秋雨の詩−3−
私は、話をしながらも外の雨が気になっていた。 窓辺の部屋からは広い庭が見える。日本庭園になっているが、手入れが十分とはいえない。繁った木々の枝に強い雨が降りかかっていて、雨はなかなか止みそうにない。そんな私を気にしてか彼女が言った。 「お茶のお代わりをお持ちしましょう。少しお待ちください。」 「いいえ、どうか構わないでください。見ず知らずの私にこんなに親切にしていただいて申し訳ありません。」 「いいですのよ。誰がいるわけでもないし、遠慮なさらずに下さい。私も退屈していたところです。お茶より、お酒の方がよろしいでしょうか。お酒はお飲みになりますわね。」 「ええ、でも・・・」 「お急ぎではないのでしょう?お仕事はお済みですの?」 「ええ、一応仕事が終って、これから家に帰るところです。」 「じゃあ、いいですわね。遠慮はご無用ですわ。少しお待ち下さい。」 そう言うと、彼女は再び奥の方に入って行き、すぐにウイスキーのボトルと氷を持って帰って来た。水割りを作りながら、庭を眺めていた私に気がついた彼女が言う。 「庭が荒れているでしょう。主人がいた頃はこまめに庭師を呼んで手入れをしていたのですが、私は庭師を呼ぶのも無精なものですから。」 「でも随分広くて立派ですね。庭があるだけでもマンション住まいには憧れなのに、こんな広くて立派な庭があるなんて羨ましいを通り越していますよ。」 「でも一人暮らしには重荷ですわ。手入れの手間も費用もけっこうばかにならないんですのよ。」 彼女の口から一人暮らしという言葉が出たのは三度目である。 私という見知らぬ男がいるにもかかわらず一人暮らしだ敢えて言うことが気になった。 「私も、昔はけっこう飲んだんですよ。結婚する前は会社勤めをしていましたし、父親もけっこう飲めた方ですから。でも主人が死んでから出掛けることも少なくなり、一人で家で飲むこともあまりなくなりました。女が一人、家で飲んでいる姿って考えただけで惨めでしょう。でも、たまには飲みたいときもあるんですよ。」 そんなことを話しながら水割りをふたつ作ると、ひとつを私の方に差し出した。 「今日は私のお酒に付き合ってくださいますわね。良かったわ。私もお酒を飲むのは久し振りです。」 「じゃあ、遠慮せずにいただきます。」 私はグラスを受け取った。 −続く− |