学校の怪談−01−
「光山先生、お願いがあるのですが。」 夏休みの近いある日、光山は中年教師の瀬戸山教諭から声を掛けられて振り向いた。光山は7月から代用教員としてこの女子校に入って来たばかりである。 「何でしょう?」 「実は、宿直を変わって欲しいのです。」 「はあ・・・」 「父親の初盆で、どうしても田舎に帰らなければならないのです。」 「はい・・・」 「いいのですね。ありがとうございます。これで実家に顔向けができます。ありがとうございます。」 「えっ? いや、まだ、その・・・」 光山がはっきり返事もしないうちから、瀬戸山教諭は後ろを向いて行ってしまった。 「あの〜、光山先生。私、お願いが。実は、故郷の両親からどうしても帰って来いと言われていまして、宿直を変わって欲しいのですが。」 今度は、3年先輩の柳井教諭である。柳井はまだ独身であるが、新しく来たときにいろいろ面倒を見てくれていたので、これも断れなかった。 「光山君、当直を代わってくれないか。盆には坊さんが来るし、俺も一家の主として忙しいんだよ。頼むよ。」 体育教師の本山教諭である。威圧的な言い方だったが、日頃麻雀付き合いもあり、これも断れなかった。 独身の光山は他にも頼まれて、結局お盆の週の一週間学校に泊まることになった。最近は学校に不法侵入者がいたり物騒な事件が起こっていて、用務員の他に宿直を置くようになった。私立のこの高校の経営は苦しく、警備員を置く余裕がなかったから、教諭が宿直につくようになったのである。 宿直は、夜間も適宜校内を見回りして、不審なことがないか巡回・点検するように義務づけられていた。 ―続く― |