男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2022/01/19 6:34:35|小説「春の行方」
春の行方−02−
春の行方−02−

 新幹線が東京駅に着いた。
 高校の修学旅行で来たことはあったが、これから働く町かと思うと、まるで感慨が違って来る。電車を乗り換えてそのまま松戸にある会社の独身寮に向かう。寮は1LDKの間取りで、家具などは揃っていたから、寝具や食器などを揃えれば良いだけである。
 交番で尋ねながら寮に着いたときには、夕方になっていた。管理室で鍵を受け取り、3階にある部屋に入ろうとしたとき、廊下を一人の若い女性が近付いて来た。
「こちらに入居ですか?」
「そうです、三永です。」
「私も、今度隣に入居しましたの。よろしくお願いします。」
会社案内によると、このマンションは、そっくり会社で借り上げているはずである。
「じゃあ、今度アジア製作所に入社するのですか?」
「ええ、そうです。松島です。よろしくお願いします。」
「もう、引越しは終ったんですか?」
「いいえ、明日荷物が着きます。」
「そうですか、僕も明日の予定なんですよ。どうでしょう、これから食事にでも行きませんか。」
「そうですね、私も来たばかりで町の状況がよくわからないのですが。」
「僕もですが、駅の近くにいくつか店がありましたから、行ってみましょう。じゃあ、30分後にここで。」
 部屋に入ると、光太郎はすぐに佳津枝に電話をした。
無事に着いたことなどを報告したが、佳津枝は色々と質問したり、月曜日が入社式であることなど、自分の状況を長々と話し始めた。
 時計を見ると20分が過ぎていた。
「じゃあ、ちょっと用事があるから。」と言って、光太郎は電話を切った。
 着替えをして、廊下に出てみると、既に彼女は廊下で待っていた。
「すみません、家に電話をしていたのですが、母親の話が長くて・・・・・」
光太郎は、自分の嘘に驚いていた。
 駅まで10分の道のりを二人は並んで歩いていた。来るときはまだ明るくて気付かなかったが、駅の近くには居酒屋やファーストフードの店、レストランなどのネオンがけっこうたくさんあった。
「お酒、飲めます?」
光太郎が聞いた。
「そんなに強くはないですが、少しなら。」
「じゃあ、居酒屋にしませんか。」
「いいわ。」
 二人は、チェーン店の居酒屋に入った。
飲みながら話していると、彼女が松島久恵で、静岡の浜松出身、今回、同じアジア製作所に入社することがわかった。同期入社になる。
 背が高く、学生時代はバレーボールをしていたという。光太郎は、自分が高校時代テニスをしていたことなどを話したら、私もしてみたいと言った。
 久恵は、出されたビールをゆっくりと飲んでいる。光太郎は、学生時代、先輩に飲まされていたからけっこう飲める方である。久恵がやっと1杯目のジョッキを空けたことには、3杯目を空けていた。
 最初は、ちょっとだけのつもりであったが、気が付いたときには9時近くになっていた。二人は、寮に帰ることにした。途中、久恵がコンビニで明日の朝の朝食を買おうと言い、買い物をしてから部屋に戻った。
 部屋に戻ると、母親に無事に着いたことを報告するため、電話をかけた。
              −続く−







2022/01/18 8:35:29|小説「春の行方」
春の行方−01−
春の行方−01−
 
 光太郎は、新幹線の車窓を眺めながら、昨夜のことを思い浮かべていた。
昨夜は、佳津枝と飲んだ後で、カラオケに行った。二人で歌った最後に、佳津枝が歌った「木綿のハンカチーフ」のことを思い出していたのである。
 光太郎と佳津枝は、瀬戸内の小さな町に生まれ、家が近くの幼馴染みであった。二人とも農家の子供で、幼い頃から一緒に遊び、同じ幼稚園、小学校、中学校、高校と進んだ。高校の頃には、お互いに家に行って受験のための勉強をした。光太郎は数学が得意で、佳津枝は英語が得意だったから、勉強には効果があった。
3年の夏休みの頃、二人は初めてキスをした。それは不器用なものであったが、今でも甘い思い出として残っている。
 二人共、大学の試験に合格し、佳津枝は広島の大学に、光太郎は山口の大学に行った。普段は広島と山口なので逢うことはできなかったが、夏休みなどには帰省してデートを重ねた。車がなかったので自転車で海や山に行ったり、電車で広島や山口の町に行って映画を見たり、観光をしたりした。
二人が初めて結ばれたのは、大学1年が終った春休みのことだった。
佳津枝が、光太郎の家に遊びに来たとき、両親はみかんの手入れのために畑に作業に出ていた。妹も、出掛けていた。光太郎の部屋に入ったとき、いつものようにキスをした。そのとき、佳津枝の胸が光太郎の胸に触れた。その感触に、光太郎はいつにない興奮を覚えていた。
 光太郎は、佳津枝の背中に回した手に力を入れ、唇を強く押し付けた。
気が付いたときには、二人はベッドの上にいた。光太郎の裸の腕の中に佳津枝が頭を載せている。その瞳は、今、あったことに思いを寄せているようであった。
「ねえ、わたしのことを好き?」
佳津枝が聞いた。
「勿論だとも。」
光太郎が答える。
二人共、初めての経験に夢の中にいるような気分に浸っていた。
 その後も、二人はデートの度に身体を交えるようになっていた。大抵は、どっちかの家であったが、家族が家にいるときにはそれができず、二人共空しい思いをすることがあった。
一度結ばれてからは、普通の日の休日に逢うこともあった。佳津枝も光太郎も逢うごとに愛情を深めて行った。口にこそ出さないが、いずれ結婚することは当たり前のよう
に感じていた。それは家族も半ば承知の事実になっていた。
 大学も4年になると就職の話が大きなウエイトを占めてくる。お互いに電話で相談したが、結局光太郎は東京のプラントメーカーの会社に、佳津枝は広島の自動車会社に就職することになった。
 昨日は、光太郎の送別会のため、二人で町に飲みに行き、その後でカラオケに行ったのである。
                 −続く−







2022/01/14 12:15:52|小説「寒椿」
寒椿−5−
寒椿−5−

 家への帰り道、私は由紀子とその青年のことが頭を離れなかった。自分は結婚している身、その青年は独身である。従って、どう見ても自分の立場は不利である。しかし由紀子に対する燃えるような自分の気持ちはどうしようもない。そのことを考えれば考えるほど、どうしようもない苛立ちを覚えていた。
 翌日もその翌日も店に行ったが、その青年が来ていて由紀子と親しそうに話をしていて、席を立ちそうにない。私のことを意識していることは明らかだった。
 私は、由紀子とゆっくり話をすることもできず、イライラはますます募るばかりだった。
 3日目になって、やっとその青年は来ていず、ゆっくりと由紀子と話をすることができた。
「今日は、彼、来ていないね。」
「ええ。」
「お金でも続かなくなったのかな。」
「・・・・・」
私の棘のある言葉に、由紀子はどう答えていいかわからないようだった。
自分でも、こんなことを言うのはおかしいと思いながらも、つい言葉になってしまうのである。
 しばらく無言の時間が続いた。明るい性格の由紀子だったから、こんなときはいつも何か話題を変えて話をするのだが、私の気持ちが十分にわかっているので、何とも言えないのだった。
「また会ってくれないかな。」
私が、沈黙を破るように言った。
「・・・・・」
 このときも、由紀子は無言だった。いつもなら都合さえ良ければすぐに「いいわ。」と言うのだが、今日の由紀子は何も言わない。
 私は、ムッとした顔をしたと思う。再び、沈黙の時間が流れた。最後に私はいたたまれずに、店を出た。
 中年の所帯持ちと、若い青年、普通なら恋の戦いに勝ち目はない。問題は、間に入った由紀子が年齢的には二人の中間で、身分的には離婚歴があるということであった。由紀子は、どっちにも結婚を望んでいる訳ではないと思えた。それなら自分にも戦いに加わる権利があるのではないか、そう思って由紀子にアプローチしたのだった。
 しかし、この戦いにおいて、私は完全に敗北した。今まで、自分の方が優位に立っていたと思っていたのだが、今は完全に由紀子の気持ちはその青年の方に行っていた。
 帰り道、月夜の道を歩いていたら、ボタッと音がした。振り返って路上を見ると、大きな椿の花が道に落ちていた。
              −終り−







2022/01/13 15:54:19|小説「寒椿」
寒椿−4−
寒椿−4−

 由紀子は、真剣な顔をして黙って聞いていた。しばらくすると、その青年は言うことだけ言って、怒ったように帰って行った。
 すぐに由紀子がカウンターの内側から私のところにやって来て、入れ替わりに、隣にいた女の子がボックス席の方に行った。
「何か、言い争っているような雰囲気だったね。」
私が、言った。
「何でもないわ。気にしないで、飲んで!」
そう言って、ビールを注いでくれた。
 私は、ビールの瓶を取り、由紀子にも勧めた。由紀子とは身体の触れ合いがあることですっかり青年に対する優越感を持っていた私は、その話には触れないようにして、他の話に話題を転じた。
 その後も、何度かその青年は店に来ていた。いつも由紀子と話をしているのだが、私がやって来てしばらくすると怒ったように帰って行った。明らかに、最初の頃の態度とは変って来ていた。
 ある日のことである。
私が店に行くと、由紀子はいなかった。
「今日は、由紀子さんはどうしたの?」
私は、女の子に聞いた。
「どこか旅行に行くと言っていましたわ。3日ほど、お休みなんです。」
女の子は、そう答えた。その日、私は30分ほどで店を出た。
 由紀子が店に出て来る日、私が行くと、例の青年が来ていて由紀子と話をしていた。その様子は、今までにないほど親しそうだった。もしかしたら昨日までの旅行はあの青年といっしょだったのではないか、私はそんな気がして、急に激しい嫉妬を覚えた。
 私は、そのままカウンターで飲んでいたが、気が気でなかった。その日、青年はなかなか帰ろうとしなかった。親しそうに青年と話をしている由紀子を見ていると、嫉妬心がムラムラと湧き上がって来る。
 とうとう我慢できずに、私は店を出た。
             −続く−







2022/01/12 16:33:05|小説「寒椿」
寒椿−3−
寒椿−3−
 
 私は、話を続けた。
「でも、いつも二人が話をしている様子は、とても相談事だけではなさそうだよ。」
「あたしは、そんな気はないわ。でも、可哀相な人を見ると放っておけないの。あたしの性格なのよ。仕方がないわ。」
「・・・・・・」
 私と由紀子の間に、ちょっと気まずい空気が流れた。
「ごめんなさい。余計なことを言ってしまったわね。さあ、飲みましょうよ。」
そう言って、由紀子は私にビールを注いでくれた。
「ねえ、今度、僕と付き合ってくれないかな。一度、いっしょに食事がしたいんだ。」
「いいわ。私が、お店でない日ならいつでもオーケーよ。」
「じゃあ、来週の月曜日はどう?月曜日は、店は休みなんだろう。」
「いいわ。」
その後で、すぐに時間と場所を約束して、また飲み直した。その日、結局、その青年はやって来なかった。
 月曜日、約束どおり私達は駅前で会い、いっしょに寿司屋に行った。飲みながら話をしているときの由紀子は、ずっと笑みを浮かべていてとても楽しそうにしていた。その青年のことなど、全く忘れているようだった。私は、そのことに一種の安堵感を覚えていた。
 飲みながらの食事が終わって、私は、由紀子にホテルに行こうと誘った。由紀子は、恥ずかしそうな顔をしながらも、黙って頷いた。そのままタクシーを拾って、いわゆるラブ・ホテルに向かった。
 部屋に入ったときの由紀子は、じっと俯いていた。私は、そんな由紀子を抱き締めてキスをした。
 由紀子のセックスはおとなしいものだった。一度結婚歴のある由紀子だったから、性の悦びは十分に知っているはずである。そのことは、二人の交わりの中でわかる。決して貪欲ではなく、だからからと言って淡泊過ぎることもない。静かにセックスを楽しんでいる、そんな感じだった。
 それから何度か、由紀子とデートをし、その度に身体を交えていた。
 そんなある日、私が店に行くと、例の青年が来ていて由紀子と話をしている。その青年は怒っているような様子で、少し大きな声で何かを話していた。私の側には若い子がやって来て話をしているので、内容までは聞き取れないが、由紀子を責めている様子だった。
               −続く−







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