男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/05/09 5:29:13|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−18−
恋盗人(こいぬすびと)−18−
 
 日々、常務が出勤するとその日のスケジュールを報告し、用件を聞いて必要な調整するなど、秘書としての仕事をしていましたが、自分の配置希望などプライベートな話をする機会はありませんでした。
 そんなとき比較的早く機会が訪れました。常務が、「三崎君、いつも世話になっているから、お礼に食事に誘いたいのだけど、君の都合はどうかな?」と言いました。私は、「ありがとうございます。お言葉に甘えます。」と答え、その週の金曜日に行くことになりました。
 金曜日、私は、先日買ったばかりのワンピースを着て出勤しました。
 常務が連れて行ってくれたのは、恵比寿にある料亭でした。タクシーが止まったのは、古い格式のある料亭の前で、門を見たところから私は圧倒されましたが、常務は慣れた調子で奥に入って行きます。
 玄関のところで、和服の女将が出迎えています。
「いらっしゃいませ。」
「あゝ、よろしく頼むよ。」
女将が、私達を部屋に案内します。部屋は洋間で、真ん中に大きなテーブルがありました。
「僕も、最近は座敷が苦手でね。この方が楽でいいんだ。」
「助かります。私も、正座は苦手です。」
「ところで、君は、お酒は飲めるのかね?」
「はい、少しなら。弱くて、すぐに眠くなってしまうのです。」
「そうか、わかった。」
そう言うと、女将にビールを持ってくるように言いました。
 食事は、あらかじめ常務から好みを聞かれ、何でも良いと答えて、じゃあ和食にしようと言われていたのです。
 最初にビールが出され、女将が常務、私のグラスへと注いでくれました。
「いつもありがとう。今日は、君に感謝の日だ。遠慮しないで、食べて飲んでくれたまえ。」
「ありがとうございます。私の方こそ、未熟で申し訳ありません。」
「いや、君の仕事ぶりはなかなかだよ。細かいところにも気が付くし、感謝しているんだ。」
「君は、R大出身だよね。それで僕のところに来て貰ったんだけど、今の仕事に不満はないかね。あったら何でも言ってくれ。」
「いいえ、不満だなんて、とんでもございません。でも、時期が来ましたら営業もやってみたいと思います。商社の仕事は、やっぱり営業が主役ですから。」
「確かにそうだな。僕も、若い頃はずっと営業でやって来て、総務に回されたときはがっかりしたので、よくわかるよ。」
「常務も営業部にいらしたのですね。海外勤務など、ご苦労も多かったのでしょうね。」
「うん、確かに苦労も多かったが、やり甲斐もあったね。」
 食事が運ばれて来ました。先程の前菜から始まって、汁物、お造り、煮魚などが順番に運ばれて来ます。
 その間、常務はアメリカや東南アジアで勤務した時代のことを懐かしそうに話していました。
                ―続く―







2021/05/08 5:29:23|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−17−
恋盗人(こいぬすびと)−17−
 
 彼は、キスを続けたまま、私のブラウスの上から胸を撫でています。
「ブラウスが、皺になるわ。」
私がそう言うと、彼はゆっくりとボタンを外し始めました。私の胸は高鳴っています。高校時代に、芳浦さんと似たようなことをした経験はありましたが、今の意識は違っていました。私は、まだ処女でした。今日が初体験の日になるかも知れないのです。
 彼の手が、私のスカートの中に入って来ました。
「汚れるわ。」
 私の言葉に、彼はパンティを脱がせました。彼の手が私の太腿に触れ、私の身体がピクッと震えました。それとなく彼のあそこに手を触れると、既に大きくなっているのがわかりました。私は、彼の物を優しく撫でてあげました。彼と結ばれたのは、その直後でした。彼は雄々しく私に挑んできました。初めてなので、違和感はありましたが、それは決して苦痛ではありませんでした。その時私は、性の快感と併せて、千鶴に対する優越感を味わっていました。早紀や友里との経験によって、快感を覚えるようにしていたのかもしれません。
 それからしばらくは、田野内君と逢っていました。千鶴とは絶交状態になっていましたが、それは気になりませんでした。それから1年くらいは田野内君との関係が続きましたが、競争相手がいないとなると情熱も次第に醒めて、いつしか会う回数も減っていました。
そのうち、彼が千鶴と仲良くしているとの噂を聞きました。しかしもう千鶴と張り合う気はありませんでした。私は、田野内君と先に結ばれた、それだけで良かったのです。
 4年になると、就職の心配をしなければなりません。多くの女子学生は教師になることを希望していましたが、私は教師になりたくはありませんでした。できれば英語が生かせる商社に入りたいと思いました。結局、中堅の商社に入社することに決まりました。
 同期入社は8人ほどで、男性5人、女性3人です。入社して最初に配属されたのは本社の総務部でした。他の女性2人のうち、響子は営業、夏美は経理です。商社に入るからには、営業が第一線で花形の部署です。営業に行った響子は、外国語大学を出ていました。その語学力を買われたのでしょう。私は、営業を外されたことに不満を感じていました。
 入社して半年ほどしたとき、私は総務担当常務付きになりました。いわば秘書です。
 倉田常務は、理工系ですが、私の大学の先輩になります。そんなことから、私を引いてくれたのかも知れません。
 常務は、人事にも強い発言権があります。上の方はともかくとして、私達のような担当レベルに対しては絶対的権限を持っていると言ってよいでしょう。私は、何とか営業に行きたいと思い、常務の力で何とかならないだろうかと思いましたが、いきなりそんなことを言うわけにもいきません。機会を待つことにしました。
                ―続く―







2021/05/07 3:36:47|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−16−
恋盗人(こいぬすびと)−16−
 
 彼が料理の味を褒めてくれたので、私も嬉しくなりました。バターで焼いただけの簡単なものですが、褒められると嬉しいものです。私は、お酒はあまり強い方ではありませんが、褒められたことでビールをとても美味しく感じました。1本をやっと飲み終えたところで、田野内君がワインの栓を抜きました。
「今日はありがとう。釣りが面白くてついたくさん釣っちゃったけど、後で考えて、どうしようかと思っていたんだ。」
「バターがあって良かったわ。魚を焼くって、けっこう大変なのね。変に焼くと台所は汚れて臭くなっちゃうし。」
そんなことを喋りながら、いつしか私もワインのグラスに手を出していました。ワインは、ニジマスによく合いました。アルコールに強くない私でもそれはわかります。
 1時間もした頃です。私は、急に眠気に襲われました。身体が揺れていたようです。
「おい、大丈夫かい?」
田野内君が、私の肩を揺さぶりながら心配そうに言います。
「だ・い・じ・ょう・ぶ・・・」
そう言いながらも、コクリコクリとしていたようです。
 気が付いたときは、布団の上に寝かされていました。4畳半の部屋の敷布団の上に寝かされていて、上には毛布が掛けられていました。窓の外は薄暗くなっているようです。1、2時間は寝ていたようです。
「目が覚めた?」
枕元に座っていた田野内君が聞きました。
「ええ、私寝ちゃったのかしら?」
「うん、どうしたのかと思ってびっくりしたよ。」
「ごめんなさい、私、お酒があまり強くないの。」
「そうみたいだね。水を飲むといいよ。」
そう言って、台所に行って冷たい水を持って来てくれました。
 水を飲んで、気分も落ち着きました。
「ごめんなさい。せっかく楽しく飲んでいたのに。」
「アハハッ、気にしなくていいよ。それより、君の寝顔は可愛かったよ。」
「あらっ、恥ずかしいわ。」
「無邪気な顔をしていたよ。」
「もう言わないで。」
 私と彼との目が合いました。昼間の山登りのときのキスが思い出されます。私は、田野内君の方を向いたまま、目を瞑りました。彼の唇が、私の唇に触れました。彼は私に覆いかぶさるようにしてキスを続けています。私は、彼の背中に腕を回していました。
 彼が、キスをしたまま、私の隣に横たわり、おずおずと私の胸に手を伸ばしました。
                ―続く―







2021/05/06 4:34:14|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−15−
恋盗人(こいぬすびと)−15−
 
 帰りはケーブルカーで下りました。麓に釣り堀がありました。ニジマスなどが泳いでいて、家族連れなどが来ていて子供達が釣っています。その場で焼いて食べさせてくれるようです。
「面白そうね。」
「やってみようか?」
私達は、釣り竿を2本借りて、釣りを始めました。最初に、彼が吊り上げました。上手に針を外しています。彼が2尾釣ったところで、私の針にもニジマスがかかりました。手で掴もうとするのですが、魚が暴れてうまく行きません。田野内君は、笑いながら針を外してくれました。
 結局、10尾近く釣れたところで、これ以上釣っても持って帰れないので、そこで止めました。
 2尾ずつ焼いてもらって、残りは捌いて塩を振ってもらいました。焼いた新鮮なニジマスは美味しく、私達はビールを飲みながら舌鼓を打っていました。
 でもまだ5、6尾残っています。
「これ、どうするかなあ。」
田野内君が、捌いたニジマスの入った袋を見ながら、困ったように言います。
「冷蔵庫に入れておいて、少しずつ焼いて食べればいいわ。」
「なんだか、面倒だなあ。」
「じゃあ、私が焼いてあげましょうか。」
「いいかい?」
「魚を焼いたことは無いけど、さっき焼いているのを見ていたら、私でも大丈夫そうよ。」
「じゃあ、お願いしていいかな。」
話は纏まって、帰りに田野内君のアパートに寄って魚を焼くことにしました。
 田野内君のアパートは、八王子の駅から歩いて20分のところにあります。途中で竹串とビール、ワインを買って行きました。彼のアパートは、6畳と4畳半の二間でした。男の子の部屋らしく殺風景なところはありますが、几帳面な性格らしくキチンと片付けられていました。
 私は、早速、台所に入ってニジマスを焼くことにしました。ニジマスを袋から出したところで、どうやって焼くかでハタと迷いました。良いオーブンや焼き網がないのです。しばらく考えてから、塩を洗い落としてフライパンでバター焼きにすることにしました。焼いていると、良いにおいがして来ます。田野内君は、後ろから覗き込むようにして見ています。
「美味しそうだね。」
「これなら失敗がないし簡単なのよ。本当は薄力粉でもあれば良いのだけど。」
「残念ながらないよ。買ってこようか?」
「いいわ、残っても使うこともないでしょうし、勿体ないわよ。」
「そうか。」
 30分ほどして、全部焼き終えました。
「できたわよ。」
「ありがとう。じゃあ、これからニジマスパーティにしよう。」
私が、ニジマスを器に盛っている間に、買って来たビールとワインをテーブルに並べていました。ワイングラスなどないので、コップです。
 小さなテーブルに着くと、早速ビールで乾杯しました。
ニジマスを一口食べた彼が言いました。
「これは旨いよ。」
                ―続く―







2021/05/05 5:09:39|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−14−
恋盗人(こいぬすびと)−14−
 
 人の物が欲しくなる、これは私の悪い癖だと思っています。しかし、自分ではその欲望を抑えることができず、どうすることもできませんでした。
 次の日曜日は、秋晴れの良い天気、私は朝から何を着て行こうかと悩んだ末、短めのピンクのスカートとブルーのブラウスの上に薄いピンクのカーディガンを羽織りました。そして昨日作っておいた、サンドイッチの入ったバスケットを手に、約束の高尾山口の駅に行きました。彼も同じ電車に乗っていたらしく、私達はホームで出会うことができました。
「おはよう!」
「おはよう!」
 田野内君も、ご機嫌のようです。
 山に登るにはケーブルカーやロープウエイもありますが、私達は行きは歩いて登ることにしました。田野内君は、無口なわりには細かいところに気が付いて、ちょっと急な坂道になると私の手を引いてくれました。それは私の作戦でもありました。お互いに身体を触れ合えば、親しさも湧いて来るはずです。急な坂道に差し掛かったとき、私は足を滑らせて転びそうになりました。私は、支えようとした田野内君の胸に身体を預けるような格好になりました。田野内君は、ちょっと驚いたようで「大丈夫?」と聞きましたが、無論大丈夫です。二人の目と目が合いました。しばらく見つめ合っていましたが、私が目を瞑ると、彼は私にチュッとキスをしました。しかし後ろから人の声にすぐに身体を離し、また坂道を登り始めました。
 キスしたことで、田野内君も親しみを覚えたようでした。少しずつ私のことも聞くようになりました。家族のこととか、日頃は何をしているのかなどと言っています。私は、妹がいること、普段は本を読んだり映画を見たりしていることなどを答えていました。今まで、無口であまり女性に関心がないように見えていた田野内君の中に明らかに心境の変化が生じているのがわかりました。
 頂上近くにある神社の前を通り過ぎ、更に行くと、広場があります。遠くには、富士山も見えています。私は、シートを敷いて、サンドイッチの入ったバスケットを開けました。
「君が作ったの?」
「ええ、卵とハムと野菜だけですけど。」
「美味しそうだね。」
「美味しいと良いんだけど。」
 そんな会話の後で、サンドイッチをつまんだ田野内君は、「美味しい、美味しい」と言いながら食べてくれました。私は、そんな田野内君を眩しそうな目で見ていました。
「僕の顔に何かついてる?」
私が見詰めているので田野内君が聞きました。
「いいえ、美味しそうに食べてくれるのが嬉しくて。」
私は、そう言ってほほ笑みました。
                ―続く―







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