男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/11/12 13:46:49|小説「初冬の風」
初冬の風―02−
初冬の風―02−

 瀬戸内は、晴れる日が多い。特に秋は晴天が多かった。私は、釣りをしない日はなるべく山に登るようにした。同じ山登りをしている人とも顔見知りになった。驚いたことに、けっこう女性も多い。比率で言えば、男女半々である。いずれも私と同年代か、あるいは私より高齢者だった。
 彼等は、親切だった。聞けば、初心者の私に色々と教えてくれた。頂上に登るにも幾つかのルートがあることを知った。簡単な遠回りの道もあれば、岩場のあるきついルートもあった。新しいルートを教えてもらう度に、そこを歩いてみた。ちょっとした山なのだが、ルートを変えることによって、いろいろな変化があり、次第に山に登ることが楽しくなっていた。
 山登りを始めて半月ほどした日のことである。昼前に登り始めていると、向こうからは高校生の男女が話をしながら下山して来た。私に気が付くと「こんにちは。」と明るい声で挨拶をした。
 次に出会ったのは、サラリーマン風の男だった。今まであまり気にしていなかったのだが、その日は土曜日だった。学校も会社も休みで、山に登る人も若い人が多く、いつもの年金道路は、すっかりその汚名を返上しているようだった。
 頂上に着くと、家族連れが弁当を広げていた。私は、子供が小さかった頃のことを思い出していた。我々もこんな時代があったのである。それから30年以上の月日が流れていた。今は遠くに住んでいる子供達も結婚して、同じように家族で楽しんでいるのかも知れなかった。
 昔のことを思い出しながら景色を眺めていたときである。人の気配がしたので振り向いてみると、一人の若い女性が頂上に登って来ていた。手には木の杖を持ち、背中には小さなリュックサックを背負っていた。
             ―続く―







2021/11/11 16:54:06|小説「初冬の風」
初冬の風―01−
初冬の風―01−

 初冬にもかかわらず、山頂は風もなく陽は穏やかで、既に12月に入っていたが、今は新暦であるので本来こういうのを小春日和と言うのだろうと思った。
 私は山頂の小さな木製のベンチに腰掛けて、山や海、町の景色をぼんやりと眺めながら、これまでにあった慶子とのことは何だったのだろうと考えていた。それは、悲しくも美しい思い出だった。
 私がこの山に登り始めたのは、今から3年前に会社を定年になって半年ほどした初秋の頃だった。これまで特に趣味もなく仕事一本で働いてきて、急にすることを無くした私は、何をすべきか戸惑った。しばらく家で新聞やテレビを見ながらゴロゴロしていたが、退屈で仕方がないし、身体にも良くない。心配した妻が、「あなた、何か身体を動かすことでもしたら?」と言う。
 幸い、住んでいるのは瀬戸内の小さな町なので、自然には恵まれている。前は海だし、裏は山になっている。
 私は、釣りと山登りをすることにした。そのために釣り道具と山登り用の靴を買った。そして潮の様子を見ては海に行き、釣りに行かない日は山に登るようになった。山と言っても、高いものではない。茶臼山と言って標高わずか350mほどの山で、子供が小さい頃は家族で登ったことがあるが、その後気にしたこともなかった。
 登ってみて、けっこうきついことに気が付いた。行程は1時間ほどだが、最初は息が切れた。若い頃はそんなことはなかったので、自分の体力の衰えに愕然とした。これではいけないと思い、なるべく登るようにした。
 登り始めると、同じように登っている何人かの人と出会う。最初は挨拶を交わすだけだったが、そのうちに話もするようになった。山登りをしている人は、私のような高齢者が圧倒的に多い。誰かが、「みんな、この道を年金道路と言っているんですよ。歩いているのは年金受給者ばかりです。」と自嘲的に言った。
 次第に山に登ることが苦痛でなくなっていた。
             ―続く―







2021/10/18 12:41:45|小説「秋雨の詩」
秋雨の詩−6−

秋雨の詩−6−

 それを見て、私の欲望は止まらなかった。私は、必死で彼女の全身に愛撫を加えた。彼女も、私の愛撫に十分に応えてくれる。長い間孤閨を守ってきた身体である。
 彼女は一気に燃え盛った。局部に手をやるとしとどに濡れている。私も着ている物を脱ぐと、一気にひとつになった。私も彼女の美しい体に極度な興奮状態になっていたが、彼女もまた大きな悦楽の中にいた。
 何度も何度も、激しく体をぶつけあって愛し合った。いつしか愛の行為が終り、二人は裸のまま体を重ねてソファに横たわっていた。
 気がつくと、外は完全に暗くなっていた。やがて私が起き上がって、背広を身にまとう。
気がついた彼女が言う。
「ごめんなさい。すっかり引き留めて、こんなに遅くなって!」
そう言いながら着物を着ているが、ほつれ髪がとても艶っぽい。
「いや、僕の方こそすみません。こんなに長居してしまって。」
そう言いながら、彼女にキスをする。
「あなたはとても素敵で魅力的でした。」
「あなただって、とても逞しくて素敵でした。」
そう言って、くちづけを返してくる。
 私はもっと彼女といっしょにいたかったが、そうもいかない。そのまま玄関に向かった。彼女も引き留めようとはせず、玄関まで送ってくれる。
 玄関を出ようとしたとき、彼女が言った。
「また近くにお出でになることがありますわね。」
私が答える。
「ええ、きっとあると思います。」
 通りに出ると、外はすっかり夜になっていて、晴れ上がった空には秋の満月が冴えわたっていた。私は、今まであったことが現実なのか夢なのかと思いながら家路に向かっていた。
                  −終り−








2021/10/17 12:33:48|小説「秋雨の詩」
秋雨の詩−5−
秋雨の詩−5−

 私は言った。
「こんなことを言うのは失礼かも知れないけど、再婚なさったらいいではありませんか。あなた程美しい人ならいくらでも再婚のお相手がいると思うのですが、なぜ再婚なさらないのでしょう?亡くなったご主人には申し訳ないけど、亡くなった人より、生きている貴女の幸せの方が大事だと思うのです。」
「でも、それではこの家がどうなるか。子供もいませんからいずれは絶えるのでしょうが、私が生きているうちは守っていきたいと思うのです。これは理屈ではありません。私のこの家に対する恩返しなのです。」
「出過ぎたことを言って失礼しました。すみませんでした。」
私は、謝った。
「いいえ、気になさらないでください。みんながそう言ってくれるのですが、断わっているのです。」
 飲み始めて1時間以上が過ぎていた。
秋の日暮れは早く、外はいつしか暗くなっていた。彼女はフーッとため息をつくと、「私、少し酔ってしまいました。」と言って、私の横に座り直し、私の肩に頭を凭せかけた。
 彼女の髪の匂いがした。その匂いが私を刺激した。私はグラスを置いて、彼女の肩を抱き寄せ、顔を私の方に向けさせるとその小さな唇にキスをした。
 彼女は身を捩って私の背中に手を回し、強く抱き締め返した。二人はやや不自然な姿勢のまま抱き合って、しばらくキスを続けていた。それは長い長い時間のように思われた。
 彼女の口から”ウ〜ッ!”というため息ともうめき声ともつかない声が洩れた。その声に促されるように、私は彼女を抱いたままソファに倒れ込んだ。
 更に私はくちづけを続けながらも、おもむろに手を着物の襟から彼女の胸に忍ばせた。彼女は拒まなかった。手が胸に届いた。細身のわりには、豊かな乳房だった。
 指が乳首をつまむようにすると、彼女は再び悦びの声を出した。私は愛撫を加えながら、左手で帯を解いていき、着物を脱がせた。ほっそりとしているわりには肉付きのよい体が露わになる。きめ細かい、色白な肌だった。触れると吸い付くような柔らかさだった。
                −続く−







2021/10/16 21:15:43|小説「秋雨の詩」
秋雨の詩−4−
秋雨の詩−4−
 
 彼女が言う。
「雨はやみそうにありませんわね。少しゆっくり飲みましょう。こうして家で飲むなんて久し振りです。主人が入院した頃から飲んでいないんですよ。」
 そんなに多弁というのではないが、彼女はよく喋っていた。日頃はおとなしい人が、たまに昔懐かしい人に会ってよくお喋りしている、そんな感じだった。
 話の中から少しずつ彼女のことがわかってきた。
夫とは、見初められて結婚した。会社の受付嬢をしていた彼女に、資産家の御曹司だった夫が一目惚れしたのだった。
 家柄の違いを心配して躊躇っていた彼女に、夫も夫の母親も親切にしてくれた。そして是非とも結婚してくれるようにと申し入れてきた。結局、彼女はプロポーズを受け入れた。彼女にとって、最初から深い愛情で結ばれていたわけではないが、結婚生活を続けるうちに夫婦の愛情も深まってきた。しかし、子供はできなかった。
 そんなとき、夫が急に倒れた。白血病ということで、すぐに入院し闘病生活に入った。その間、彼女は献身的に夫に尽くしたが、その甲斐なく2年後にこの世を去った。
 一人息子の死のショックが大きかったのだろう、それから1年後に母親が後を追うようにして亡くなった。幸い財産も資産もあって、生活には困らない。たまに買い物程度は出掛けるが家にいることが多いということだった。
 私も彼女もゆっくりと飲んでいたが、ふと見ると開けたばかりのボトルが半分くらいになっていた。それでも酒には強いのだろう、彼女は顔色ひとつ変わらないでいた。
「でも一人でいると、本当に寂しくなるときがありますわ。」
ひとしきりお喋りした後で、彼女がため息をつくように言った。
「話し相手のいない寂しさなんて、一人暮らしをしたことのない人にはわかりませんわね。」
「いや、僕だって単身赴任をしたことがありますから、その気持ちはわかりますよ。休みの日に一人でいると、気が狂いそうなくらい寂しくなることがあります。でもそんな場合、飲みに行って気を紛らわせていましたけどね。」
「そうですか。それは知らずに申し訳ありませんでした。でも単身赴任の場合、いずれ終わりが来るのがわかっているでしょう。私なんか、終わりのない寂しさは無限地獄のようなものですわ。」
                  −続く−







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