男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/06/09 6:42:31|小説「晩秋の歌」
晩秋の歌−02−
晩秋の歌−02−
 
 車内では、彼女について幾つか知ることができた。彼女は、白鳥美紀、年齢は40歳だと言った。家は、手賀沼の畔の丘の上にあって、離婚して今は一人で住んでいること、曾祖父が白樺派の文学者であったことなど、かなり詳しく話した。
 私も、60歳になってこの春に会社を定年になり、今は第二の就職で、比較的時間のゆとりがあること、離婚して柏の駅の近くに住んでいることなどを話し、女と男の二人の子供がいたが、彼等も成人し、今では養育費を払わなくてよくなったことなどを話した。離婚経験があるという二人の境遇が似ていることも、親近感を覚えさせた。
 東京駅に着いた時には、すっかり暗くなっていた。私達は、常磐線のグリーン車に乗った。40分もすれば柏に着いてしまう。私は、彼女の電話番号とメールアドレスを聞いた。彼女は、快く教えてくれた。二人はスマホを取り出して、アドレスと電話番号を交換した。柏で電車を降りて家に着くと、すぐに彼女にメールを送った。
 
「今日は、ありがとうございました。お蔭様で、嫌な出張帰りの時間も楽しいものになりました。また会えれば嬉しいです。よろしくお願いします。  三橋光一」
 
 30分後、彼女から返事が来た。
 
「こちらこそ、ありがとうございました。疲れも忘れる、とても楽しい時間でした。三橋さんのご都合が良ければ、またお会いしたいです。  美紀」
 
 一人住まいの私は、途中で買って来た惣菜で一人寂しい食事をした。離婚して10年になるが、一人の食事は侘しいものである。彼女のメールを見ながら、彼女はどんな食事をしているのだろうかと想像した。外食なのか、あるいは家で食べているのか。彼女と一緒の食事だったら、どんなに楽しいだろうとも思う。
 私は、すぐにでも誘いのメールを送りたい気持ちだったが、彼女の迷惑になるかも知れないと思い止めた。出張の疲れもあって早めにベッドに入ったが、彼女のことを考えていると、なかなか寝付けなかった。
 翌朝は良い天気、目覚めると窓から陽が差し込んでいた。晩秋の日の出は遅い。いつもは早起きの私だったが、昨日までの仕事の疲れでかなり寝坊をしたようである。
 目が覚めてすぐに、美紀のことを思い出した。人間関係、特に男女のことについては、付き合いの間を置くことは良くない。お互いが、最初に会ったときの気持ちや感動を忘れてしまうからである。学生の頃、故郷のガールフレンドと親しい関係にありながら、遠く離れたがゆえに疎遠になった話をいくつか聞いたことがある。男と女は、常に近い距離に居なければ仲を保つのが難しいのである。私は、すぐに美紀にメールを送ることにした。
 11月に入って、ちょっと寒いが良い天気である。私は、朝起きるとすぐに彼女を誘い出したいと思って、メールをした。
 
「おはようございます。昨日新幹線でご一緒した三橋です。良い天気、お目覚めはいかがでしょう。
昨日、家に帰って一人で食事をしていて、新幹線の中であなたとビールを飲んでいる時間の楽しさを思い浮かべました。あの時間のどんなに楽しかったことか。できれば、今日、あなたと一緒に食事ができたらと思うのですが、いかがでしょう。
            光一」
                  ―続く―







2021/06/08 6:12:56|小説「晩秋の歌」
晩秋の歌−01−
晩秋の歌−01−
 
 金曜日の夕方、私は大阪からの出張帰りの新幹線の自由席にいた。新大阪始発なので、車内は空いていた。私は、2人席の窓側に座っていた。車窓では町の灯りが点き始めているのが見えている。車内販売のコーヒーを飲みながら、車窓に目を向けて感傷的な気分に浸っていた。
 京都まで来た時、出張や観光の帰りだろうたくさんの人が乗り込んで来た。
「お席、空いています。」
そう言われて振り向くと、一人の女性が立っていた。年齢的には30代半ばだろうか、色白で上品そうな感じである。動作は、何となくおっとりとした感じである。
「ええ、空いていますよ。どうぞ。」
私は、ラッキーだと思った。一人なら一人で良いのだが、隣に不愛想な男でも座られたものなら気まずい思いをすることが多い。美人が隣にいるだけで幸せな気分になれる。
私は、彼女がちょっと重そうなバッグを荷棚に上げようとするのを手伝った。彼女が座るとすぐに話し掛けた。
「観光で京都にいらしたのですか。」
「ええ、紅葉がきれいだと言うものですから。」
「いかがでした。」
「きれいでしたわ。大原の三千院は、ちょうど今が見頃でした。」
「そうですか。京都には何度か行ったことがあるのですが、出張が多くゆっくり見たことがありません。大原には、行ったこともないんですよ。」
 そのとき、車内販売が来た。
「どうです、ビールでも。」
私が、彼女に聞いた。
「いいですわね。ちょうど咽喉が渇いていたところです。」
私は、ビールとつまみを買った。彼女は財布を取り出そうとしたが、私はそれを遮った。ビールを飲みながら、私は彼女に積極的に話し掛けた。
「京都には、長くいらしたのですか。」
「はい、3日ほどいました。学生時代の友人が大原にいて、いろいろ案内してくれました。」
そんな話をしていて、私は聞いた。
「これからどちらまで帰るのですか。」
「はい、我孫子まで帰ります。常磐線です。」
「それは奇遇だ。僕は、柏です。お隣さんですね。手賀沼にはよく行くんですよ。」
 彼女は手賀沼の近くに住んでいると言った。お互い近くにいることがわかって、話は急に弾んだ。
                  ―続く―







2021/06/01 4:45:47|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−41−(最終回)
恋盗人(こいぬすびと)−41−(最終回)
 
 私は、夫の行動を、注意深く観察しました。確かに不自然なことも幾つかありました。夏休みに、生徒達とリクリエーションに行くと言って一泊の旅行に出掛けました。そのとき、明美に電話をしたら、明美も一泊で出掛けていないと言うのです。その後も、そんなことがありました。私は、二人の関係を確信しましたが、私にそれを非難する資格はありません。それより、京三さんと再び関係が戻って来たのです。明美が不在のとき、電話に出た京三さんに逢うことを提案したのです。そのときから、すっかり私と京三さんは縒りを戻してしまいました。満さんが出張などと言って泊り掛けで出掛けるというときは、京三さんに電話をして逢うようにしたのです。お互い好意を持っていた間柄、半ば罪の意識を持ちながら、それゆえに余計に燃えていました。
 だからと言って、夫との関係が遠のいたわけではありません。結婚して2年目に、子供ができました。女の子で、知佳と名付けました。同じ頃、明美にも子供ができました。こちらは男の子でした。
 満さんは、子煩悩でした。時間があると、知佳を抱いていましたし、散歩に連れて行ったりしていました。目に入れても痛くないといった感じです。
 子供ができてから、兄弟姉妹の不倫も自然に無くなりました。私が京三さんと逢うことも無くなりましたし、満さんの出張が減ったことでも、彼等が関係を絶ったことがわかりました。
 結婚して20余年の歳月が流れました。娘の知佳は20歳、大学生になりました。
 ある日のこと、知佳が言いました。
「お母さん、今度、友達を連れて来ていい?」
「いいわよ。お茶くらいは淹れてあげるわよ。」
 知佳が友達を連れて来たとき、驚きました。男の子だったのです。聞けば、大学の先輩で、コンパで知り合って付き合うようになったというのです。背が高く、筋肉質な体つきをしていて、甘い顔をしています。私は、彼を見た途端、胸が高鳴りました。もし、町で出会ったとしても、それほど強い印象を受けることはなかったと思いますが、娘のボーイフレンドだということで、昔の悪い癖が出て来たのです。それは、高校時代に友達の優香さんのボーイフレンドや、美鈴さんの夫の新関さんや、妹の明美の恋人を奪って結婚したときよりも、激しいものでした。彼が来る度に、私の胸は高鳴ります。
 しかし、知佳は娘です。それはいけないことだと思い、必死で自分の欲望を抑えている昨今、激しい誘惑に勝てるかどうか心配しながら、彼が来る度にお茶やコーヒーを淹れています。
          ―完―







2021/05/31 5:44:36|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−40−
恋盗人(こいぬすびと)−40−
 
 私は、明美と結婚したいという彼の言葉をある程度は予期していました。彼が、言葉を続けました。
「明美さんと結婚すれば、貴女と親戚になるわけですから、何かにつけて貴方に会うことができます。それが望みなのです。」
 私は、明美の恋人を2人も盗ってしまったのです。明美に対して罪の意識はありましたが、反面不思議な快感を覚えていました。今までに、友達の恋人を奪ったことが何度かありましたが、自分の妹の恋人を奪ったことでより大きな快感を覚えていたのです。
私は、言いました。
「このことは、明美をはじめ誰にも内緒ですよ。」
 それからしばらくして、明美が吉岡さんと結婚すると言いました。私は、良かったわと言いました。
 私と飯塚さんの結婚式は翌年の5月に、明美と吉岡さんの結婚式はその年の秋に行われました。お互いの結婚式にはそれぞれのカップルが身内として参加しました。
 私達の結婚式の披露宴のとき、キャンドル・サービスで各テーブルを回ります。最後に家族のテーブルに来たとき、明美は真剣な表情をしていました。飯塚さん、いえ今は満さんと明美は結婚をも意識した恋人だったのです。その恋人が姉の夫になったのですから、複雑な気持ちであったことには違いありません。明美と満さんに身体の関係があったのかどうかはわかりません。聴くことでもありませんし、聴くのも野暮です。それは、二人だけの永遠の秘密になることなのです。
 明美の結婚式のときも、同じような場面がありました。二人が、私達夫婦の前にやって来たとき、飯塚さんが私にそっとウィンクをしたのです。そのとき、私は複雑な気持ちになっていました。今日から私達は親戚ですが、かって一夜を共にしたことと、その時の彼が言った「親戚になれば、私と会うことができる」という言葉が一緒にありありと脳裏に浮かんで来たのです。
 姉妹でトラブルめいたことがあってから、いつの間にか4人でテニスをすることはなくなりましたが、4人が会う場面はしばしばありました。正月やお盆には、両親のところに集まりますし、休みの日に偶然両親のところで会うこともあります。そんなとき、明美は満さんと親しげに話をしていましたし、私も京三さんと話をする場面もたくさんありました。
 お正月のある日、私達姉妹夫婦は、両親の下に集まっていました。私が、庭に出てみると、明美と満さんが裏庭にいるのに気が付きました。そっと後から見ると、二人が抱き合ってキスをしているのが目に入りました。二人は、その後も続いていたのです。
 私は、そっとその場を離れました。私は、驚きや嫉妬というより、ある安堵感を覚えていました。明美も私と同じ血筋を引いていたのです。私は、かって京三さんと一夜を共にした罪悪感が消え去る思いがしました。
                ―続く―







2021/05/30 5:16:08|小説「恋盗人」
恋盗人(こいぬすびと)−39−
恋盗人(こいぬすびと)−39−
 
 吉岡さんの目は真剣そのものでした。私は、自分の気持ちが揺らぐのを感じていました。妹の明美だって、飯塚さんと婚約直前になっていたのを、私がひっくり返したのですから、まるで不可能な話でもありませんが、まさかそこまでする気はありませんでした。
「申し訳ありません。お気持ちはとても嬉しいのですが。」
「本当に、あなたが欲しかった。あなたと結婚したかった・・・」
「一度だけお付き合いしたら、諦めていただけるでしょうか。」
「えっ!」
私は、黙ったまま俯いていました。しばらくして、やっと私の言った言葉の意味を理解した彼の顔に喜色が浮かびました。
「いいのですか?」
「えゝ、一度だけですよ。」
「わかりました。それで諦めます。それで、京美さんは、いつが都合がいいですか?」
「今からでもいいですわ。」
「そうですか、じゃあ行きましょう。」
彼は、機会を逃さないようにそそくさと会計を済ませると、私の腕を掴むようにして喫茶店を出ました。
「少し、飲んで行きませんか?」
彼が言うので、私も小料理屋に入りました。中年の女将さんがやっていて、
 道玄坂を上って行ったところに、ちょっと瀟洒な感じのホテルに入りました。静かな雰囲気ですが、ラブホテルです。私は、黙ったまま彼の後ろに着いて行きました。
 部屋に入ると、彼はすぐに私を抱いてキスをしました。上手なキスではありませんが、想いが伝わって来る情熱的なものでした。
 キスが終ると、私のスーツを脱がせていきます。私を抱き上げてベッドに運ぶと、覆い被さるように私に挑んで来ました。
「待って、お風呂に入りましょう。」
「はい。」
彼は、素直です。
 二人で一緒に浴室に向かいます。浴槽にお湯を満たしながら、シャワーで身体を洗います。
「なんときれいな身体なんだろう。」
「そうかしら。」
「こんな素敵な人が、飯塚に抱かれるのかと思うと・・・」
「それは言わないでください。飯塚さんとは、まだこういう関係になってはいないのですから。」
目をやると、彼の物はすっかり大きくなっていました。
 風呂で汗を流すと、私を抱き上げてベッドに行き、ややせっかちに私を抱きました。そして、愛撫もそこそこに力強く私の中に入って来ました。彼の動きは、情熱的というか、激情そのものと言った感じでした。
 終わった後、並んで横たわったまま彼が言いました。
「ありがとう。悔しいけど、これで貴女のことは諦めます。」
「ごめんなさい。」
「僕、明美さんに結婚を申し込もうと思います。」
彼は寂しそうな顔をしてそう言いました。
                ―続く―







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