男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/09/19 5:26:48|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−21−
パピーの冒険−21−

 おじさんは、奥さんの剣幕に、言い訳のように言います。
「でもこいつは可哀相に野良犬に襲われていたんだぜ。俺が助けてやったんだ。お腹も空いているらしいから、何か食べさせてやってくれよ。」
「あんた、まだわかっていないのね。そんなことを言うんなら、あんたのご飯だってないわよ。」
「でも・・・・」
 僕は、居たたまれなくなって、その場を離れました。しばらく歩いていたら、後ろから「お〜い、待てよ。」という声がしました。見るとさっきのおじさんです。僕が立ち止まると、近付いて来て言いました。
「さっきはすまなかったなあ。俺は、犬が大好きなんだけど、女房が駄目なんだ。罪滅ぼしに、これでも食べてくれよ。」
おじさんは、ポケットからソーセージを出してくれました。
食べる僕に、おじさんが言いました。
「お前も、女には気をつけろよ。変なのと一緒になると、一生後悔するからな。」
僕には、その意味がよくわかりませんでした。
 ソーセージを食べ終えると、僕はおじさんを後ろにしてまた歩き始めました。
 僕は、今自分がどこにいるのかがはっきりとはわかりませんでしたが、直感で向かっている方向が間違ってはいないと思いました。でも、あとどのくらい歩かなければならないのかがわかりませんでした。
 町には、それぞれの町の雰囲気があります。今いるところが、自分の町でないことはわかります。昼前には、また町をひとつ通り過ぎました。
 昼には、田んぼの横にある小屋で休み、一休みするとまた歩き続け、夜には次の町に入っていました。家々からは、お母さん達が夕食の支度をしているのでしょう、台所あたりから良いにおいがして来ます。僕は、またお腹が空いているのに気付きました。
 それでもしばらく歩いて行きましたが、いよいよお腹が空いて来ます。一軒のレストランの裏に行くと、良いにおいがしていました。料理の余ったものがゴミ箱に捨てられているのです。僕がゴミ箱の横でどうしたらふたを開けられるかと思案していたら、一人のおじさんがやって来てゴミ箱のふたを開けて中からお酒のビンや余った料理を拾い始めました。そして僕の姿に気が付くと、「おやっ、お前もお腹が空いているのかい。」と言って、食べ物を分けてくれました。僕が食べ終わると、「お前も、一人なのか。それじゃあ、一緒に来なよ。」と言って、荷物の中から紐を取り出し、僕の首輪に繋いでしまいました。
                ―続く―







2021/09/18 5:43:56|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−20−
パピーの冒険−20−

 僕も不良野良犬たちに対して構えましたが、どう見たって勝ち目はありません。思わず尻尾が下がってしまいます。その様子を見て、ボスが言いました。
「いいか、お前。お前が俺達の仲間になるなら許してやるが、断るとここを無事じゃ通れないぞ。これが最後の忠告だ。さあ、どうだ。」
僕は、ぶるぶる震えながらも言いました。
「僕は、さっちゃんのところに帰らなくちゃならないんだ。お前達なんかの仲間になんかなれないよ。」
「そうか、わかった。覚悟しろよな。」
そう言って、牙を剥きながら僕の方に近付いて来ます。僕は、このまま咬まれてはいけない、抵抗しなければいけないと思いながらも、身体が震えて動けませんでした。
 そのときです。
「おい、お前ら何をしているんだ。弱い者いじめはだめだぞ。」という声がしました。見るとジョギングをしているおじさんです。その声に、野良犬たちは一目散に逃げてしまいました。野犬狩りが怖い彼等は、大人の人間は誰でも怖かったのです。
 野犬達が行ってしまうと、僕はそのおじさんのところに尻尾を振りながら近寄りました。おじさんは、「大丈夫か?」と言いながら、頭を撫でてくれます。
「お前は、首輪をしているから野良犬じゃなさそうだな。飼い主からはぐれたのかな。それはどうでも良いけど、お腹が空いているんじゃないか?」
その言葉に、僕は一生懸命尻尾を振りました。
「よし、それじゃあ、俺に着いて来い。もうちょっと走ったら、かみさんに何か貰ってやるからな。」
 そういうとおじさんは、ジョギングを続け、僕はその後ろから着いて走りました。おじさんの家は、住宅街の中にありました。
 家に着いたとき、おじさんが言いました。
「お〜い、お客さんだぞ。何か食べ物はないか!」
その声を聞いて、奥さんが出て来ました。そして僕の姿を見ると言いました。
「何よ、犬じゃない。あなた私が、子供の頃犬に咬まれて、犬が大嫌いだってこと知っているじゃない。なんでこんな犬を連れて来たの!」
 すごい剣幕です。僕は、これはまずいと思いました。
                 ―続く―







2021/09/17 6:55:23|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−19−
パピーの冒険−19−

 サリーの家を出て来た僕は、十五夜も過ぎた遅い月の夜道を歩いて行きました。道の周りは葡萄や梨の畑が続いています。葡萄畑の新緑のにおいを嗅ぐと、サリーとのことを思い出します。僅かの日数でしたが、サリーは優しく親切でした。メリーよりはよほど優しいし、親切だと思いました。
 夜の道は、保健所の野犬の捕獲員はいないし、車も少なくて安全なのですが、怖い野良犬に会うと大変です。彼等は無法者で、自分達のためにはどんな酷いことでも平気でします。
 明け方近くになって大きな川の河原に出たとき、3匹の野良犬に出会いました。3匹とも雑種ですが、みんな僕より大きい身体をしています。
「おい、どこに行くんだ。」
一番大きな犬が言いました。彼がボスでしょう。
「家に帰るんだよ。」
僕が答えました。
「なんだ、挨拶もせずにここを通るつもりなのか。」
尻尾を立てて歯を剥き出しています。威嚇の態度です。
「おい、俺達の仲間になれ。それなら許してやるが、そうじゃないと酷い目に遭わすぞ。」
「だめだよ、僕は家族のところに帰らなくちゃならないんだ。だからずっと長い旅をしているんだもの。」
「嫌なのか。痛い目に遭ってもいいんだな。」
「そんな。暴力はいけないよ。」
 僕がそう言うと、2番目に大きな雌の犬が話の間に入って言いました。
「仲間になれば、食べ物にも困らないし、それにけっこういい思いもできるんだぜ。」
「でも、だめなんだ。僕は、飼い主さんのところに帰らなくちゃいけないんだよ。」
「この坊や、まだわかっていないようね。」
 怒ってしまった雌犬の声に、ボスが仲間に言いました。
「おい、お前ら、ちょっとこいつに礼儀を教えてやろうじゃないか。」
 ボスを正面に、2匹が僕の後ろの方に回りました。すっかり囲まれてしまい、こうなると逃げることもできません。3匹は、姿勢を低くし、歯を剥いて唸っています。もはや絶対絶命だと思いました。
                 ―続く―







2021/09/16 19:12:54|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−18−
パピーの冒険−18−

 サリーは、夕方はお姉さんやお母さんに散歩に連れて行ってもらいます。サリーも散歩のときは本当に嬉しそうです。お姉さんやお母さんが近付いて来ると気配でわかるのでしょう、大きく尻尾を振って鎖も切れんばかりにそっちの方に行こうとします。
 散歩には僕も一緒に行きます。葡萄畑に行くと、お姉さんがサリーの鎖を離しました。僕は、サリーと一緒に畑の奥の方に駆け出して行きました。サリーと一緒で自由に走れる、本当に楽しいことでした。
「君、駆け足が早いね。」
「競争しましょうか。」
「よし、負けないぞ。」
 僕とサリーは、隣の畑まで競争しました。遠くから、お姉さんの声が聞こえて来ました。
「サリー、遠くに行っちゃだめよ。帰っておいで。」
サリーは、立ち止まってお姉さんの方を振り返りました。僕は言いました。
「ねえ、大丈夫だよ。もっと向こうまで走って行こうよ。」
「だめ、言うことを聞かないと明日から散歩に連れて行ってもらえなくなるの。」
 僕も、お姉さんのところに戻って行くサリーの後ろに着いて行きました。
 食べ物は貰えるし、サリーと一緒にいることができるし、僕は、今幸せでした。これからまた辛い危険な旅を続けると思うと憂鬱な気持ちになります。このままずっとここにいたいと思いました。
 でもさっちゃんやメリーのことも忘れられません。3日目の夕方、僕はまた旅を続けることにしました。
「行っちゃうの?」
「うん、僕にもさっちゃんや家族がいるんだ。帰らないと心配していると思うんだ。」
「わたし、寂しいわ。」
「うん、僕も辛いけど、でも行かなくっちゃいけないんだ。」
 そう言って歩き始めました。後ろからサリーの寂しそうな鳴き声が聞こえてきて、よほど戻ろうかと思いましたが、心を鬼にして振り返ることなく道を歩き始めました。
               ―続く―







2021/09/15 5:23:23|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−17−
パピーの冒険−17−
 
「ねえ、あなたはいつも何を食べているの?」
食べながらサリーが聞きます。
「うん、家にいたときはドッグフードだった。でもさっちゃん達とはぐれてからはいろいろ食べたよ。」
「さっちゃんって? それに、いろいろって何を食べたの?」
サリーは、いろいろと聞いてきます。
「うん、さっちゃんは僕のご主人なんだ。優しい女の子だよ。さっちゃん達とはぐれてからは、いろいろ食べたよ。バッタも食べたし、蛙も食べた。でもおじいさん犬に連れて行かれたおばあさんに食べさせて貰った味噌汁をかけたご飯がとても美味しかったんだ。その美味しさは、ドッグフードの比なんかじゃじゃなかったよ。」
「ふ〜ん、そうなの。わたしも食べてみたいわ。でもお姉さんは、病気になるから駄目だって食べさせてくれないの。」
「そうか、でも僕も家にいるときにはドッグフードだけだったよ。」
「でもね、親戚の子供達が遊びに来たときは嬉しいの。お菓子や、ご飯のおかずの余ったのなんかをくれるのよ。その美味しいことったらないわ。」
「そうだね、ドッグフードも嫌じゃないけど、決して美味しいものじゃないよね。」
僕達は、いくら一緒にいても飽きません。
 僕は、サリーと散歩に行きたいと思いました。でもサリーは鎖に繋がれています。一人じゃつまりません。何とか鎖が切れないかと噛んでみましたがとても無理です。何度も試しても駄目でした。
 結局、僕がサリーの傍にいることが多くなりました。
                  ―続く―







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