男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2022/03/17 7:39:18|小説「春の思い出」
春の思い出−7−
春の思い出−7−

 大学を卒業して、私は、隣の県に就職した。小さな商社であったが、地元では堅実で有望ということであった。久美子の方は、教員採用試験を受かり、中学校の教諭になっていた。休みの度に、久美子は私に会いに来ていた。私が久美子のところに行くと、教諭という立場もあって目立つからである。
 就職して2年ほど過ぎたときである。久美子が突然のように、私に言った。
「私、結婚することになったの。」
親の勧める縁談があって、どうしても断れないのだと言った。
私は驚いた。当然のように、私と結婚してくれると思い込んでいたのだ。「私も、気の進まない縁談だわ。でも親の義理のような関係で、どうしても断れない事情があるの。私が好きなのは、あくまであなただわ。あなたのことは、決して忘れないわ。」
久美子は、そう言った。
 久美子の結婚式には私も呼ばれたが、盛大なものだった。後で、噂で知ったのだが、彼女の父親の経営する会社が倒産寸前になったとき、新郎の父親が多額の融資をし、経営難を救ったらしいのである。そしてその父親が久美子を気に入り、是非息子の嫁にということになったようであった。
 久美子が結婚してからしばらくは、私は元気がなかった。やはりショックだった。今更どうなるわけでもなく、私は諦める努力をした。諦めようとすればするほど久美子のことが忘れられなかった。
 1年が過ぎ、やっと久美子のことを忘れていた頃である。突然、久美子から電話があった。
「会いたい。」というのである。「どうしたの。」私が聞く。「とにかく会いたいの。訳は、後で話すわ。」
 土曜日の午後、久美子は電車に乗って、私のところにやって来た。私は駅まで迎えに行って、そのまま喫茶店に入ろうとすると、「あなたの部屋に行きましょう。」と言う。私は、自分のマンションに久美子を連れて行った。
 私が久美子を部屋に案内すると、久美子はいきなり私に抱きついてキスをした。
「私、あなたのことが忘れられないの。何があっても、あの結婚はすべきでなかったわ。あなたを愛しているわ。」
涙ながらにそう言った。その言葉を聞いて、私は強く久美子を抱きしめた。
                −続く−







2022/03/16 6:33:15|小説「春の思い出」
春の思い出−6−
春の思い出−6−

 Mは、元気が良かった。どんどん先を歩いて行った。K子もなかなか元気である。Mに負けまいと必死で歩いて行った。比較的体力のない私は、どっちかというと遅れ気味だった。久美子は、私を気使うように後ろを見ながら歩いていた。
 山を3分の2ほど登ったときである。久美子が遅れていた私に追いつくと私の手を掴んで道脇の茂みに誘い込み、いきなりキスをした。私は瞬間驚いたが、今回は2度目である。気心が知れていたこともあって、私は久美子を抱いてキスを返した。二人のキスの時間は、ほんの数秒であったと思うが、私には随分長い時間に思われた。私は、前を歩いている二人のことが気になって、身体を振りほどき、元の道へと戻った。私達は、道を急いで、やっとのことで二人に追いついた。久美子は、何もなかったような顔をしていた。そして私と顔が合うと、ニコッと笑った。私は久美子の大胆さに驚いていた。女が腹を決めたときの大胆さを知ったのは、このときが初めてだったと思う。
 新学期が始まって、久美子も私もそれぞれの大学に進んだ。久美子は大学の近くにアパートを借りていた。隣の県とは言っても、電車で行っても5、6時間かかる距離である。余程のことがなければ会うことはできない。それでも最初の頃は、しょっちゅう電話をしていたし、連休などで両方が家に帰ったときは会うことにしていた。
 5月の連休に会ったときの久美子は、僅かの間に随分女らしくなっていた。大人の落ち着きさえ感じさせるようになっていた。私は、そんな久美子に気遅れしそうになるくらいであった。
 その後も、夏休み、連休のとき、冬休みなどには必ず会うようにしていた。会えば、いっしょにどこかに行くことが多かった。大学2年の夏休み、私達は体の関係を持った。二人のどちらともなく、隣町のホテルに入ったのである。
 このとき、久美子は処女だった。決して嫌がったり、痛がったりはしなかったし、どちらかというと私をリードしている雰囲気だったが確かに処女だった。無論、女の喜びなんかなかったのだろうが、その落ち着きぶりに私は驚いた。そしてホテルを出る頃には、何もなかったような顔をしていた。
 私達は、2、3カ月に一回の割で故郷に帰り、その度に会っては身体を交えた。
                −続く−







2022/03/14 5:58:32|小説「春の思い出」
春の思い出−4−
春の思い出−4−

 翌朝、鎌倉に着いて、大仏や鶴が岡八幡宮などを見て回った。私達4人は、一緒に行動することが多かった。何人かの男子生徒が久美子のところに近づいて来たが、久美子が適当にあしらっていたので、しばらくすると離れて行った。
 その日のうちに東京に移動し、下町の宿に宿泊した。私は、久美子がいっしょに勉強しようと言ってくれたことに、やや興奮気味だった。昨日列車の中で寝ていないので疲れているはずだったが、なかなか寝つけなかった。
 翌日は東京タワーや皇居、迎賓館、首相官邸などを見学し、同じ旅館に戻ってもう一泊した。3日目は、日光に行き、夜行列車に乗って故郷に向かう。延べ5日間の修学旅行は終わった。帰りの電車に乗る頃には、私達はすっかり打ち解けていた。もう久美子と話をするときも、あがったり臆したりすることはなくなっていた。
 修学旅行から帰って、私達の勉強会が始まった。最初は久美子の家で、それからMの家、私の家、K子の家と交替で場所を変えては集まって勉強した。4人のときもあれば、3人のときもあった。お互いに束縛はしないことを約束し合っていたのである。問題集を解きながら、わからないことがあると教え合った。得意なだけあって、私は数学を、久美子は英語を教えることが多かった。MとK子は、特に得意、不得意はなかった。
 そんな勉強会が始まって3か月もした頃である。その日は、久美子の家に集まる順番だった。私が久美子の家に行くと、誰も来ていなかった。久美子が、今日はMもK子も来られないという連絡があったと言った。私達は、勉強を始めた。最初に久美子の母親がいつものようにコーヒーを出してくれたが、すぐに「私は買い物に行って来ますから、よろしくね。」と言って、買い物に出掛けて行った。
 二人きりになって、私は途端に落ち着かなくなった。それでも問題集に向かっていたとき、久美子が私のところにやって来て聞いた。
「ねえ、この積分の問題だけど、ここどうすればいいの。」
「どこ?」
「ここよ。係数をどうすればいいのかがわからないの。」
問題を指さす久美子の髪の毛が、私の顔のすぐ前にあった。久美子の髪の毛の匂いが私の鼻腔に感じられた。私は、やっとのことで問題を見、解き方を教えた。久美子は、答えがわかるとにっこりと微笑んだ。
「ねえ、三田君、キスしたことある?」
唐突に、久美子が聞いた。
私は、首を横に振った。するといきなり久美子が私の頬にキスをした。そして今度は両手で私の頬を挟み、唇にキスをした。私は、自分からは何もできず、ただ久美子の唇に自分の唇を合わせているだけだった。歯と歯のぶつかり合うような、稚拙なキスだった。
                     −続く−







2022/03/13 5:14:27|小説「春の思い出」
春の思い出−3−
春の思い出−3−

 「エッ、本当ですか?」
久美子が私に興味を持っていたという言葉に、私は驚き声で聞いた。
「本当よ、私は、嘘はつかないわ。」
久美子は、ちょっと怒ったように言った。
 私はせっかくの好機である。何か話さなければと思うのだが、なかなか話題を思い付かない。いつも久美子のことを考えているときには、もし機会があれば、ああ言おうかとか、こう言おうかとか考えているのだが、いざ面と向かってみると、何を話していいのかわからなくなった。他の生徒達も、こっちを見ているような気がするし、私は余計にあがってしまっている。
「久美子さんは、どこに進学するの?」
やっとの思いで、私は久美子に話しかけた。
「私、本当は東京の大学に行きたいのだけど、両親が許してくれないの。だから近くの国立を受けたいと思っているの。」 
久美子は、県内の国立大学の名前を言った。
「僕も、今の成績では大学に行けるかどうか。でも両親は進学してもいいって言ってくれているし・・・・・」
「久美子さんは、何の学部を受けるつもりですか?」
「私、英語を勉強したいの。教育学部か、文学部に行きたいわ。」
「僕、英語は苦手だけど、数学は好きです。だから理工系の方に進みたいと思っています。」
「あらっ、私、数学は全然駄目なの。でも国立だと、数学も受験科目にあるでしょう。どうしようかと思っていたの。」
「じゃあ、二人でいっしょに勉強しません?僕は英語を教えて貰って、その代わり久美子さんに数学を教えてあげる。どうでしょう。」
そのときには、席に戻っていたK子が、「私も、入れて欲しいわ。」と言った。Mも頷いている。
「それはいい考えね。4人で、いっしょに勉強しましょうよ。」
久美子がそう言って、話はまとまった。
 その話は、それで終り、その日は4人で遅くまで話をしていた。他の生徒達の多くは、既に眠りについている。いったん寝そびれると、なかなか寝つけないものである。ましてや修学旅行あちこちで話し声も聞こえていた。
 その後、Mが持っていたトランプでゲームをしたり、お喋りをしたりして、やっと寝ついたのは、明け方近くだった。
                  −続く−
 







2022/03/12 5:17:33|小説「春の思い出」
春の思い出−2−
春の思い出−2−

 田舎の高校でも、3年生になると受験があるということで、修学旅行は2年生の秋にある。修学旅行は東京方面で、修学旅行専用の夜行列車で行くことになっていた。
 当日、駅に集合し、先生の人数チェックが行われた後で、列車の到着と同時にみんなが乗り込む。それぞれ、我先にと列車に駆け込んで席を陣取った。席は、4人ずつのボックス席で、二人ずつ向かい合って座るようになっている。
 私は、友達のMといっしょに席に座った。二つは、まだ空いていた。ちょっと遅れて、女の子が目の前にやって来て、「ここ、空いているの。」と聞いた。見上げると、久美子と、いつもいっしょにいるK子だった。
 私が黙っていると、Mが「空いているよ。どうぞ、どうぞ。」と言った。いつも久美子と話してみたいと思っていた私であるが、いざ彼女が目の前に来ると、何も言えなくなっていた。
 列車が出発してしばらく、私はMと、久美子はK子と、それぞれお喋りをしていた。私はMと話しながらも、ずっと久美子のことが気になっていたが、それもできずに私達は男同士で喋っていたのである。
 午後に出発した列車が岡山あたりまで来ると、外は少しずつ暗くなり始めた。この頃になると、最初はワイワイ騒いでいた連中も疲れて来たのか、静かになっている。私達4人も、話は途絶えていた。
 何かの用事で、MとK子が席を立ったとき、久美子が私に話しかけてきた。
「三田君、いつも私の方を見ているでしょう。」
「・・・・・・・・」
「私、前から気がついていたわ。」
「・・・・・・・・」
私は、久美子が何を言いたいのかわからずに、黙っていた。
「あなたは、もっと勇気を持った方がいいわ。私も、いつも私の方を見ている三田君に興味があったの。今日、この席に座ったのも、あなたと話したいと思ったからよ。それでK子を誘って、追いかけてきたの。」
 この言葉を聞いて、私は意外だった。彼女が私に興味を持っているなんて、思ってもみなかったからである。
               −続く−







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