晩秋の歌−16− 私は、梅さんに聞いた。 「美紀さんは疲れているだろうに、申し訳ないです。」 「いいえ、お嬢さんは大丈夫です。運動もされているし、丈夫な人ですよ。それに三橋さんが来られているので疲れも感じていないようです。」 「梅さんにも、迷惑を掛けますね。」 「いいえ、私は大丈夫です。こうしてお嬢様が喜んでいただけるのが、私の幸せですから。もうそんな暮らしを50年以上も続けています。」 そんな話をしていると、美紀が風呂から出て来た。ピンク色のスカートに同じくピンクのセーター姿である。 「あらっ、二人でどんな話をしていたの。」 「お嬢さんが、とても良い人だってことです。」 私は、梅さんがそんな機転の利いたことを言うのに驚いた。 二人の食事が始まる。昼食後も飲んでいたから、そんなには食べられない。そのことを計算してからか、梅さんは、食事は蕎麦にすると言った。刺身を肴に日本酒をゆっくりと飲みながら、蕎麦の出来上がりを待つ。その間も、しばしば二人は目を見詰め合って微笑んだ。 梅さんが自分で打ったのだという作った蕎麦は、美味しかった。飲んだ後の喉を心地よく通過していく。私達は、時々目を合わせて微笑みながら蕎麦を食べた。 蕎麦を食べ終わってお腹がいっぱいになると、することがなかった。梅さんがお茶を出してくれたが、それさえも飲みたいと思わなかった。そんな私の気持ちを察したのか、美紀が「2階で、少しくつろぎますか」と聞いた。私は、そうですねと答えた。 階段を上って、先程の部屋に入る。美紀は、早速オーディオにCDをセットした。すぐにメロディーが流れる。私は、CDのセットを終った美紀の手を掴んで自分の方に引き寄せた。 ―続く― |