男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/07/12 3:42:22|小説「学校の怪談」
学校の怪談−01−
学校の怪談−01−

 「光山先生、お願いがあるのですが。」
 夏休みの近いある日、光山は中年教師の瀬戸山教諭から声を掛けられて振り向いた。光山は7月から代用教員としてこの女子校に入って来たばかりである。
「何でしょう?」
「実は、宿直を変わって欲しいのです。」
「はあ・・・」
「父親の初盆で、どうしても田舎に帰らなければならないのです。」
「はい・・・」
「いいのですね。ありがとうございます。これで実家に顔向けができます。ありがとうございます。」
「えっ? いや、まだ、その・・・」
光山がはっきり返事もしないうちから、瀬戸山教諭は後ろを向いて行ってしまった。
 「あの〜、光山先生。私、お願いが。実は、故郷の両親からどうしても帰って来いと言われていまして、宿直を変わって欲しいのですが。」
今度は、3年先輩の柳井教諭である。柳井はまだ独身であるが、新しく来たときにいろいろ面倒を見てくれていたので、これも断れなかった。
 「光山君、当直を代わってくれないか。盆には坊さんが来るし、俺も一家の主として忙しいんだよ。頼むよ。」
体育教師の本山教諭である。威圧的な言い方だったが、日頃麻雀付き合いもあり、これも断れなかった。
 独身の光山は他にも頼まれて、結局お盆の週の一週間学校に泊まることになった。最近は学校に不法侵入者がいたり物騒な事件が起こっていて、用務員の他に宿直を置くようになった。私立のこの高校の経営は苦しく、警備員を置く余裕がなかったから、教諭が宿直につくようになったのである。
 宿直は、夜間も適宜校内を見回りして、不審なことがないか巡回・点検するように義務づけられていた。
         ―続く―







2021/07/03 10:29:45|小説「晩秋の歌」
晩秋の歌−45−(最終回)
晩秋の歌−45−(最終回)
 
 その後も、奈々枝から何度か電話があったが、逢うならテニスでみんなと一緒のときにしようと告げた。しばらくすると、電話は来なくなった。
 しかし、テニスの後では、みんなと一緒にやって来た。私の家は、ある意味でテニスコートのクラブハウスのような感じになっていた。奈々枝も、違和感もなく飲んでははしゃいでいた。そして食後のパーティでは、積極的に私に抱かれた。
 洋子はレスビアンで男には全く関心を示さず、美紀と美香はバイセクシャル、男の相手もすれば女の相手もした。奈々枝は女に興味はないようだった。今、日本人の13人に一人がLGBTだと言われている。普段の生活の中で、それを感じることはないが、実際に人々と深く付き合っていると、必ずしもみんながノーマルな性の欲望を持っているのではないのがわかる。そして、私の家ではみんながそれぞれの性を楽しんでいた。
 しかし元々は、私と美紀との関係から始まっていた。今では、奈々枝もそのことを尊重するようになっていた。
 ある秋の日、私は美紀と鎌倉に行った。北鎌倉で電車を降りて、円覚寺や明月院などを見て歩き、その後で鎌倉に出て鶴岡八幡宮にお参りする。紅葉の時期、たくさんの人出である。八幡宮にお参りしてから、細い道を30分ほど歩いて瑞泉寺に着いた。静かなお寺で、普段は人が来ることも少ないが、この季節は紅葉を求めて来ている人が多い。春には、梅や水仙がきれいな庭園があるが、この季節はもみじの紅葉が美しかった。決して派手ではなく、あくまで静かな趣である。
 私達は、手を繋いで歩いた。周囲の人達が、自分達の関係をどう見ているのだろうかと思う。還暦を過ぎた男と、まだ30代にしか見えない女が手を繋いで歩く姿は、親子と見えるかも知れないし、あるいは歳の差夫婦や愛人関係と見られているのかも知れない。しかし、旅先ではそんなことも気にならない。私は、時おり美紀の手を強く握った。彼女もまた強く握り返した。
 境内では、野点が行われていた。私達は、それに参加した。歩いていたので、お茶が美味しかった。
 そのとき、上から1枚のもみじの葉っぱが、美紀の茶碗に落ちた。それはまさに真っ赤だった。真っ赤なもみじの葉っぱは、還暦の私の人生の秋を彩る美紀の存在にも似ているように思えた。
                ―完―







2021/07/03 9:51:34|小説「晩秋の歌」
晩秋の歌−44−
晩秋の歌−44−

 突然の奈々枝の訪問に私は戸惑った。瞬間、どうしたら良いかわからなかった。
彼女は、玄関にある靴を見て「お客さんですか」と聞いた。
「うん。」
「お邪魔かしら。」
「急に来られても困るよ。」
「じゃあ、挨拶だけでもして行こうかしら。」
「ダメだ、困るよ。」
「そう、じゃあ、彼女によろしく言ってね。」
奈々枝は、捨て台詞のようにそう言って帰って行った。
 部屋に戻ると、美紀が、「お客さんですか」と聞いた。
「うん、いや、何でもないんだ。」
私の狼狽している様子に、美紀はそれ以上聞かなかったが、明らかに疑念は抱いているようであった。声が大きかったから、来たのが奈々枝であることもわかっているのかも知れなかった。しかし、私は言わなかった。言ってはいけないと思った。奈々枝が来たことを告げれば、美紀と奈々枝を等距離においてしまうように思われたのである。敢えて言わないでおくことが、美紀への義理を果たしているように思ったのである。
 食事を終えて、ゆっくりと飲みながらの二人の時間が過ぎる。最近では、急いで身体を求め合うようなことはなくなっていた。お互いの親密感が増せば増すほど、心のゆとりが感じられるようになっていた。私が彼女を寝室に誘ったのは、食事がお酒に変わってから1時間ほどしてからのことだった。
行為の後で、彼女が言った。
「さっきの女性、奈々枝だったのでしょう。」
「・・・・・」
私が黙っていると、美紀が言った。
「言わなくて、いいです。彼女、あなたにぞっこんのようだったものね。」
「・・・・・」
「でも、あの娘には、気を付けた方が良いわ。思い込んだら、突然、突飛もない行動をするの。悪い娘ではないけど、理性で自分をコントロールすることができないのね。」
「・・・・・」
「彼女、子供の頃にお父さんを交通事故で亡くしているの。それ以来、ファザーコンプレックスというのかしら、年上の人が好きなようで、以前の恋人も中年の男だったわ。男の方は奥さんと離婚したみたいだけど、そのときから奈々枝は男に関心を示さなくなったの。ちょうど1年ほど前のことよ。」
「だけど、美紀さんのことは慕っているんじゃないの?」
「そうね、彼女も寂しがり屋なのね。私のことは、慕ってくれているわ。」
「僕については、どう思っているんだろうね。」
「今は、好きで好きでたまらないのだと思います。ちょうど青春時代の恋の感じで、他のことは全く目に入らない状態でしょう。彼女は、激しい性格です。でも、悲しいのは、彼女はその気持ちが長続きしないことです。次に好きな人ができたら、彼女の心のすべてはそっちに行ってしまうと思います。」
 私は、美紀が全てをお見通しであることに驚いた。女の直感には、しばしば男の理性を超えたところがある。女の心を読む力など、男の比ではない。それは、日頃からおっとりとしているように見える美紀も例外ではなかったのである。しかし、彼女に嫉妬らしい言葉や感情は感じられなかった。そういう面では、彼女はおっとりとしていた。私は、奈々枝と二人きりで逢っていたことは敢えて美紀に言わなかったが、以後、それは知られていることを前提として話をすることにした。
                 ―続く―







2021/07/03 9:44:18|小説「晩秋の歌」
晩秋の歌−43−
晩秋の歌−43−
 
 梅さんが好意を持っていてくれることは、私にとってとても心強いことだった。
 私は、奈々枝とのことで、美紀に対して何となく疚しい気持ちになっていた。告白してしまえば、自分の気持ちはずっと楽になるだろう。しかし、それをするとどうなるだろう。美紀と奈々枝は気まずい関係になるだろう。洋子や美香は、美紀も公認の関係だったが、奈々枝の場合は違っていた。彼女は、美紀に隠して私と逢ったのである。しかも、生徒の立場で師の愛人を盗んだのだった。男女の関係の問題もそうだが、人間としての問題でもあった。
 無論、美紀の私に対する気持ちの持ちようも大きく変わるだろう。すぐに嫌いになるかどうかはわからないが、今までの信頼を損ねることは間違いない。結局、私は秘密を守ることにした。
 しかし、その後も奈々枝からのアプローチは続いた。よく電話がかかって来た。昼間のときもあれば、夜中にかかって来ることもあった。夜中のときは、飲んでいると思われることが多かった。私は、あまり深入りしたくなかった。美紀との関係を裂かれるのが怖かった。飲んでいるときの奈々枝はしつこかった。
「ねえ、三橋さん、これから行っていいですか。」
「いや、今日は疲れているんだ。またにしてくれないか。」
「またって、いつなの。この前もそう言ったわ。」
「二人だけで逢っちゃ、美紀さんに悪いよ。」
「三橋さん、美紀先生のこと好きなの。」
「あゝ、好きだよ。君のことも好きだ。」
「じゃあ、逢ってよ。今から、タクシーで行くわよ。」
「ダメだよ。明日も、朝が早いんだ。来ても家に入れないからね。」
「ダメ!あたし行っちゃうから。」
こんな調子である。もしかして来たらと思い準備をするが、結局は来なかった。
 美紀とは、用事があってもなくても、毎日メールを交換していた。心では、夫婦以上の繋がりがあると思っていた。しかし、美紀の立場を考えると、結婚することはできなかったし、彼女にもその意志はなさそうだった。
 私は、それで良いと思っていた。今の時代、男と女の関係にはいろいろな形がある。アメリカやロシアなどは、依然として離婚率が高いし、フランスなどでは、婚外子の比率が高いと言う。そういう外国の文化は、確実に日本にも来ている。私と美紀の関係も、さして不自然なものではないだろう。
 一方、奈々枝の方は、結婚まで考えているかどうかはわからなかったが、私に強い執着心を持っているようであった。しかし歳の差を考えると、とても結婚と言う気にはなれない。それは単なる性に対する欲望なのか、あるいは私に対して好意を持っているからなのかもはっきりしないところがあった。もしかしたら、美紀に対する対抗心のようなものを持っているのかも知れないとも思われた。
 ある日、美紀が私のマンションにやって来て、二人で食事をしているとき、玄関のチャイムが鳴った。誰かと思って玄関に出てドアを開けると、そこには奈々枝が立っていた。
                 ―続く―







2021/07/03 9:33:55|小説「晩秋の歌」
晩秋の歌−42−
晩秋の歌−42−

 私は、取り敢えず窓を全開にして、エアコンのファンを回した。しかし部屋の中が冷たいままではいけない。20分ほど、そうした後で、エアコンの暖房を全開にし、普通の温度になったとき、設定を元に戻した。
 やっとそこまでしたとき、玄関のチャイムが鳴った。私は、深呼吸をして玄関に出ると、美紀を迎え入れた。私がコートを受け取ると、その下はセーターとスカートに着替えていた。
「いらっしゃい。今日はありがとう。お疲れ様でした。」
「すみません、急に。ご迷惑ではなかったでしょうか。」
「とんでもない。来てくれて嬉しいです。」
「逢いたかったのです。今日までは、パーティのことでそれなりに緊張していました。皆さんが帰った後で、急に寂しくなり、無性に三橋さんに逢いたくなりました。」
 そう言うと、私の胸に顔を埋めた。普段、感情をあまり表に出さない美紀にしてみれば、珍しいことだった。私は、美紀を抱き締めた。
 私は、飲むべきか、そのままベッドに行くべきか迷った。本音は、彼女もベッドに行きたいのだと思う。しかし、彼女にしてみれば、そんなことを言えば恥ずかしいだろうと思う。そこで私は、有無を言わせないように強引にベッドに誘うことにした。私が「寝室へ行こう」と言うと、彼女は私の心配をよそに素直に頷いた。
 寝室に入ると、すぐに彼女を抱き締めてキスをし、そのままベッドに倒れ込んだ。そうしないと、今まで奈々枝と一緒にいたことを見破られそうな気がしたのである。美紀の方は、そんな疑念は抱いていないようで、私の愛撫にすぐに反応した。年末からずっと忙しくて逢っていなかったので、その寂しさもあったのだろう。
 私は、彼女の服を脱がせながら、ゆっくりと全身を愛撫して行った。彼女の表情が歪んだ。それは、必死で大きな声が出るのを抑えているように思えた。彼女とのセックスは、見た目は静かなものだった。奈々枝などは、表情も態度も豊かに自分の感情を表現した。美香は、まだセックスも受動的で、受け身一方である。女性のセックスのときの悦びの表現の仕方も、人それぞれである。
 女の悦びに歪む表情は、男にとって嬉しいものである。それは笑顔に劣らない魅力的な顔だと思う。私は、そんな美紀の顔を、より悦びに高ぶらせたいと思い、愛撫に情熱を加えて行った。彼女が悦びを表現するとともに、私も元気になって行った。美紀の家でのパーティでお酒が入っているところに奈々枝がやって来たばかりである。還暦を過ぎた身にとって、続けてはきつかった。
 それを助けてくれたのは、やはり美紀の悦びの表情だった。私は、元気を取り戻すと、美紀に挑んでいった。愛の行為の後でのゆっくりとした時間が過ぎていく。私も美紀も黙っていて十分に心は満たされていた。何も言わずに抱き合っているだけで幸せだった。
 結局、彼女はその日は私のマンションに泊まり、翌朝私が車で家に送って行った。彼女の家に行くと、梅さんが出て来て、お茶を勧めた。私は、彼女の勧めに従った。
                 ―続く―







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