男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2021/11/21 14:50:00|小説「初冬の風」
初冬の風―11−
初冬の風―11−
 
 慶子も、お酒は強いようだった。そのうちに、切ったハムなどを出して、ビールは3本、4本と進んでいた。
 ふと時計を見ると、3時を回っていた。私が時計に目をやったのに気が付いた彼女が言った。
「すみません、遅くまで引き止めまして。」
「いや、いいのです僕も楽しんでいるのですから、気にしないでください。」
「でも奥様が待っておられるのでしょう。」
「まあ、そうですが。しかし、いつ帰るかわからないので、僕の帰りをあまりあてにしていないようです。」
「そんなことはないと思います。追い返すわけではありませんが、またいらしてください。」
 そう言われると、それ以上いるわけにもいかない。私は、彼女のメールアドレスを聞いてから、次に山で会う日を約して、彼女の部屋を出た。
 家に帰ると、妻が「遅かったわね。」と言った。私は、「偶然、昔の友達に会って、食事をしながらちょっと飲んで来た、キスは半分彼にやった。」と言っておいた。特に疑っている様子はなかった。
 その夜、自分の部屋に入ると、彼女にお礼と楽しかった旨のメールを送った。彼女からも、すぐに同じような返事が返って来た。
 二日ほどして、「次の貴女の休日に、一緒に山に登りましょう。」とメールで提案した。隣町からの縦走コースで、そこからなら約4キロの山の尾根を歩きながら登頂するので、長い時間一緒に歩くことができる。彼女からは、すぐにわかりましたと返事が来た。
 その日も、秋晴れの良い天気だった。私達は、登山口にある駐車場で落ち合った。先に行って待っていると、しばらくして彼女がやって来た。彼女は、ジーンズとブラウスの上にピンクのウィンドブレーカー姿で、登山用の縁の広い帽子を被り、背中にはリュックを背負っている。
 最初、尾根に行くまでに、急な上り坂が続いている。この辺りでは、あまり紅葉はれいではないが、それでも櫨や山桜などの葉っぱがところどころで色付いている。
 彼女は、若い上に山歩きには慣れているらしく健脚で、しばしば私の方が遅れがちになった。その度に、彼女は私の方を振り向いて待っていた。私は、彼女に遅れないようにと必死だった。これまであまり運動をしてこなかったことを後悔していた。
             ―続く―
 







2021/11/20 13:35:50|小説「初冬の風」
初冬の風―10−
初冬の風―10−
 
 キスを捌き終わったとき、慶子が言った。
「これからから揚げを作りますが、食べて行かれません?私一人では、とても食べ切れませんわ。」
「いいのですか?」
「勿論です。一人の食事はつまりません。ご一緒していただけると嬉しいです。」
「じゃあ、お言葉に甘えます。」
 彼女は、30分ほどで調理を終えた。部屋中に唐揚げの良い匂いがしている。彼女は、大皿に上手に盛りつけたから揚げ物を出すと、冷蔵庫からビールを持って来た。
「さあ、飲んでください。お師匠様。」
「いえいえ、あなたの釣りも上手でした。初めてであんなに釣れるなんてありませんよ。」
「これもお師匠様のお陰です。」
「立派なお弟子さんを持って、僕は幸せなお師匠様です。」
そんな話をしながら、彼女は私のグラスにビールを注いだ。私も、彼女のグラスに注ぎ返した。
「今日の釣果と、あなたの釣りデビューに乾杯!」
「乾杯!」
二人は、一気にグラスを乾した。海岸は、秋とはいえ海からの日差しの照り返しもあってけっこう暑く、喉が渇いていたのでビールが美味しかった。
 私は、早速、から揚げを食べてみたが、美味しかった。いつも妻が作るのとは一味違うように思えた。
「これは美味しい!」
「まあ、嬉しいですわ。三苫さんも、料理をされるのでしょう?」
「いいえ、料理まではしません。家内が面倒だと言うので、鱗や頭は取りますが。」
「捌く手際が良いので、なさっているのかと思いました。」
「いつも自炊をしているのですか。」
「はい、家にいるときはなるべく自分で作るようにしているのですが、自分だけで食べるために作るのって、張り合いがありません。かなり手抜きになってしまいます。」
「でもこれは美味しいです。これだけ作れれば、料理屋だって開けますよ。」
「まさか、そんなこともないですが、でもそう言っていただけると嬉しいです。」
 そんな会話をしながら、いつしかビールは2本目になっていた。
             ―続く―







2021/11/19 18:47:05|小説「初冬の風」
初冬の風―09−
初冬の風―09−
 
 帰り支度をしながら、私が言った。
「このサイズだと、から揚げがいいですね。」
「このままで揚げて大丈夫でしょうか?」
「鱗を取って、頭と腸は取った方が食べやすいでしょう。手伝いましょうか?」
「いいですか。じゃあ、私のマンションでいかがでしょう。すぐそこですから。」
 彼女は、さっさと歩き始めた。私は、彼女の後ろからキスの入ったバケツを持って歩いて行った。
 彼女のマンションは、浜辺から歩いて10分ほどのところにあった。入り口に表札があり、そこには「白鳥慶子」とあった。私は、彼女の名前が慶子であることを知った。
慶子は、「どうぞ、どうぞ」と言って、私を玄関に招き入れた。
 部屋は、6畳の居間と4畳半、それにキッチンがあった。女性の部屋らしく、きれいに整頓され、花が飾られていた。
 私は、半分ほどのキスをキッチンに持って行くと、包丁を手に捌き始めた。鱗と頭を取って、腸を出すだけなので簡単であるが、数があるのでけっこう時間がかかる。
「キスは美味しいけど、鱗が固いんですよ。」
「小さいわりには、大きな鱗ですわね。」
「そうなのです。取らないと、せっかくのキスが美味しくありません。」
 彼女は、しばらく後ろから見ていたが、「今度は私がやってみます。」と言って交替した。
 私は、彼女が包丁を使っているのを、後ろで見ていた。そこは女性である。なかなか包丁使いも上手である。
「包丁捌きが上手ですね。」
「はい、看護学生の頃は、自炊もしていました。」
「そうですか、どおりで上手なはずですね。」
 たわいもない会話だったが、私にはたまらなく楽しかった。ましてや、彼女の部屋で二人きりである。そのことが、胸を高まらせていた。
             ―続くー







2021/11/18 14:41:48|小説「初冬の風」
初冬の風―08−
初冬の風―08−
 
 私の釣りへの誘いに、彼女が言った
「いいのですか?足手まといになりますけど。」
「勿論です。あなたと一緒なら僕も嬉しいです。」
 次の火曜日に一緒に浜辺にキスを釣りに行く行く約束をしているときには、彼女の皿はきれいになっていた。本当に上手な食べ方だった。
 火曜日になる前に、私は釣り道具を一式買っておいた。そして当日には、餌を買って、浜辺で釣りをしながら彼女が来るのを待っていた。
 8時過ぎに彼女はやって来た。ジーンズにウィンドブレーカーを羽織っている。サングラスが、彼女の色白さを引き立たせていた。
「おはようございます。良い天気ですね。」
「おはよう。今日もきれいですよ。」
「あら、まあ。」
そんな挨拶を交わしながら、私は彼女の釣り竿をセットし、投げ方を教えた。最初はうまく行かなかったが、10分もすると投げられるようになっていた。
 私は、餌のつけ方を教えた。最初、自分の針に餌をつけると、彼女はそれを見ていて、自分のも上手につけた。女性によっては、餌のゴカイを気味悪がって触らない人が多いが、彼女は気にしている様子はなかった。
「ゴカイを触っても平気なのですね。」
「ええ、職業柄でしょうか。看護師の仕事って、けっこう汚いこともしなければならないのですよ。」
 私が自分の竿を投げると、彼女も投げた。キスは、意外と浜辺に近いところにいる。最初に掛かったのは、彼女の竿だった。「釣れました!」と大喜びである。私は、キスを針から外して、海水の入っているプラスチックのバケツに入れた。
 私の竿にもよく掛かり、その日はけっこう釣れた。あまり大きなものはいないが、数は釣れる。2時間もすると、数十尾になり、この日は引き上げることにした。
             ―続く―







2021/11/17 12:48:19|小説「初冬の風」
初冬の風―07−
初冬の風―07−
 
 私達は、山頂のベンチに並んで座って話をしていた。
 話をしながらも、私は、彼女が私を男として見ているのか、あるいは父親を見る目で見ているのかが気になった。
 これまでの会話で、彼女が素直な性格であることがわかっていた。人を疑う気配がなく、むしろ純真無垢といった感じだった。そのことからすると、父親のような目で見ているかとも思える。
 彼女は、私のジョークに対してはよく笑い、会話にも知性とウィットがあった。彼女の美しさも私を魅了したが、会話もまた楽しいものだった。彼女も、私のユーモアを楽しんでいるようだった。多少艶っぽいジョークを言っても、気にする様子はなかった。看護師という職業柄、性に関して羞恥心は薄いのかも知れなかった。
 30分ほどして、山を下りることにした。幾つかあるコースのうち、一番緩い道を選んだ。緩い分距離があるが、その方が話をしながら歩いて行ける。
 小一時間ほどして麓に着いた。私が、食事をして行きませんかと誘うと、彼女は「いいですね。」と言った。
 この町には、一緒に食事をするのにふさわしいようなレストランはなく、私達はファミレスに入った。そこで私はステーキを、彼女はカレイのムニエルを食べた。
 彼女の食べ方は上品だった。ナイフとフォークを使って、上手にカレイやご飯、サラダなどを口に運んでいる。その動きが、実に優雅でしなやかだった。
 食事をしながら、私が魚釣りを始めた話をした。
「最近、釣りを始めました。」
「まあ、良い趣味ですこと。趣味と実益を兼ねていて良いですね。」
「ところが、なかなか釣れなくて、趣味にはなっても実益にはなりません。こっちは趣味でも、魚にとっては命がかかっていますからねえ。」
「何が釣れますか?」
「このあたりではキスですね。何回かに一度は釣れます。」
「キスは、きれいな魚ですね。それに美味しいですわ。天ぷらでもフライでも。」
「白鳥さんは、魚について詳しいですね。」
「はい、家は下関でしたから、子供の頃から魚に接することが多かったのです。それに唐戸市場があって、今でも実家に行くとよくあそこで買い物をします。」
「唐戸市場はいろいろな魚があっていいですね。子供が小さい頃はよく連れて行きました。」
「私も、釣りをしてみたいですわ。魚が好きですし、山登りだけではつまらないです。」
「今度、行ってみますか?」
 私は、彼女と一緒に釣りをしている様子を想像して、思い切って言ってみた。
             ―続く―







<< 前の5件 [ 1141 - 1145 件 / 2750 件中 ] 次の5件 >>  << 最新の記事へ >>