初冬の風―11− 慶子も、お酒は強いようだった。そのうちに、切ったハムなどを出して、ビールは3本、4本と進んでいた。 ふと時計を見ると、3時を回っていた。私が時計に目をやったのに気が付いた彼女が言った。 「すみません、遅くまで引き止めまして。」 「いや、いいのです僕も楽しんでいるのですから、気にしないでください。」 「でも奥様が待っておられるのでしょう。」 「まあ、そうですが。しかし、いつ帰るかわからないので、僕の帰りをあまりあてにしていないようです。」 「そんなことはないと思います。追い返すわけではありませんが、またいらしてください。」 そう言われると、それ以上いるわけにもいかない。私は、彼女のメールアドレスを聞いてから、次に山で会う日を約して、彼女の部屋を出た。 家に帰ると、妻が「遅かったわね。」と言った。私は、「偶然、昔の友達に会って、食事をしながらちょっと飲んで来た、キスは半分彼にやった。」と言っておいた。特に疑っている様子はなかった。 その夜、自分の部屋に入ると、彼女にお礼と楽しかった旨のメールを送った。彼女からも、すぐに同じような返事が返って来た。 二日ほどして、「次の貴女の休日に、一緒に山に登りましょう。」とメールで提案した。隣町からの縦走コースで、そこからなら約4キロの山の尾根を歩きながら登頂するので、長い時間一緒に歩くことができる。彼女からは、すぐにわかりましたと返事が来た。 その日も、秋晴れの良い天気だった。私達は、登山口にある駐車場で落ち合った。先に行って待っていると、しばらくして彼女がやって来た。彼女は、ジーンズとブラウスの上にピンクのウィンドブレーカー姿で、登山用の縁の広い帽子を被り、背中にはリュックを背負っている。 最初、尾根に行くまでに、急な上り坂が続いている。この辺りでは、あまり紅葉はれいではないが、それでも櫨や山桜などの葉っぱがところどころで色付いている。 彼女は、若い上に山歩きには慣れているらしく健脚で、しばしば私の方が遅れがちになった。その度に、彼女は私の方を振り向いて待っていた。私は、彼女に遅れないようにと必死だった。これまであまり運動をしてこなかったことを後悔していた。 ―続く― |