晩秋の歌−06− 試合形式のゲームに入ると、彼女はなかなかの動きを見せた。女性だから力はないものの、こっちの動きを冷静に判断してボールを返してくる。ゲームは、実力トントンといった感じだった。30分ほどゲームをして、ベンチで休憩をした。 「美紀さんは、随分上手ですね。どこで習ったのですか。」 「別れた夫がテニスをしていたものですから、随分前のことですがスクールに通いました。」 「どおりでフォームがきれいなはずだ。僕のは我流だからいけない。」 「そんなことはありませんわ。ストロークがとても力強いですもの。」 その後、何回かゲームをしてテニスコートを引き上げ、私の家に向かった。 家に着くと、彼女にシャワーを勧めた。その間、私は鍋の準備をした。シャワールームから出て来た彼女は、スカートにピンクのセーター姿だった。私は、交代でシャワーを浴びると、早速ビールで乾杯をした。 鍋は水炊きである。その他にも、生ハムや刺身などいくつか酒の肴になるようなものを準備しておいた。前に聞いていたとおり、彼女は食べ物や飲み物の好き嫌いはないようだった。水炊きを美味しそうに食べ、ビールはゆっくりと飲んでいる。 二人きりで飲みながらのお喋りは楽しかった。 「美紀さんは、食べ方が上品ですね。」 「あらっ、そうでしょうか。子供の頃から、母にうるさくは言われましたの。」 「こうして食べてもらえると、こんな物でも美味しそうに思える。」 「いえ、美味しいですわ。私、一人暮らしですから、なかなか鍋を食べることなどないんです。」 「そうですね、僕も美紀さんがいてくれるから、とても美味しいです。」 「そうですね。食事は、どんなに美味しい物を食べるかより、誰と食べるかですわね。」 「ほんとにそうですね。いつも一人なので、実感します。それに、美紀さんのようなきれいな人が一緒なら、特に美味しく感じます。」 「あらっ、光栄ですわ。」 彼女は、そう言って素直にほほ笑んだ。 30分もすると、彼女の頬がほんのりピン色になってきていた。運動後の渇きが落ち着いたので、日本酒にすることにした。彼女は、細身のわりにはよく食べた。食べても太らない体質なのだろう。日本酒にかえても、彼女はビールと同じペースで飲んでいた。 食べている彼女を見ていると、食べている唇が実に艶めかしい。私は、ふと性的欲望を覚えた。こうして二人きりになるのだから、彼女を誘って拒むとも思えない。しかし、それは食事が終わってからである。それから私は酒を飲むペースを抑えた。いざとなったとき、役に立たなくなったら困るからである。 ―続く― |