初冬の風―21− 私は、自信もなく、おずおずと寿枝に話し掛けた。 「慶子は、いつも真面目にしていますか?」 「えゝ、とても真面目です。患者さんの評判も良いようです。叔父様も、ご安心くださって大丈夫ですわ。」 「そうですか、それなら安心です。でも、なぜ結婚しないのですかねえ。お母さんも、早く孫の顔が見たいと心配していましたが。」 「望みが高いのですわ。彼女、若くしてお父さんを亡くしているので、ファザーコンプレックスというか、年上の人が良いのですって。だから、若い男性を見ると頼りなく思えるみたいです。」 「ふ〜ん、そうなのかなあ。あんなにきれいなのだから、結婚しようと思えばいつでもできると思うのですけどねえ。」 「男と女の縁なんて、わかりません。いつも不思議に思います。」 私は、話の内容から、寿枝が私達のことを疑っていないのだと思い安心した。 そのとき、コーヒーを運んできた慶子が言った。 「二人で、ひそひそと何を話していたの?」 「ひそひそなんかじゃないわ。なぜ慶子が結婚しないのかって話していたのよ。」 「寿枝はいいわねえ。真面目で優しい旦那さんなのでしょう。羨ましいわ。」 「そうね、確かに優しいけど、男としての魅力は今ひとつなのよ。」 「どういうこと?真面目で優しければ最高じゃない。」 「真面目なのは、男としての魅力がない証拠よ。私、野性的で男っぽい人が好きなの。慶子は?」 「そうね、力強い男性っていいわね。いつも病院で患者さんを見ているからかしら、逞しい男性に憧れるわ。」 「叔父さんって、顔の色つやも良いし、きっと男らしいのでしょうね。」 突然、話を自分の方に振られて、私は驚いた。 「叔父さんは、もう還暦を過ぎているけど、お元気よ。いつもこの上の茶臼山に登っているんですって。それに私の釣りの師匠でもあるのよ。この前なんか、何十匹ものキスを釣ったのよ。」 そんな話をしていたが、寿枝は「夫が待っているから」と言って、1時間ほどお喋りをして帰って行った。 私は、慶子と一緒に食器などを片付けながら、後ろから耳に息を吹きかけた。そこは、慶子が感じるところのひとつだった。 ―続く― |