男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/09/24 4:06:01|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−26−

パピーの冒険−26−

 食べ終わるとおばさんが言いました。
「さっきも言ったけど、私はずっと話し相手がいなくて寂しいんだよ。話し相手になってくれるかい?お前の苦労話も聞きたいからね。」
「いいよ。」
 僕がそう言うと、おばさんはお喋りを始めました。人間のように言葉はありませんが、身体で話します。僕が聞いていると、次から次へと話が続きます。
 今の飼い主に拾われたいきさつ、隣の家に飼われていた雄犬のこと、彼との間に子供ができて、それ以降去勢されたこと、予防注射が痛いことなど、次から次へとお喋りが続きます。僕の苦労話が聞きたいと言っていたのに、僕が喋る隙間がありません。これじゃたまらないと思い、僕はそこを逃げ出しました。
 おばさん犬は、「行っちゃうのかい。」と言って寂しそうにしていましたが、僕は後ろを見ないで歩きました。
 人間もそうですが、犬も女のお喋りは同じだと思いました。しかし、ここでまた食べ物の貰い方をひとつ教わったのは大きな収穫でした。食べ物屋の前におとなしく座って尻尾を振っていれば、けっこう食べ物をくれる人がいるのです。しかし大きな店や、きれいな店は駄目でした。追い払われてしまうのです。
 普通、男より女性の方が優しくて親切でした。中には犬を怖がる女の人もいますが、大抵は可愛がってくれます。また子供も、可愛がってくれました。それでも中には石を投げつけたりする腕白な子供もいます。
 その人が犬を好きか、嫌いか、また悪い子供か良い子供かが、自然にわかるようになっていました。でも、あまり犬好きの人にも困ることがあります。僕を繋いで飼おうとするからです。
 あるとき公園の中を歩いていると、お母さんに連れられた小学生くらいの女の子が遊んでいました。優しそうなので僕が近付いて行くと、手を出して頭を撫でてくれます。それをみたお母さんが、「やめなさい。汚いから。」と言いました。それでも女の子は、僕の頭を撫で続けています。
「お母さん、汚れているけど、洗ってあげればきれいになるし、とても可愛いよ。ねえ、飼ってあげましょうよ。それに、賢そうなの。きっと、私の良い友達になれるわ。」
「もし飼ったら、良い子にする?」
「うん、約束する。」
「そして、ちゃんと学校にも行く?」
「うん、それも約束する。」
「じゃあ、とにかく家に連れて行って洗ってやりましょう。」
 女の子は、僕に着いて来るように言いました。僕は、二人の後ろから着いて行きました。行った先は、芝生のある庭の広い家でした。庭の周りには、塀がありました。
                  ―続く―







2021/09/23 6:13:54|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−25−
パピーの冒険−25−
 
 歩いていて、いつも困るのが食べ物でした。これはさっちゃん達とはぐれてからずっと続いていて、自分がだんだん痩せているのに気が付きました。お腹が空くと、歩く元気も失せてしまいます。僕は、虫や蛙、ゴミ箱の中の残飯など何でも食べました。そうして歩き続けました。
 ある小さな町にやって来たときのことです。歩いていると、庭にメスの犬が繋がれていて、僕に話し掛けました。
「おや、坊や、どこに行くの?」
「うちに帰るんだよ、おばさん。旅先で、飼い主のさっちゃん達にはぐれちゃったんだ。」
「しばらく話をして行かないかい。うちのご主人様は、朝早く出掛けて、夜遅くしか帰って来ないんだ。あたし、寂しくて。」
「いいよ。でも僕は、お腹が空いているんだよ。」
「そうかい、でも食べ物は無いんだよ。朝食べたら、夜遅くまで食べられないから、あたしだってお腹は空いているんだ。」
「じゃあ、何か持って来てあげようか。でも、どこに行ったら食べ物があるんだろう。」
「この先にパン屋さんがあるよ。いつも良いにおいがしているから、すぐにわかるよ。」
「でも、追い払われるんじゃない。」
「良い子にしていればいいよ。店の前に行儀よく座っているのよ。決して店の中に入ったりしちゃ駄目だよ。そうしたら、パンの耳なんかをくれるから。」
 僕は、言われたとおりにおいのする方に行き、パン屋さんの前でおとなしく座っていました。すると店の女の子がやって来て言いました。
「おや、この子どうしたの?」
僕は、一生懸命尻尾を振りました。
「身体は汚れているけど可愛い子ね。お腹が空いているのね。ちょっと待ってて。パンの耳があるから、持って来てあげるわ。
 そう言うと、店に入って一握りのパンの耳を持って来てくれました。
僕は、それを半分だけ食べ、残りを咥えてさっきの犬のおばさんのところにました。
「おや、持って来てくれたのかい。ありがとう。」
そう言って、おばさんは美味しそうにパンを食べました。一口食べたところでおばさんが言いました。
「おやっ、お前は食べないのかい?」
「うん、僕はあまりお腹が空いていたので食べちゃったんだ。それにそんなにたくさんは咥えて来られないからね。」
「そうかい、それじゃあ頂くよ。」
そう言っておばさんは食べてしまいました。
                  ―続く―







2021/09/22 5:52:53|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−24−
パピーの冒険−24−
 
 旅は続きます。今まで、犬や人間に追い掛けられたり、あるいは親切にされたりしました。そんな経験から、僕に好意を持っている人と、敵意を持っているが、自然にわかるようになりました。中には、僕のような小さい犬でも怖がる人もいました。猫だって、普通は逃げますが、中には攻撃して来るのがいます。
 ある家の前を歩いているときです。庭先に、餌の入ったお椀が置いてありました。猫の餌ですが、お腹がペコペコでしたので、それを食べようとしました。そのとき大きなどら猫が向こうから走って来ると、僕に体当たりして来ました。そして背中を引っ掻き、尻尾に咬みつきました。僕は急いで逃げますが、猫は追い掛けて来ます。身体は大きいし、足も速いので、必死で逃げました。猫にも随分怖いのがいるのです。
 また動物では、蛇やカラスも怖いです。最初、知らずに蛇に近寄ったら首を持ち上げて咬みついて来ましたので、慌てて逃げました。またカラスがゴミ箱を漁っていたので、近付いて横取りしようとしたら、何羽かで一緒になって襲われました。空から襲われたのでは、抵抗のしようがありません。僕は、一目散に逃げました。
 僕は、そんなことを繰り返しながら、歩いて行きました。もうさっちゃん達にはぐれてから2週間になろうとしていました。
 歩くには、大きな道路が真っ直ぐで良いのですが車が多く、横切るのに大変です。町や人が多いところでは、信号が青のときが安全だと気付きました。青のとき、人が道路を渡っているので自然に覚えたのです。人間の中には、犬が色盲だという人もいますが、色の違いはわかるのです。町を歩いて気がついたのですが、子供はよく信号を守るのに、大人の方が守らない人が多いのです。
 一番良いのは線路の脇でした。たまに電車が来ますが、線路なら捕獲員が来ることもないし、真っ直ぐ歩けます。ただ困るのは駅でした。駅に来ると、駅員がいて自分で追い掛けたり、捕獲員を呼んだりします。そんな経験を経て、駅は避けながら線路を歩くようにしました。
                  ―続く―







2021/09/21 4:38:44|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−23−
パピーの冒険−23−

 夜は、レストランや食堂のゴミ箱を探し、朝ご飯はパン屋で買って来たパンの耳がこのおじさんの食事のようです。昼ごはんは食べません。僕も、今までも1日2食しか食べていませんでしたので、それは平気です。
「よし、今日はお前の歓迎会でちょっと豪華な食事にすることにするか。」
 そう言うと、リヤカーを置いて、僕を連れてコンビニに行きました。そして店には入らず、客がいないのを見計らうと外から店員の女の子に合図をしました。
 女の子が出て来ると、「ちょっと待っててね。」言って、後ろの方に行き手にレジ袋を持って出て来て言いました。
「念を押すようだけど、これは内緒よ。店に見付かったら、クビになっちゃうの。それから今日中に食べてね。お腹を壊すと大変だから。」
おじさんは、「わかってるよ。」と言って、嬉しそうにレジ袋を受け取りました。
 家に帰ると、早速レジ袋を広げます。中からは、おにぎりや弁当が出て来ました。おじさんが言いました。
「勿体ないことをするよなあ。これを捨てちゃうんだよ。まだ十分食べられるのに、賞味期限だの消費期限だと言って、捨てちゃうんだ。でも、お蔭で俺は助かるけどな。」
そして弁当のひとつを皿に移すと、僕の前に置いてくれました。でもそのとき、エビの天ぷらだけは取り上げて、自分の弁当に移し替えました。
 更におじさんが言いました。
「今日は、あの娘が来る日だから良かったけど、他の日はこうはいかないんだ。男の子のときは、駄目だと言って追い返されるんだ。」
僕は、この生活も悪くはないなと思いましたが、でもやっぱり帰らなければなりません。
 3日目になって、おじさんは僕が逃げないと思ったのか、紐を解いてくれました。最初は、僕もおじさんと寝ていましたが、明け方近くになっておじさんの家を出て、また歩き始めました。
 さっちゃん達とはぐれて何日が過ぎたでしょう。旅は続きます。
 学校や保育園からは、休み時間になると賑やかな声が聞こえて来ます。僕は、その声の方に行ってみました。見ると、小さな子供達が庭で遊んでいました。ちょうどさっちゃんと同じくらいの子供達です。
 男の子が、僕を見付けて「あっ、犬がいるよ。」と言いました。すると子供達が集まって来ました。「可愛いね。」とか、「どこから来たんだろうね。」などと言って、僕の頭を撫でてくれます。僕も、尻尾を振って彼らにじゃれていました。
 すると女の人が飛んで来ました。
「だめ!この野良犬は、どんな病気を持っているかわからないのよ。咬まれたらどうするの。犬には、狂犬病という恐ろしい病気があって、気が狂って死んじゃうんだから。」
そう言って、僕を追い払いました。子供達は、残念そうに見送っていました。
 僕は、また歩き始めました。
                   ―続く―







2021/09/20 4:25:33|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−22−
パピーの冒険−22−
 
 おじさんは、ゴミ箱をきれいに片付けると、僕を引っ張って行きます。僕は、食べ物を分けて貰った恩もあって、おじさんの後ろから着いて行きましたが、これは困ったことになったと思いました。繋がれてしまったのでは、さっちゃんのところに帰ることができません。
 おじさんは、公園の奥の林の中のブルーシートで作られた家に行きました。そこで、さっき拾って来たボトルに余っているウイスキーと残飯で食事を始めました。ときどき、僕に食べ物を投げてくれます。
「お前は、首輪をしているから飼い犬だったんだな。どこから来て、どこへ行くんだ。俺も一人ぼっちだし、お前のような犬がいてくれると寂しくなくていいよ。」
 そう言って、頭を撫でてくれます。でもおじさんの身体からは強烈な臭いがして、ちょっと閉口しました。その晩は、仕方なくおじさんの家で寝ました。寝ながらも、どうしたら逃げられるか、そのことばかりを考えていました。
 朝になりました。おじさんは、パンをくれました。
「これは、パン屋で買った食パンの耳だけど、これが美味しいんだぜ。」
なるほど、今まで食べていたドッグフードより美味しいのです。
 僕が食べていると、おじさんが独り言を言いました。
「俺もなあ、昔はちゃんとした仕事をしていたんだけど、ふとした仕事の失敗で会社をクビになり、それがきっかけで女房にも逃げられたんだ。お前はいいよなあ。俺達みたいに人間関係で悩むこともないんだろう。それから、俺は全てにやる気を無くしたんだ。やがて家賃が払えなくなり、今ではこの姿さ。でも気楽と言えば、この方がずっと気楽なんだ。誰にも遠慮がいらないからな。でも、こう見えても守らなくちゃならないことはあるんだぜ。昨夜のゴミ箱だって、キチンと後片付けをしないと、次の日から追っ払われるんだ。2日に一回は、ちゃんと周りの掃除もしているんだぜ。」
 僕は、パンを食べ終わったので、また寝てしまいました。おじさんも、そのまま小屋の中で寝てしまいました。
 昼頃になると、リヤカーを引いて、町を歩き始めました。そして空き缶を拾ってはリヤカーの後ろに投げ込んで行きます。夕方になってリヤカーがいっぱいになると、会社のようなところに行って空き缶を売りました。
「今日の収入は2千円か。まあまあだな。」と言い、帰りにパン屋に行って、パンの耳と牛乳を買いました。
                       ―続く―
 







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