プレイガール自伝−35−(最終回)
彼のお母さんが寝室に入って行くと、彼が私に言いました。 「じゃあ、一緒に風呂に入ろうか。」 私は、彼が入院前の最後の夜を私と少しでも一緒に過ごしたいのだと思って嬉しくなりました。 私が台所で後始末をしていると、彼が「おいで!」と言って、私の後ろから抱き締めて、首筋にキスをしてくれました。 「でも、お母さんが・・・」 「いいんだ。気にするな。母さんが何か変なことを言ったら、僕がタクシーで追い返すよ。」 その言葉で、私は振り向いて、彼を強く抱きしめてキスをしていました。 その日、二人はベッドに入ると、すぐに愛し合いました。二人共、しばらくできませんし、もしかしたらこれが最後になるかも知れないと思うと、我慢できなかったのです。 隣の部屋には彼のお母さんが寝ているので、私も悦びを十分に表せません。声を出すことさえ気になります。しかし、彼は容赦しませんでした。私の感じる部分を全て撫で、舐めてくれるのです。私は、必死で声をかみ殺していました。 しかし我慢の限界がありました。彼がひとつになって来たとき、私は思わず声を出していました。彼が、キスで私の口を塞いでくれました。 翌日、彼は入院して行きました。私は、毎日、仕事が終ると、病院に駆け付けました。しかし、彼の病状は悪化の一途を辿りました。食欲は落ちて痩せ、顔色は次第に悪くなっていきます。そんな彼の様子を見ていると、涙が止まりません。私の様子を見ていた彼は、逆に私を慰めてくれました。しかし病状は悪化の一途を辿り、彼も次第に弱気になって、結局、彼は、病気がわかってから半年で亡くなってしまいました。私は、命の儚さに呆然となりました。 葬儀や彼の家の処分などで慌ただしい日々が過ぎたとき、私の心にぽっかりと大きな穴が開きました。 一周忌が過ぎたとき、私は強い虚無感に襲われました。彼が、遠いところに行ってしまったような気持ちになったのです。 私は、「より道」や「とまり木」に通うようになりました。すっかり元のプレイガールに戻ったのですが、彼との出会いの前と後では、していることは同じですが心の内は大きく違っていました。以前は寂寥を癒すためでしたが、今では虚無の世界にいたのです。 今日も、会社を終えると、自然に渋谷の道玄坂に足が向いていました。 ―完― |