男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2022/08/15 5:16:47|小説「食虫花」
食虫花−10−
食虫花−10−
 
 朝目が覚めると、勝手の方で包丁を使う音がしていた。ゆう子が、朝ご飯の支度をしているらしい。
 光太の夏休みは、全く予定と違ったものになった。彼は、時間の許す限りここにいようと思った。夏休みは、1週間取っていた。
 朝の食事が終ると、ゆう子は着替えを出して来た。昨日とは違うものだから、何着かあるようだった。着替えをしたが、特にすることはない。鎌と鉈を借りて、家の周りの草刈りや庭木の枝を下ろすことにした。これにはけっこう時間がかかる。一日や二日で終わる作業ではない。これだと昼間退屈しないで済みそうである。夜には、ゆう子との愛の時間が待っている。それを思うと、草刈りも庭木の手入れも苦にならなかった。
 10時になるとゆう子が井戸で冷やした冷たいお茶を持って来た。
「お疲れ様。暑いでしょう。」
「いえ、町の暑さに比べれば、ここは涼しいですよ。」
「そうですね、夏はまだ良いのですが、冬は大変です。雪が多いので、完全に閉ざされた世界になってしまいます。」
「寂しくないですか?」
「それは寂しいですが、すっかり慣れました。」
「買い物などはどうしているのですか。」
「雪の降る前に買い溜めしておきます。野菜などは、雪の下に埋めておくとけっこう長持ちします。」
「それにしても女一人では大変でしょうね。」
「ええ、でも女の方が男より強いところがありますわ。」
ゆう子は、そう言って笑った。光太は、ゆう子の笑顔を見て、ここに残って良かったと思っていた。
                 ―続く―







2022/08/13 3:59:01|小説「食虫花」
食虫花−09−
食虫花−09−
 
 その日の夜、光太が寝間にいると、白い寝間着姿のゆう子がやって来て布団に入って来た。光太は、ゆう子を抱いた。昼間のこともあって、ゆう子も自然に光太を受け入れた。キスをしながら、ゆう子の乳房に触れると、ゆう子の手が光太の物に触れた。
 その行為に、光太の興奮は一気に燃え上がった。光太は、ゆう子に挑んで行った。
 終わった後で、ゆう子が言った。
「この村には、伝説があります。遠い昔のこと、村に一人の娘がいました。そこに遠くから来た旅人の青年がいました。青年は、武者修行中で、娘の父親が剣の達人だというので訪ねて来たのです。青年は、しばらく娘の家に滞在することになりました。娘が、何かと面倒を見ているうちに、二人は恋に落ちました。そして、親の目を盗んでは逢うようになりました。そのうちに娘は孕みました。しかし、それが父親に知れたら大変です。青年は追い出されますし、娘もどうなるかわかりません。孕んだことを誰にも言えず、娘は悩みました。両親が不在のある日、二人は家の近くを歩いていました。池の畔まで来たとき、娘は手に持っていた草刈り用の鎌を、青年の背中に突き立てました。娘の一念の鎌は急所に刺さり、青年は池に落ちました。娘も、喉に鎌を突き立て、青年の後を追うように池に落ちて行ったのです。父親は激怒しました。葬式もろくろく出さず、秘密裏に二人を葬りました。今日、お墓がありましたね。二人は、ひっそりとその一角に葬られたのです。村人は、みんな事情を知っていて、二人に同情しましたが、娘の父親を恐れて、誰も二人の墓には近寄りませんでした。」
 ゆう子の話に、光太は聞き入っていた。そして言い伝えの二人と、自分達のことを考えていた。時代が違い、置かれた立場も違っていたが、こうして出会った二人と言い伝えの二人の立場が似ているように思えたのである。
 ゆう子が言った。
「光太さん、しばらくここに滞在していただけませんか。」
「居ても良いのですか。」
「是非、居ていただきたいのです。」
「ゆう子さんが良かったら、居させていただきます。」
 その言葉に安心したのか、いつしかゆう子は光太の腕枕で小さな寝息をたてていた。
                 ―続く―







2022/08/12 4:10:32|小説「食虫花」
食虫花−08−
食虫花−08−

 光太は、ゆう子の笑顔に、自分も思わず笑顔になっていた。その後で、会話が途切れた。二人とも無口になり、目と目が合った。ゆう子の目からもいつしか笑みが消え、真剣な表情になっていた。
次の瞬間、光太が言った。
「好きです!」
「私も・・・」
二人は、言葉と同時に抱き合った。それ以上、言葉はなかった。しっかりと抱き合ったまま時間が流れた。
 やがて二人は唇を合わせ、光太の手が着物の襟から入って行った。ゆう子の肌は冷たかった。光太の手のぬくもりが、ゆう子の肌に伝わって行く。ゆう子の乳房は、小さくてきれいな形をしていた。キスを続けたまま、光太の手がゆう子の乳房に触れたとき、ゆう子はビクッと身体を震わせた。光太は、着物の胸をはだけると、小さな乳首に唇を這わせた。ゆう子は、身体をのけ反るようにして受け入れている。
 光太は、ゆっくりと丁寧に唇と指を使ってゆう子の全身を愛撫した。囲炉裏の火で、のけ反っているゆう子の白い身体が浮かび上がっていた。
 二人がひとつになるのに時間はかからなかった。光太は、力強く動き、ゆう子の身体がそれに反応している。光太の動きが大きくなり、ゆう子が両脚でしっかりと腰を挟んで光太の物を迎え入れていた。
 激しい動きの後で、やがて静寂が訪れた。二人は、囲炉裏の傍で抱き合ったまま時間を過ごした。
「愛している。」
「私も・・・」
「ゆう子さん、とても素敵だ。」
「光太さんも、とても力強かったです。」
「またしたいね。」
「えゝ。」
 そんな会話を交わしながら、光太はすぐには帰れないと思っていた。
                 ―続く―







2022/08/11 3:57:07|小説「食虫花」
食虫花−07−
食虫花−07−
 
 外は良い天気だった。ゆう子は、相変わらず白い着物姿であるが、鼻緒に花模様の飾りがついた下駄を履いていた。
 玄関を出ると、広い庭があった。庭木は、ところどころに枝を切ったあとがあるが、庭はけっこう荒れていた。
 古びた門を出ると、すぐ横に大きな池があった。水は澄んでいて、底には何か白いものが見えていたが、それが何かはわからなかった。
 その先は、畑になっていて、ネギや大根、ホウレンソウのような野菜が植えられていた。更に歩いて行くと、茅葺き屋根の家が見えた。屋根には草が生えていて、荒れ放題の廃屋である。その横の森を抜けると、墓地があった。石を積んだだけの物もあれば、五厘塔のようなものもあるが、とても立派なものとは言えない。
 歩きながら、ゆう子が言った。
「私達は、平家の落人の子孫だと言い伝えられています。昔は、数軒の部落になっていたのですが、若い人達はみんな部落を出て行ってしまいました。そして兄も、出て行ったのです。私の家は村長でした。父は、最後までここを守るのだと言って残っていたのですが、結局、病気で死んでしまいました。そして母も父の後を追うように死んだのです。私は、一人で父も母もここに葬りました。」
 そう言って、墓地の方に向かって手を合わせた。
 2時間ほど歩いた後で、屋敷に戻った。ゆう子が淹れたお茶を飲みながら、二人は囲炉裏の傍で話をしていた。
「こんな山奥に一人で住んでいると大変でしょう?」
「そうですね、食べ物は何とかなるのですが、寂しいのがたまりません。」
「買い物などは、どうしているのですか?」
「お米など、必要なものは隣の村まで買い出しに行きます。隣村と言っても10キロ以上あって月に1回ほどしか行けないので、多くは自給自足です。」
「そんな貴重なお米をいただいてすみません。」
「いいえ、良いのです。私には、貴方と話ができることの方が嬉しいのですから。」
 そう言って、ゆう子は微笑んだ。昨日以来、無表情なことが多いゆう子だったので、このとき初めて笑顔を見たような気がした。
                 ―続く―







2022/08/10 5:49:31|小説「食虫花」
食虫花−06−
食虫花−06−

 顔を洗うと、食事である。中身は違うものの、昨夜と同じおじやだった。ゆう子が申し訳なさそうに言った。
「こんな物ばかりですみません。」
「いいえ、助かります。あのまま山で遭難していたらと思うと、こうしてここに居させてもらうだけで天国です。」
「それから、まだ衣類が乾かないんですよ。良かったら、もう少し滞在なさりませんか。」
「いいのですか、ご迷惑じゃありませんか?」
「とんでもありません。私、一人暮らしで寂しいのです。話し相手がいるだけで嬉しいのです。」
「そうですか、それではお言葉に甘えさせていただきます。」
「嬉しいですわ。是非、そうなさってください。」
 実際、光太は最初に見たときからゆう子の美しさに惹かれていたので、この申し出は渡りに船だった。
 食事が終ると、特にすることがない。登山用の衣類は濡れたままなので、ジャージー姿のままである。しばらくすると、ゆう子がズボンとシャツを持って来て言った。
「これをお召しになりません?兄が使っていたものですが、ちゃんと洗ってあります。」
「ありがとう。」
光太は素直にそれを受け取って着替えた。身体にピッタリのサイズだった。
「ピッタリです。お兄さんと同じ体格なのですね。ところで、お兄さんは?」
「今は遠くに行っています。もう帰って来ることはないと思います。」
「そうですか。」
光太は興味があったが、複雑な事情でもあって、これ以上聞いてはいけないような気がして黙っていた。
「家の周りでも散歩なさいませんか?」
ゆう子が提案した。光太は、家の周りでも見れば、少しはこの不思議な家の事情がわかるのではないかと思った。
                 ―続く―