パピーの冒険−26−
食べ終わるとおばさんが言いました。 「さっきも言ったけど、私はずっと話し相手がいなくて寂しいんだよ。話し相手になってくれるかい?お前の苦労話も聞きたいからね。」 「いいよ。」 僕がそう言うと、おばさんはお喋りを始めました。人間のように言葉はありませんが、身体で話します。僕が聞いていると、次から次へと話が続きます。 今の飼い主に拾われたいきさつ、隣の家に飼われていた雄犬のこと、彼との間に子供ができて、それ以降去勢されたこと、予防注射が痛いことなど、次から次へとお喋りが続きます。僕の苦労話が聞きたいと言っていたのに、僕が喋る隙間がありません。これじゃたまらないと思い、僕はそこを逃げ出しました。 おばさん犬は、「行っちゃうのかい。」と言って寂しそうにしていましたが、僕は後ろを見ないで歩きました。 人間もそうですが、犬も女のお喋りは同じだと思いました。しかし、ここでまた食べ物の貰い方をひとつ教わったのは大きな収穫でした。食べ物屋の前におとなしく座って尻尾を振っていれば、けっこう食べ物をくれる人がいるのです。しかし大きな店や、きれいな店は駄目でした。追い払われてしまうのです。 普通、男より女性の方が優しくて親切でした。中には犬を怖がる女の人もいますが、大抵は可愛がってくれます。また子供も、可愛がってくれました。それでも中には石を投げつけたりする腕白な子供もいます。 その人が犬を好きか、嫌いか、また悪い子供か良い子供かが、自然にわかるようになっていました。でも、あまり犬好きの人にも困ることがあります。僕を繋いで飼おうとするからです。 あるとき公園の中を歩いていると、お母さんに連れられた小学生くらいの女の子が遊んでいました。優しそうなので僕が近付いて行くと、手を出して頭を撫でてくれます。それをみたお母さんが、「やめなさい。汚いから。」と言いました。それでも女の子は、僕の頭を撫で続けています。 「お母さん、汚れているけど、洗ってあげればきれいになるし、とても可愛いよ。ねえ、飼ってあげましょうよ。それに、賢そうなの。きっと、私の良い友達になれるわ。」 「もし飼ったら、良い子にする?」 「うん、約束する。」 「そして、ちゃんと学校にも行く?」 「うん、それも約束する。」 「じゃあ、とにかく家に連れて行って洗ってやりましょう。」 女の子は、僕に着いて来るように言いました。僕は、二人の後ろから着いて行きました。行った先は、芝生のある庭の広い家でした。庭の周りには、塀がありました。 ―続く―
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