男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/09/29 5:36:24|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−31−
パピーの冒険−31−
 
 その日の午後、3人の女の人がやって来ました。
「可哀そうにねえ。この犬達は殺処分にされてしまうのよ。みんな助けてあげたいけど、私達が全部引き取るわけにもいかないしね。うちにはもう3匹もいるのよ。」
「そうねえ、私のうちにも2匹いるわ。ねえ、あなたのところは?」
「うちも私は犬が好きなんだけど、主人が嫌いなのよ。結婚したばかりのころに家に一人でいてもつまらないから犬が飼いたいと言ったら、きつく叱られたわ。」
「あなた、結婚して何年になるの?」
「5年よ。それがどうしたの?」
「5年も一緒にいたら、亭主に言うことくらい聞かせないさいよ。あたしなんか3年もしたら、私の天下にしていたわ。あらっ、この犬可愛いわ。これなんか、いいんじゃない?賢そうよ。」
そのおばさんは、僕の方を見て言いました。
「そうねえ、帰ってもう一回主人に言ってみるわ。それでいいと言ってくれれば、この犬を貰って行くことにするわ。」
「それがいいわ。旦那さんには、強く言わなければだめよ。男なんて、下手に出ると付け上がるんだから。」
「そうね、言ってみるわ。」
そう言って、3人は帰って行きました。
 その夕方、係員が僕に餌をくれながら言いました。
「お前は、貰い手があると思っていたけどなあ。明日中に引き取り手がないと明後日は処分だぜ。誰か引き取ってくれると良いけどなあ。」
 その頃、さっちゃんの家では、パソコンの前に座っていたお父さんが言いました。
「さっちゃん、来てみてごらん。これパピーじゃないかなあ。」
さっちゃんがやって来てパソコンの画面を見ていましたが、「あっ、パピーよ。痩せているけど、背中の模様がパピーのものよ。今、どこにいるの?」と興奮気味に言います。そのうち、お母さんもやって来ました。
「うん、これは保健所のホームページなんだけど、保健所に捕まっているみたいなんだ。」
「じゃあ、すぐに引き取りに行きましょうよ。」
「でも夜は保健所の人もいないだろうから、明日の朝早く行ってみようよ。」
お父さんは、そう言いました。
                 ―続く―







2021/09/28 3:22:11|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−30−

パピーの冒険−30−

 家族連れのお父さんが言いました。
「良いのはいないねえ。やっぱり野良犬だからしょうがないのかなあ。」
 その言葉に、みんながっかりします。そのとき、子供が言いました。
「お父さん、引き取り手がない犬はどうなるの?」
「うん、殺されちゃうんだ。悪い病気が流行らないよう、そう法律に書いてあるんだよ。」
「可哀そうだね。どれか引き取ってあげようよ。本当なら、みんな助けてあげたいけどね。」
 その言葉に、希望が湧いて来るのか、みんな尻尾を振っています。でも年老いた犬は、そんな希望も失っているようで、顎を前足の上に乗せたまま動こうともしません。
「あっ、お父さん。この犬がいいよ。可愛いし、賢そうだよ。」
男の子は、僕の前に立ち止まって言いました。するとお父さんが、昨日僕が話していたテリアの子犬の方を見ながら言いました。
「ねえ、こっちの方がまだ小さいからこっちにしようよ。犬は、小さいときの方が懐きやすいんだ。」
 男の子は、しばらく考えていましたが、結局、その女の子犬が引き取られることになりました。女の子犬は、僕の方を見ながら「ごめんね。」と言って檻から出されて連れて行かれました。今まで尻尾を振っていた犬達はがっかりしたように寝そべってしまいました。
 1日に何人かの人がやって来ました。家族連れもいれば、一人で来る人もいます。見るだけで帰る人もいれば、引き取って帰る人もいます。
 次の日にはおじいさん犬が、係員に連れていかれました。おじいさん犬は、最初は抵抗していましたが、自分の運命を悟ったのかおとなしくなりました。そしておじいさん犬は二度と帰って来ませんでした。2日に一回、2、3匹が連れて行かれてそのまま帰って来ません。連れて来られて5日目になると、僕が一番古い方になりました。
                 ―続く―







2021/09/27 5:47:06|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−29−
パピーの冒険−29−

 僕達は、それぞれ別々の檻に入れられました。部屋には10匹ほどの犬がいました。雑種もいれば、ちゃんとした品種の犬もいます。みんな希望を失ったように寝そべっていました。僕達が入れられると何匹かはこっちを振り向きましたが、他のは全く無関心で希望を失っているようでした。
 僕は、その中の年老いた1匹に聞きました。
「ねえ、僕達はどうなるの?」
「引き取り手がないと殺されちゃうみたいなんだ。向こうにガス室があってそこに入れられるんだが、そこから帰って来たものはいないよ。昨日も、2匹の仲間が連れて行かれて、それっきりだよ。」
「人間に引き取られたものはいるの?」
「たまにいるさ。でも、それは若くて可愛い犬だけなんだ。俺なんか、誰も引き取ってくれないさ。ガス室に行くのを待っているだけなんだ。」
「・・・・・」
僕は、みんなが元気がない理由がわかりました。
 中にテリアのまだ小さい女の子犬がいたので、「どうしてここに来たの?」と聞くと、その子が言いました。
「わたし、貰われて来たんだけどしばらくして捨てられたの。飼い主がこの町の一戸建ての家に住んでいたんだけど、今度隣町のマンションに引っ越すことになったんだって。マンションじゃ犬を飼う訳にいかないからと言って、家族で相談して捨てられることになったのよ。」
「誰も反対しなかったの?」
「子供は、反対してくれたわ。でも、両親はどうしてもダメだと言って保健所に引き渡そうとしたんだけど、それだけはやめてと言われて鎖を放されたのよ。でも今までずっと鎖に繋がれて飼われていたでしょう。だからどうして良いかわからないうちに捕まってしまったわ。」
 それぞれの理由はありますが、みんな人間に捨てられたのでした。子供のときに捨てられた者もいれば、大きくなって捨てられたのもいます。また飼い主が亡くなった者もいました。
 食べ物はドッグフードで、朝夕少しだけくれます。そのときだけはみんな元気そうでした。
 次の日になりました。昼前に、一組の家族がやって来ました。僕達を1匹ずつ見て回りながら、「いいのはいないかしらね。」などと言っています。
                 ―続く―







2021/09/26 6:57:53|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−28−
パピーの冒険−28−

 男たちは、捕獲用の針金の輪のついた棒を持って近付いて来ます。二人は、僕が逃げないように構えていますので、間をすり抜けて逃げることもできません。結局、針金の輪を首に掛けられてしまいました。そのまま引きずって、トラックに連れて行かれ、檻に入れられてしまいました。
 檻の中には、3匹の犬がいました。1匹はおじいさん、もう一匹は若いオス、もう一匹は若いメスです。
 おじいさん犬が言いました。
「可哀そうに、お前も捕まっちゃったのかい。」
「うん、僕達はこれからどうなるの?」
「さあ、わからないけど、こうして捕まえるからには良いことはないさ。」
「みんなはどうして捕まっちゃったの?」
 オス犬が言いました。
「俺は、子供のときに捨てられちゃったんだ。だから、人間なんか信じちゃいないんだけど、あまりにお腹が空いたので餌につられて油断したんだな。男に捕まって、たまたま通り掛かったこのトラックに乗せられたんだ。」
 メス犬も言いました。
「わたしは、捨てられたばかりなの。飼い主だった人が、失業して餌を買うことができないからって、この町に連れて来てそのまま放されたの。知らない土地でどうして良いかわからないで道を歩いていたら、捕まっちゃったのよ。」
 おじいさん犬が言います。
「俺はねえ、飼い主さんが死んじゃったんだ。身寄りのない人で、葬式は近所の人が済ませてくれたんだけど、俺を引き取ってくれる人は誰もいなかったんだ。もう歳だからどこに行く気もしなかったんだけど、空腹に勝てなくて食堂の残飯を漁っていたら、保健所に通報されたんだ。」
 トラックが保健所に着いて、僕たちの入った檻を下すとき、捕獲員が言いました。
「可哀そうになあ。こいつらも、あと一週間の命だ。一週間の間に引き取り手がなければ殺処分だ。」
それを聞いて4匹とも震え上がりました。
                  ―続く―







2021/09/25 6:30:38|小説「パピーの冒険」
パピーの冒険−27−
パピーの冒険−27−

 家に着くと、早速二人は僕を水道のあるところに連れて行って石鹸で洗ってくれます。身体を洗われると、痒みも取れてすっきりしました。僕は、思わず身体を震わせました。水しぶきに、女の子もお母さんもキャッと言って飛びのきました。
 身体を洗うと、今度は食べ物をくれました。ご飯に味噌汁がかけてあり、その上には鰹節が載せてあります。僕は、夢中で食べました。
 僕が食べている様子を見ながらお母さんが言いました。
「さて、鎖を買って来なきゃね。それに週末には、お父さんに頼んで犬小屋も作って貰おうね。」
 僕は、それを聞いて考えました。女の子もお母さんも、とても優しそうですが、ここにいたのではさっちゃんのところに帰ることができなくなります。
 人間は、「犬は3日飼われると、一生恩を忘れない。」と言いますが、その通りです。可愛がってくれる人を裏切ることはとても辛いことです。
 お母さんが買い物に出掛けて行きました。女の子にも一緒に行こうと言いましたが、「わたし、この子と一緒に留守番をする。」と言って、僕の頭を撫で続けていました。
 僕は、女の子に撫でられながらも、さっちゃんのところに帰らなければならないと思いました。逃げるなら、お母さんが鎖を買って来る前しかありません。女の子が、家に入った隙に逃げ出しました。女の子は慌てて追いかけて来ましたが、僕は心を鬼にして走り続けていました。
 僕は、歩き続けました。食べ物屋さんの前に座って食べ物を貰う術も知ったので、以前ほど空腹にならずに済むようになり、前より元気に歩けるようになったのです。
 さっちゃん達とはぐれて3週間が過ぎました。町の様子が、何となく見たことがあるような雰囲気になって来ました。目に入ったスーパーは、以前さっちゃん達と行ったことがあります。僕は、嬉しくなりました。ここからだと道もはっきりわかります。僕は、走りました。
 その時です。小型のトラックがやって来ました。荷台には、檻の箱が積んであり、何匹かの犬がキャンキャンと鳴いています。野犬の捕獲のトラックだと思い急いで逃げましたが、トラックは僕の後ろから追い掛けて来ました。
 走っても、走っても追い掛けて来るので、僕は路地に逃げ込みました。すると男が二人、捕獲用の棒を持ってこっちに駆けて来ます。角を回ったところで路地は行き止まりになっていました。後ろは高い塀、最早絶体絶命です。
                ―続く―







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