晩秋の歌−41−
私は、着付けのことが気になって戸惑っていた。 「えっ、大丈夫かなあ。皺にならない?」 「上手にすれば大丈夫です。お願いします。」 私は、彼女を寝室に誘い、ベッドの端に手をつかせた。そして晴れ着の裾を丁寧に皺にならないようにめくると、腰のところまで引き上げた。彼女の、白いお尻が眩しい。彼女の部分に手を伸ばしてみると、既に十分に濡れている。アルコールが、彼女の欲情を高ぶらせているようだった。私は、ズボンを脱ぐと、後ろからひとつになった。腰をしっかりと掴んで、律動を繰り返す。彼女の口から、大きな喘ぎ声が聞こえて来た。 そのとき、電話のベルが鳴った。私は、無視して、愛の行為を続けた。二人が、絶頂を迎えたとき、再び電話が鳴った。 身支度を整えて電話に出たら、美紀からだった。 「先程は、ありがとうございました。」 「いえ、こちらこそ。」 「無事にお帰りになりました?」 「ええ、お蔭様で。奈々枝さんも、無事だと思います。」 「それが、奈々枝さんと連絡が取れないのです。彼女、イヤリングを落としていったのです。心配するといけないので、連絡してあげようと思うのですが。」 見ると、奈々枝の片方の耳にイヤリングがない。 「携帯は?」 「それが、電源が切られているようでして。」 「そうですか。酔っ払って寝ているのでしょうかねえ。タクシーの中でも、かなり酔っているようでしたから。」 「ところで、これから伺って良いでしょうか。私、みんなが帰って行ってから寂しくて。」 「ええ、でも食べる物が何もないんですよ。」 「大丈夫です。あなたがいてくれれば、それで十分ですから。1時間後に伺います。」 そう言って、彼女は電話を切った。 私は、慌てた。急いで、奈々枝に事情を話した。イヤリングのことは言わなかった。奈々枝は、不満そうな顔をしたが、そう言ってもいられない。タクシーを呼んで、急かすように彼女を送り出すと、毛布の皺を伸ばし、テーブルの上を片付け、もう一度居間と寝室を見渡して痕跡がないかを確認した。 気になるのは、香水の匂いである。とっさに匂いを消す方法を思い付かない。 ―続く― |