春の思い出−1−
青春時代の恋は、一途である。それだけに燃え上がったときには激しい。火に油を注いだように燃え上がる。 私は、高校でも目立たない存在だった。日頃からおとなしく無口であったし、友達も多い方ではなかった。勉強ができた訳ではないし、運動もしていた訳ではないから、自然目立たない存在になっていた。これと言った得意なこともなかったが、数学だけは比較的成績が良かった。2、3人の男の友達はいたが、みんなおとなしい者ばかりだった。 そんな私が、同じクラスでテニス部の久美子に憧れを抱き始めたのは、高校に入ってからのことである。久美子と私は、小学校、中学校と同じ学校で同じクラスであったりしたが、あまり意識していなかった。それが高校に入ってから、いつの頃からか彼女に思い焦がれるようになっていた。 一度思い始めると、昼も夜も彼女のことが頭から離れなくなって来る。授業中も彼女のことが気になって、同じクラスの前の方に座っている彼女の方にばかり目が行っていた。夜は、もっとひどかった。受験のための勉強をしていても、彼女のことばかり頭に浮かんで来て、まる勉強にならなかったのである。 気の弱い私は、そんなに燃え上がった気持ちを持ちながらも、誰に相談することも、ましてや彼女に打ち明けることもできずにいた。昼も夜も、悶々として過ごしているだけだった。そんな思いは、人に言わなければ言わないほど、彼女が遠くにいれば遠くにいるほど激しさを増してくる。彼女は、あくまで私にとって遠い存在だったのである。 一方、久美子の方は学校で1、2を争うほどの美人だったし、成績も常に学年のトップクラスにいた。またテニスでも、いろいろな大会で上位を占めるなど、活躍が目立っていた。そんな関係で、彼女は友達も多いようであった。 そんな久美子であるから、男の子達の憧れの的になっていた。何人かの男の子達は、「俺は彼女が好きだから、手を出すな。」と言って憚らなかった。そして積極的に彼女に話しかけようと試み、久美子の方も上手に相手をしながら適当にあしらっているようだった。そんな彼等の姿を見ながら、私は彼女と話をする機会もなく、一人悶々と過ごしていたのである。 そんな想いは、時と共に大きくなっていた。高校2年も後半になると、そろそろ受験勉強にも本腰を入れていかなければならないのだが、私は全く勉強が手につかなくなっていた。 −続く− |