男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/08/21 17:29:43|小説「夜の釣り友」
夜の釣り友−8−
夜の釣り友−8−

 浴室から出て来た彼女は、白いワンピースに着替えていた。まだ乾き切っていない髪が黒く光っていて、ワンピースの白と対照的だった。
「お待たせしました。今、ご飯をお持ちします。」
「すみませんね。余計な手間暇をかけて。」
「いいえ、とんでもありません。いつも一人で食べているのですが、一人の食事なんて侘しくてつまりません。こうして一緒にお食事ができるだけで嬉しいのです。」
「迷惑じゃなければ、良いのですが。」
「迷惑だなんて。私は、一緒に食事をしていただけることが嬉しいのです。さあ、召し上がってください。」
彼女は、そう言ってご飯をよそおった。
 ご飯とみそ汁、それに漬け物とキスの天婦羅だけの食事だったが、とても美味しかった。彼女の言う通り、食事はただ食べれば良いというものではない。好きな人、気の合う人と、語らいながら食べるのがどんな料理をも美味しく感じさせる。勿論、彼女の作ってくれたものは、美味しかった。
 私は彼女とテーブルを挟んで向かい合わせに座っていたが、私はしばしば彼女の顔を見詰めていた。それほど彼女は美しい上に風呂上りで肌が輝いていた。
「私の顔に何かついていまして?」
「い、いえ、あなたがとても美しいものですから。」
「マア、そんなことを。」
「いえ、本当です。僕は、今までにあなたほどきれいな人を見たことがありません。」
「本当にお上手ですこと。」
 彼女は、笑いながらそう言った。
                ―続く―







2021/08/20 17:15:10|小説「夜の釣り友」
夜の釣り友−7−
夜の釣り友−7−
 
 彼女の針先を見ると、小さなキスが跳ねていた。彼女は、おっかなびっくりの様子である。私は、魚を針から外すと、彼女に手渡した。
「こんなに小さいのですね。」
「でも、君の初めての釣果だよ。」
「でも可哀そうだわ。」
「そうだね、まだ子供だね。」
彼女は、波打ち際に行くと、手にしていた魚を海に放した。
 それからはけっこう大きなのが釣れ始め、2時間で二人合わせて30尾ほど釣り上げた。
「これ、天婦羅にすると美味しいんだよ。」
「私、やってみようかしら。食べにいらっしゃいません?」
「いいのですか。」
「光岡さんこそ、お時間は大丈夫ですか。奥様が待っていらっしゃるのではないですか。」
「大丈夫です。いつも気まぐれで遅かったり早かったりするものですから、僕のことなんか気にもしていません。」
 私達は、道具を片付けると、彼女の家に向かった。家に着くと、彼女が私にシャワーを勧めた。私は、先にシャワーを浴びたが、その間に彼女は天婦羅の準備をしていた。私が、シャワー室から出ると、彼女が揚がり始めた天婦羅をテーブルに運んでいた。私を見た彼女が言った。
「ビールでも飲めれば良いのですけどねえ。お車じゃあそうも行きませんわね。」
「いいんだ。美味しそうに揚がっているねえ。台所が一段落したら、君もシャワーを浴びておいでよ。」
「そうしますわ。その間にご飯も炊けるでしょうから。」
そう言うと、彼女は浴室に消えて行った。
 私は、テレビを見ながらも、彼女がシャワーを浴びている姿を想像して、さぞ美しいだろうと思っていた。
                ―続く―







2021/08/19 19:41:26|小説「夜の釣り友」
夜の釣り友−6−
夜の釣り友−6−
 
 次の日、私は、妻に釣りに行くと言って家を出て、真っ直ぐ綾乃の家に向かった。彼女は、白いデニムのスラックスを履き、上にはやはり白いT―シャツを着ていた。昨日は白いワンピースだったから、白が好きなようである。
 彼女を乗せ釣り道具を積み込むと、そのまま虹ケ浜に向かった。この浜は長い砂浜が続き、海岸の後ろは防風林の松林になっていて、美しい景観を見せている。夏には海水浴客で賑わうのだが、お盆を過ぎた今は人も少ない。
 釣り道具を手に、二人は砂浜に出た。早速、先端に重りを付けて投げる練習に入る。私は、まず自分でやって見せた。それから彼女の後ろに回って竿の持ち方から手を添えて教えた。ちょうど彼女を後ろから抱いているような格好である。
「糸に指をかけて、リールを起こして、こうして投げます。」
 そんな説明をしながら、彼女の手に自分の手を添えて投げる。重りは、すぐ近くに落ちた。手を放すタイミングが遅れたようである。何度かやっているうちに、少しずつ遠くに飛ぶようになった。投げるとき、後ろから手を添えると、ときどき彼女の乳房に手が触れた。彼女はブラジャーをしていなかった。その度に、彼女はビクッと身体を震わせた。
「今度は、自分でやってごらん。」
そう言って、私は身体を離した。
 何度かやっているうちに、次第に遠くに飛ぶようになっていった。
「じゃあ、餌をつけてやってみましょうか。」
 この海岸では、シロギスが釣れる。狙いはシロギスである。
私は、彼女の針にゴカイを付けると、投げてみるように言った。彼女は、それを上手に投げた。
「上手、上手、それで良いのです。」
そう言って褒めながら、自分も糸を付けて投げ入れた。何度か投げたが、一向に魚が喰う気配がなかった。
 何度目かの糸を引いたときである。彼女が驚いたような声を上げた。
「あっ、お魚がいる。」
                  ―続く―







2021/08/18 17:42:42|小説「夜の釣り友」
夜の釣り友−5−
夜の釣り友−5−
 
 彼女の家は、松林に囲まれた3部屋ほどの一軒家なのでそんなに大きくはなく、近所の家とは少々離れていた。家に着くと、彼女は私をソファに座らせ、すぐに台所に行ってコーヒーを沸かし始めた。
 彼女の淹れてくれたコーヒーは美味しかった。私達は、小さなテーブルを挟んで座ってコーヒーを飲んでいた。
 話題は釣り談義だった。私が、釣りを始めたばかりであること、まだキスや小アジくらいしか釣ったことがないことなどを、ユーモアを交えて話すと、彼女は笑ってばかりいた。彼女の笑顔は、本来の美しさを益々引き立てた。そんな彼女の笑顔が見たくて、私は益々饒舌になっていた。普段、話すことの苦手な私にしては自分でも意外なことだった。
 コーヒーを飲み終えると、ソファに移って、買って来た釣り道具の包みを開いた。彼女は、私の横に座った。
私が、竿にリールを取り付け、その扱い方や仕掛けの付け方などを教えると、彼女は真剣な顔をして私の話を聞いていた。
「ここをこう持って、針を投げます。持ってみてください。」
私は、彼女に竿を持たせると、手を添えて竿の持ち方やリールの扱い方を教えた。彼女は、最初は不器用な手つきだったが、私が教えると次第に慣れているようだった。
「今度は、仕掛けの投げ方の練習が必要ですね。今度、砂浜で練習をしましょう。」
「はい、よろしくお願いします。」
「じゃあ、明日にでも。あなたは、時間は大丈夫ですか?」
「はい、私は大丈夫ですが、光岡さんこそ大丈夫ですか?」
「ええ、僕は釣りをしながら、教えてあげますよ。じゃあ、潮の加減で9時から出いかがでしょう。」
「はい、楽しみにしています。」
 次の日の約束をすると、私は彼女の家を辞した。
                  ―続く―







2021/08/17 15:32:59|小説「夜の釣り友」
夜の釣り友−4−
夜の釣り友−4−
 
 私は、先月自分の釣り具を買うとき世話になった若い男の店員を呼ぶと、事情を説明した。店員は、すぐに理解して、竿やリール、仕掛けなどを選んでいた。そして使い方などを丁寧に教えている。ひと月ほど前に自分が買ったときは、初心者だと言うのにそこまで親切ではなかったのにと少々腹が立った。しかし綾乃がそれだけ美しいのだと思うと、半分自慢したいような気にもなっていた。
 1時間ほどで買い物を済ませて車に乗ると、私が聞いた。
「さてこれからどうしましょう。食事でもして行きませんか。」
「そうですね、私もお腹が空きました。でも、光岡さんは、お時間は良いのですか?奥様が昼食を作って待っておられるのではないですか?」
「いいえ、大丈夫です。昼食は食べて帰ると言ってありますから。」
「そうですか、じゃあご一緒させてください。一人の食事ってつまらないですものね。」
 小さな町なので立派なレストランなどない。私達は国道沿いにあるファミリーレストランに入った。彼女と私は、ハンバーグステーキを食べた。彼女は、痩せ型なのに健啖家のようで良く食べた。見ていていかにも健康な食べ方だった。
 食事が終ったとき、私がまた聞いた。
「さて、これからどうしましょう。釣り道具の使い方でも、教えましょうか。」
「光岡さんのお時間は良いのですか。」
「僕は大丈夫です。」
「じゃあ、うちにいらっしゃいませんか。コーヒーくらいは淹れさせて差し上げますわ。」
「いいですか。ご迷惑じゃありません?」
田舎町のことである。つまらぬ噂で彼女が苦境に落ちたりしたら困ると思ってそう聞いた。
「大丈夫です。近所付き合いもまだありませんし、とやかく言われることもありませんから。」
 私は、ハンドルを彼女の家の方に向けた。
                    ―続く―







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