恋盗人(こいぬすびと)−28− 私は、それ以降河城さんとの密会は避けました。ときどき彼の方から流し目を寄こすことはありましたが、私は笑顔を返すだけに止めておきました。 秋も深まったある日、新関GLが私達に言いました。 「君達、今度の土曜日、うちに遊びに来ないか。女房とも話したんだけど、食事でもどうかと思って。」 私はすぐに「ありがとうございます。」と言いましたが、河城さんはちょっと困ったような顔をしています。私は、美香さんとのデートがあるのだと思いました。 「河城さん、デートじゃないの?」 「う、うん。」 「そうか、君には彼女がいたのか。じゃあ、一緒に連れて来れば良いじゃないか。君達さえ良ければ。」 「そうですか。連れて行ってもいいですか。ちょっと相談してみます。」 「アハハッ、あんな調子じゃ、いずれ尻に敷かれるな。」 新関さんは、おかしそうに笑っていました。 結局、河城さんも美香さんを連れて行くことになりました。いずれ知れることですし、それなら早めに紹介して味方を増やしておいた方が良いと思ったのでしょう。私は、まだ会ったことがない新関GLの奥さんが見たかったのです。 当日、私はお気に入りの水玉模様の裾の短めのワンピースを着て行きました。3人の女性中で、私が一番若いことを強調したかったのです。私は、約束の時間のちょっと前に行きました。玄関に出迎えたのは新関さんでしたが、部屋に入ると奥さんがいました。奥さんは、美鈴さんと言いました。 その直後に、河城さんがやって来ました。出迎えに行った新関さんの声が聞こえてきます。 「なんだ、恋人とデートだなんていうから誰かと思ったら平野君じゃないか。じゃあ、美鈴も知っているよね。さあ、入って、入って。」 二人が部屋に入って来て全員が揃いました。新関さんの奥さんの美鈴さんと美香さんは、以前からの仕事上の仲間ですから、二人は仲良さそうに話をしていました。河城さんは、以前も来たことがあるようでしたから、初対面は私と美鈴さんだけでした。 美鈴さんは噂通りにきれいな人でした。しかも気配りが素晴らしくて私にも気を使ってくれました。女が3人だと、どうしても話が二人に偏りがちになりますが、一番若くてしかも独り身の私が話の外にならないように気を使っているのがよくわかります。 料理は水炊きでした。鴨肉や魚がたくさん入っています。新関さんは、ビールやウィスキー、ワインなどを運んでいます。 すぐにみんなが、円形のテーブルの席に着きました。新関さん夫婦と河城さんカップルはそれぞれ並んで座り、男女が交互の位置になっていて、私の両隣は新関さんと河城さんになっていました。席に着くと、早速乾杯です。 「今日は、ようこそ!」 「ありがとうございます。」 乾杯と同時に、私を除く4人は美味しそうにビールを飲み干していました。 ―続く― |