食虫花−15− 次の日も、光太は屋敷から出なかった。というより、出ることができなかった。寝間で一日中ぼんやりとしていた。ゆう子も、出掛ける様子はなく、光太は、自分が逃げ出さないように見張られているのだと思った。 夜になると、ゆう子は寝間にやって来た。むさぼるように、光太を求めた。恐怖心からなかなかその気にならない光太を、あらゆるテクニックを使って元気にさせた。元々性経験の少ない光太である。そのテクニックに元気になり、ゆう子の思い通りになった。 そんな日々が続いた。何日が過ぎたのか定かではないが、1週間以上が過ぎたと思えた。光太は、身体を交えているとき以外は、ずっと恐怖心に囚われていた。その間、何とかここから逃げ出さなければならないと思い続けていた。 ある日、その機会がやって来た。ゆう子は、畑にでも出かけたのか、朝食を終えてしばらくしてから物音がしなくなった。光太は、リュックサックを背負うと、あたりの様子を見ながら木戸を出た。幸いゆう子のいる気配はしない。それを確認すると、小走りに森の小道の方に走って行った。その道は、ここに迷い込んだ道のはずだった。 けもの道のような道を、藪をかき分けながら進んだ。森と藪で方角がよくわからなかったが、とにかくがむしゃらに進んで行った。1時間も歩いただろうか、すぐ先が明るく開けているのが見えた。村でもあるのだろうかと期待して進んでみると、そこには見慣れた光景があった。ゆう子の屋敷だった。森の中を一周しただけのことだったのである。 愕然として立ち尽くしていると、すぐ目の前の森からゆう子が現れた。 「やっぱりあなたも逃げるのね。」 その声は、悲しみと憎しみを含んだものだった。 「今まで、いろいろな形で逃げられないと教えたはずなのに。」 「・・・・・」 「逃げたらどうなるか、あなたもわかっているでしょう。」 「・・・・・」 光太は、足が震えて歩くことさえできなかった。 ―続く― |