プレイガール自伝−20−
私も、美味しそうに飲んでいる彼を見て、久し振りに日本酒を飲んでみたくなりました。私が、お酒を頼むと、彼が自分の盃を渡してお酒を注いでくれました。 そのうちに私が頼んだお銚子が出て来ると、彼に盃を返して注いであげました。 その様子を見ていた女将さんが、「あらっ、お猪口はひとつでいいみたいね。」と言って、取り出していた盃を引っ込めてしまいました。 私は、女将さんに聞きました。 「三郷さんは、この店によく来るのですか?」 「そうね、ここ2週間ほどはご無沙汰だったけど、毎週のように来てくれるわ。いつも一人なのよ。」 「もう長いのですか?」 「そうねえ、5、6年になるかしら。」 「いつも静かなんですか?」 「そうね、大抵は黙って一人で飲んでいるわね。」 「彼、無口で話してくれないのでよく知らないのですが、どんなお仕事をしているのでしょうね?」 「おやっ、二人は長い付き合いではないのですか?」 「いいえ、つい最近知り合ったばかりです。」 「そうなの、それは意外ね。二人の様子を見ていたら、ずっと長い間付き合っている恋人同士かと思ったわ。彼の会社は、新宿にあるみたいだけど、私もよく知らないのよ。」 その後も、私は幾つかの質問をしましたが、自分がよく喋ることに驚いていました。こんなに話したのは初めてでした。彼は、ニヤニヤ笑いながら、私達の会話を聞いています。 しばらくして、彼が「女将さん、また来るよ。」と言って立ち上がりました。私は、今度こそホテルに行くのだと思い、胸を高鳴らせていました。今までに何度も、男に抱かれましたがこんな気持ちになったのは初めてのことでした。それは、決して性欲を満たしたいだけではなかったように思います。 店を出ると、彼が聞きました。 「君の家はどこ?」 「中野です。」 「じゃあ、僕の近くだ。家まで送って行くよ。」 その言葉に、ホテルに行くものだとばかり思っていた私はがっかりしました。それは、単に男に抱かれたいと思う気持ちとは違ったものでした。今までは、相手に対してセックス以外は求めていなかったのですが、彼に対しては不思議な親近感を覚えていたのです。 −続く− |