                  ―続く―







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