若草の唄−20−
翌日、娘の美和子から電話がかかって来た。 「お父さん、お母さんから電話あった?」 「うん、あったけど。」 「どう言ってた?」 「どうって言うか・・・・、賛成なのか、反対なのか、よくわからないんだ。おまえには何と言ってたの?」 「お父さんに相談してみるって・・・」 「どうやら、自分だけ置いてけぼりで話が進められたように思っているらしいんだ。僕と紀美子さんも知っていたように思っているみたいなんだよ。」 「やっぱりね。」 「何が?」 「光太郎さんもそれを心配していたの。はっきり言うと、お父さんと紀美子さんのことをお母さんがヤキモチ焼いているんじゃないかってね。」 「馬鹿な・・・」 娘の手前そうは言ったものの、私も同じことを考えていた。 「紀美子さん、きれい過ぎるわ。それに頭もいい人だし、女だったら素晴らしいと思う反面、誰だってヤキモチを焼くと思うわ。」 「そうか・・・」 「心配しないで。私達、諦めはしないから。二人の気持ちは決まっているの。ただ家族には賛成して欲しいから、もうちょっと時間をかけてお母さんを説得するわ。」 「近いうちに一度家に帰るよ。お母さんと話してみる。」 「そうね、そうしてもらえると嬉しいわ。」 それだけ言うと、電話を切った。しかし、私は家に帰っても何と言っていいのかわからなかった。 嫉妬は難しい問題である。理屈や理性ではなく、感情の問題だからである。昨日の美和子の言葉から察するに、結婚そのものに反対しているのでもなさそうである。反対するとすれば、理由は光太郎が片親であることと、私の幼馴染みの紀美子の息子であることであろうが、光太郎には片親の暗さは微塵もなかった。となると、理由は後者であり、明らかに背景には嫉妬がある。しかし、妻は決して嫉妬していることは口には出さないであろう。他に理屈を言うはずである。嫉妬を口に出してくれれば潔白の証しもできるのだが、それを抜きに他のところで話をしながら説得しなければならない。話の糸口をどう掴んで行ったらいいのか、それを考え続けていた。 何と言っていいかはっきりわからないまま、一週間後私は新幹線に乗っていた。 −続く− |