男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/05/29 5:02:14|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−38−
恋盗人(こいぬすびと)−38−
 
 私は、明美のことが気になってさらに話を続けました。
「ねえ、吉岡さんはあなたと親しそうに話をしていたけど、あなたはどう思っているの?」
「彼も良い人だわ。」
「そうね。好感が持てる人よね。彼と付き合ってはどう?」
「飯塚さんには振られちゃったから、彼でもいいかなあ。」
「彼も誠実そうな人だから、結婚の相手としてもいいんじゃない?」
「それって、穴埋めのつもり?」
「そんなことはないけど、あなたが彼のことを好きならそれも良いんじゃないかと思ったのよ。」
「そうねえ・・・」
明美は考えているようでしたが、まんざら嫌でもなさそうでした。
 飯塚さんからプロポーズがあったのは、その週の週末でした。私達は、六本木のレストランで会い、その場でプロポーズを受けたのでした。私が両親に飯塚さんと結婚すると報告すると、二人とも怪訝そうな顔をしていました。両親は、明美と飯塚さんが結婚するものとばかり思っていたのです。
 しかし、そのとき困ったことが起こりました。吉岡さんから、私に告白のメールが届いたのです。そこには概ね次のように書かれていました。
 「随分考えた挙句にメールをしました。自分は一目会ったときから貴女を好きになりました。飯塚君に相談したら、彼は諦めろと言いました。しかし、自分は諦め切れません。貴女への想いは募るばかりです。どうか一度二人きりで会って、僕の話を聞いていただけませんか。どうぞお願いします。・・・」
 メールは長文で、彼の私への想いが切々と書かれていました。私は、彼と会うべきかどうか、迷いました。というか困りました。無碍に冷たくするのも彼に悪いですし、二人きりで会うのは、飯塚さんにも明美にも悪い気がします。
 おそらくこれからもテニスを通じて顔を合わせる機会は多いでしょう。彼にとって真剣な問題をメールだけで返事をするのも悪いような気がして、結局、翌週の金曜日に渋谷駅で会うことにしました。
 金曜日、ハチ公の前は待ち合わせの人達で賑わっています。仕事で遅くなって約束の時間に少し遅れて到着すると、彼は既に来て待っていました。
「すみません。遅くなって。」
「いえ、こちらこそ、忙しいときに無理を言って申し訳ありません。」
挨拶を済ませると、駅の近くの喫茶店に入りました。コーヒーを注文すると、彼はすぐに切り出しました。
「先日は、突然のメールで驚かれたと思います。メールにも書きましたが、思い余って出さずにいられなかったのです。」
「お気持ちは十分にわかりました。私も嬉しく思っていますが、私には既に決めた人がいます。」
「飯塚君ですか。彼が、僕が貴女を好きだと言ったとき、強い調子でダメだと言ったので、そうではないかと思いました。」
「おっしゃる通りです。彼にお約束してしまいました。」
「思い直すことはできませんか。僕も、貴方を想う気持ちは、決して彼に劣らないと思っています。」
そう言うと、じっと私の目を見詰めていました。
                ―続く―







2021/05/28 4:43:02|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−37−
恋盗人(こいぬすびと)−37−
 
 私に愛の告白をした飯塚さんは、じっと私の目を見詰めていました。
「でも、飯塚さんには明美が・・・」
「僕は、最初にお宅に伺って貴女に会ったとき、一目で貴女を好きになりました。でも明美さんがいます。僕は、どうすれば良いか考えました。それでテニスを初めて、吉岡君を誘ったのです。吉岡君なら、明美さんに相応しいと思ったのです。吉岡君の気持ちを聞いたら、彼も貴方のことを好きだと言います。僕は、理由は言いませんでしたが、ダメだと言いました。僕は、来週、明美さんにそのことを話そうと思いますが、その前に貴女の了解を得たいと思いました。ここでは時間がありません。後でメールででも返事をください。」
飯塚さんは、そこまで言って、男性用の更衣室に向かって行きました。
 私は、迷いました。飯塚さんに好意を持っているのは確かですが、彼は妹と結婚を前提とした恋仲であることが引っ掛かります。今までも、何度か人の恋人を奪うようなことをして来ました。妹の恋人である飯塚さんを奪うことにも誘惑を感じます。しかし、さすがに妹の恋人となると、罪悪感を覚えます。誘惑と罪悪感の狭間で、心が揺れ動いていました。
 テニスからの帰り、私は無口になっていました。そんな私の様子に、明美は「お姉ちゃん、どうしたの?」と聞きましたが、私は何でもないと答えました。
 その夜、私は飯塚さんにメールをしました。
「今日は、ありがとうございました。楽しかったです。テニス後のお話の件ですが、飯塚さんにお任せしたいと思います。私も、貴方に好意を持っています。引っ掛かるのは明美のことですが、いずれにしても貴方に選ぶ権利があります。私は、貴方の選択にお任せしたいと思います。」
 私には、飯塚さんがそこまで言ったのだから、相当覚悟したことであり、私を選ぶことはわかっていました。それでもあくまで相手が決めたように仕向けていることについて、自分の卑怯さからでした。そのことはわかっていても、妹の恋人を奪うには、そうしなければならなかったのです。
 3日後のことです。私が、夜遅く仕事から帰って来ると、いつもは寝ている明美が起きて待っていました。
「お姉ちゃん、話があるの。」
私は、飯塚さんのことだと思いましたが、「なに?」と答えました。
「飯塚さん、お姉ちゃんのことを好きなんだって。」
「えっ!」
「一目会ったときから好きになったと言うのよ。お姉ちゃん、どう思う?」
「どう思うって・・・」
「お姉ちゃんも、飯塚さんのことを好きなの?」
「良い人であることは確かだけど・・・」
「じゃあ、いいわ。飯塚さんは譲るわよ。お姉ちゃんを好きな人と結婚しても、お姉ちゃんを好きだという人と結婚しても、私は幸せになるとは思えないわ。」
「そう・・・、だけどどうすれば良いのだろう?」
「お姉ちゃんが決めれば良いわよ。私がどうこう言う立場にないわよ。」
「でも、あなたはそれでいいの?」
「良いも悪いもないわ。仕方がないじゃないの。」
「わかったわ。私も、飯塚さんの意思に任せるわ。」
 後味は良くないものの、飯塚さんについても話はそこに落ち着きました。
                ―続く―







2021/05/27 5:53:25|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−36−
恋盗人(こいぬすびと)−36−
 
 レストランでは、飯塚さんと明美が並んで座り、私の前には飯塚さんがいました。まずはビールで乾杯です。さすがに汗をかいていたので、お酒に強くない私も美味しいと思いました。私と明美はパスタを、飯塚さん達はハンバーグ定食を食べていました。
 話題の多くは、初めてのメンバーの吉岡さんへの質問になります。吉岡さんは、電機メーカーに勤めている技術者でした。年齢は飯塚さんと同じ28歳ですから、私より2歳上、明美よりは5歳上になります。本人は、恋人募集中だと言っていました。お互いにメールアドレスを教え合い、今後のスケジュールを連絡し合うようにしました。このとき、私は飯塚さんのアドレスも知りました。
 食事が終って家に帰ってから、明美に「楽しかったね」と言うと、「疲れたわ。」と言って、あまり嬉しそうでもありません。
「お姉ちゃんは、テニスが上手だから良いけど、私は下手だからつまらないわ。」
「練習すれば上手になるわよ。」
「そうかなあ・・・」
 それでも、次の週末には、4人でテニスに行きました。最初はレッスンをするのですが、その後は2人ずつコートに残って、ゲームをします。組み合わせは必然的に私と飯塚さん、明美と吉岡さんになります。私が吉岡さんと組んでのまたダブルスもしましたが、本気で打ち合っているのは私と飯塚さんで、明美や吉岡さんに対しては、優しいボールを打っています。
 テニスを始めて1カ月が過ぎた頃のこと、飯塚さんが私に、「11月に行われる地域のテニス大会のダブルスにペアで出ませんか。」と言いました。私は、明美の顔をみながら「いいですわ。頑張りましょう。」と言いました。
 そのときから、私と飯塚さんが練習のためにコートに立つ時間が長くなりました。ときには、隣のコートの人達に練習試合を申し込んだりしていました。その間、明美と吉岡さんは、二人で練習をしたり、私達の練習を見たりしていましたが、何となく仲良くしているようでした。
 大会の日がやって来ました。私と明美が一緒に30分前に会場に着くと、飯塚さんは既にやって来ていました。しばらくすると吉岡さんも来ました。
 コートに出るのは、飯塚さんと私で待機も控室になっています。明美と吉岡さんは観覧席に並んで座っていました。
 飯塚さんは、特に作戦を練るようなことはしません。その場の判断で好きなようにプレイしなさいと言います。それは、私を信頼しているからだと思いました。
 試合が始まりました。1回戦、2回戦は、けっこう楽勝でした。3回戦は苦戦しながらも勝ちましたが、4回戦では負けてしまいました。
 コートを引き上げて控室に入ったとき、飯塚さんが言いました。
「京美さん、あなたを好きです。」
その顔が真剣なので、思わず彼の顔を見入ってしまいました。
                ―続く―







2021/05/26 5:20:38|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−35−
恋盗人(こいぬすびと)−35−
 
 私は、不審そうな顔をしている明美に言いました。
「さっきね、飯塚さんにテニスを教えてくれるようにお願いしたの。明美も始めるといいわ。あなたは、あまり運動をしないから、身体にもいいわよ。」
「テニスかあ、ラケットも握ったことが無いけど、私にもできるかなあ。」
「大丈夫ですよね、飯塚さん。ちょっと練習すればできるようになるわよ。明日にでも、道具を買いに行きましょう。私も一緒に行ってあげるわ。」
「始めて見ようかなあ・・・」
「そうよ、美容にも健康にも良いし、始めるといいわ。二人の都合の良い時を決めてくれたら、3人で練習をしましょう。」
飯塚さんは、3人でテニスができることに楽しそうな顔をしていました。
 翌日の土曜日、私は明美と連れ立って、テニスのラケットやウエアを買いに行きました。私も、さすがに高校時代の道具やウエアを使うわけにはいきません、明美のを買うのと同時に、自分のも買いました。明美は長いパンツのウエアでしたが、私は短いピンクのスコートにしました。
 次の日、仕事から帰って来た明美が言いました。
「お姉ちゃん、今度の土曜日、コートが取れたそうよ。都のコートで朝の9時からですって。」
「そう、良かったわ。一緒に行きましょう。」
明美も、楽しそうでした。
 土曜日になりました。暑いですが、良い天気です。私達は、テニスウエアを着て、電車でコートに向かいました。電車の男性達の視線が私達の方に向いているのが感じられます。明美も私も、男性の目を引くだけの美しさでしたし、それにウエアも注目を引くものでした。私は短いスコートでしたし、明美もハーフサイズのパンツだったのです。
 飯塚さんは、先に来て待っていました。もう一人男性が一緒です。
「彼は、吉岡京三君と言って、大学の同級生です。まだテニスを始めたばかりの初心者なので、明美さんと一緒にレッスンをしたら良いだろうと思って連れて来ました。」
「吉岡です。よろしくお願いします。」
「三崎です。姉の京美です。」
「妹の明美です。」
 自己紹介が終ったところで、飯塚さんが、ロッカールームやシャワールームの場所などを案内してくれました。
 早速、コートに出て二人にレッスンをします。飯塚さんが主で私は助手のような役割をして、ラケットの握り方や構え方などを教えてから、飯塚さんが出したボールを打ちます。吉岡さんは、男だけあってそれなりにボールを打ち返していましたが、明美の方は空振りさえしていました。それでも1時間もすると、何とか打ち返せるようになりましたが、すっかりくたびれたようです。
 二人に休憩をさせると、私と飯塚さんはゲームを楽しみました。レッスンでまどろっこしい思いをしていたので、プレイは楽しいものでした。勿論、飯塚さんの方が腕は格段に上なのですが、私の打ち返しやすいところにボールを返してくれていました。その間、明美はベンチに座って吉岡さんと話をしていました。
 30分ほどして、再び2人へのレッスンに戻って、その日のレッスンは終りました。テニスが終って、シャワーと着替えを済ましてから、4人で食事をしようということになり、駅前のファミレスに入りました。
                ―続く―







2021/05/25 5:17:30|小説「恋盗人」
盗人(こいぬすびと)−34−
恋盗人(こいぬすびと)−34−
 
 3人で明美の作ったオードブルでビールを飲んでいました。飯塚さんも明美もけっこうお酒は強いようで、お酒に弱いのは私だけでした。
 明美は、飯塚さんに気を配って、グラスが空くとすぐにビールを注いだり、小皿にオードブルを取ったりしてこまめに面倒を見てあげています。私は、ちょっと妬けてきました。
 1時間ほど飲んでいたとき、明美が素麺を作るために席を立ちました。
「飯塚さんって、お酒が強いのですね。」
「はい、嫌いじゃないです。学生時代、テニス部で鍛えられました。」
「あらっ、テニスをなさっていたのですか。私も、高校時代はテニスをしていました。」
「そうですか、それは偶然ですね。是非、お手合わせしたいですね。」
「いいですわね。大学のテニス部なんてさぞお上手なのでしょうね。教えていただきたいですわ。」
「逆に、うま過ぎてもダメなんですよね。確かに、中学校の頃から初めて大学でもテニスをしてきましたから、それなりに自信はあるのですが、相手が敬遠して一緒に遊んでくれる仲間ができないのです。」
「わかりますわ。」
「教師では、忙しくて大会に出るような練習もできませんし、だからと言ってテニスはしたいけど仲間がいないし、ジレンマなんですよ。」
「私で良ければお相手しますわ。教えていただきながら、ゲームが楽しめればいいですわね。私も、テニスがしたかったです。」
 そんな話をしているうちに、明美の作っていた素麺が出来上がって来ました。茹でた素麺の他に、卵焼きやハム、胡瓜、トマトなどが添えてあります。
「あらっ、とてもきれい。明美にしては上手にできているわね。」
「そうよ、だって私の愛情がこもっているんですもの。お姉さんにじゃなくて、満さんへの愛情だけどね。」
「あらっ、私がいて悪かったわね。ご馳走様。」
「いいのよ、お姉さんも食べて。」
 そんな冗談を交わしながら食事が始まりました。確かに素麺は美味しくできていました。日頃料理などしたことがない明美ですが、上手にできるということはやはり彼に対する愛情のためなのかと思いました。
 食事をしている間、時々、飯塚さんと目が合いました。そのとき、飯塚さんは僅かに微笑んでいます。私に好感を持っていることを感じていました。
 食事が終ったら、明美は飯塚さんを連れて自分の部屋に行ってしまいました。2時間ほどいて、飯塚さんは帰って行きました。私も玄関まで見送りましたが、そのとき「テニスを教えてくださいね。都合の良いとき、連絡をください。」と言いました。明美は、何のことかというような顔をしています。
                ―続く―







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