晩秋の歌−11− 私は、梅さんに質問を続けた。 「梅さんは、ずっと前からこの家にいたの。」 「はい、私は小学校のとき、病気で相次いで両親を失いました。そのとき、こちらに引き取っていただいたのです。お嬢さんのおじいさんの頃です。中学校を卒業すると、高校に行くように言ってくれましたが、私は断りました。これ以上、迷惑をかけてはいけないと思ったのです。その代わりに、このうちに置いていただくようにお願いしました。お嬢さんのお母さんと私は、姉妹のようにして育てられました。」 「美紀さんのお父さんは、婿養子だったの。」 「そうです、ここのおうちは、女系家族のようで、おじいさんも婿養子でした。」 「美紀さんの元の旦那さんも婿養子だったの。」 「いいえ、美紀さんはお嫁に行かれましたが、ご両親はこの結婚には反対でした。美紀さんが頑として譲らず、結婚なさったのです。でも、そこのこともその後の離婚の原因のひとつだったようです。」 この日の梅さんは饒舌だった。普段、殆ど話もしない梅さんが、ここまで喋るとは思わなかった。私は、気になっていたことを聞いてみた。 「僕がこうして出入りして、美紀さんに迷惑が掛かっているのではないでしょうか。」 「いいえ、むしろお嬢様は喜んでおられます。それはピアノの練習でもわかります。お嬢様は、よく2階でピアノの練習をなさいますが、あなたがお出でになるようになって、曲が明るく弾むようになりました。私に音楽のことはよくわかりませんが、ピアノにお嬢様の気持ちが表れていることくらいはわかります。もう何十年もご一緒していますから。」 「そうですか、それで安心しました。」 「お嬢さんは、寂しかったのです。近所の付き合いはあまりなく、ピアノや生け花の生徒さん達との付き合いくらいでしたから、心を寄せる人がいなかったのです。そんなとき、あなたと知り合えたのが嬉しかったのでしょう。最近は、明るくなられました。」 1時間ほど梅さんと話をして、私は家に帰った。部屋に戻ったとき、美紀からメールが入った。 ―続く― |