恋盗人(こいぬすびと)−07− 芳浦さんは、キスをしながらも、手でTシャツの上から優香の胸に触ろうとしました。優香は、しばらく拒むような仕草をしていましたが、結局、芳浦さんの手を払いのけました。芳浦さんは、仕方なさそうに、再び優香にキスをしていました。私は、そんな二人の行動に、自分の身体の火照りを感じていました。長いキスの後で、身体を離すと、芳浦さんがしばらく優香の耳元で何かを話していました。優香も何か話していましたが、何を言っているのかはわかりません。しかしお互いが好意を持っていることは確かです。 二人が、帰途に就くのを見た私は、急いでその場から離れて宿に戻り、入り口のホールのソファに座って雑誌を読むふりをしていました。すぐに優香が帰って来ました。 私が聞きます。 「どこに行っていたの。景色の良いところとかはあった?」 「ええ、海岸に行っていたの。夕陽がきれいだったわ。」 「そっか、私も誘ってくれれば良かったのに。」 「でも、一人の方がロマンチックよ。京美も明日にでも行ってみたら。」 「そうね、西伊豆は夕陽がきれいなので評判だものねえ。行ってみるわ。」 それから5分ほどして、芳浦さんが帰って来ました。 「先輩、お帰りなさい。お散歩ですか?」 「うん、夕陽がきれいだと言うので、海岸に行ってみたんだ。」 「きれいでした?」 「うん、あれは感動的だったよ。君も、明日にでも行ってみたら。」 「そうですね、先輩。そこに私を連れて行ってくれませんか。」 「う、うん・・・」 「いいでしょう。先輩と、きれいな夕陽を見たいんです。」 芳浦さんは、しばらく困ったように考えていましたが、「うん、わかった。」と言いました。私は、夕食後に三本松のところで逢いましょうと具体的な約束をして部屋に戻りました。 部屋では、優香が楽しそうにしています。 「優香、何か良いことでもあったの?」 「いや、別にそうじゃないけど、夕陽がきれいで感動したものだから。」 「そう、そんなにきれいだったのねえ。」 「そうね、行くといいわ。」 明日は、私が芳浦さんと海岸に行くのです。何も知らない優香は、きっと明日になって焦るに違いないと思いました。嬉しそうに言う優香に、私は心の中で舌を出していました。 翌日の朝食のとき、私は芳浦さんの隣に座りました。芳浦さんの正面には優香が座っています。優香は、食事の間にもときどき芳浦さんの方をうっとりとした目で見ています。私は、手で芳浦さんの太腿に触りました。芳浦さんは、ちょっと驚いたようでしたが、すぐに何食わぬ顔に戻ります。私は、夕方、彼が私と一緒に来てくれることを確信していました。 ―続く― |