男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2022/08/19 5:00:09|小説「食虫花」
食虫花−15−
食虫花−15−
 
 次の日も、光太は屋敷から出なかった。というより、出ることができなかった。寝間で一日中ぼんやりとしていた。ゆう子も、出掛ける様子はなく、光太は、自分が逃げ出さないように見張られているのだと思った。
 夜になると、ゆう子は寝間にやって来た。むさぼるように、光太を求めた。恐怖心からなかなかその気にならない光太を、あらゆるテクニックを使って元気にさせた。元々性経験の少ない光太である。そのテクニックに元気になり、ゆう子の思い通りになった。
 そんな日々が続いた。何日が過ぎたのか定かではないが、1週間以上が過ぎたと思えた。光太は、身体を交えているとき以外は、ずっと恐怖心に囚われていた。その間、何とかここから逃げ出さなければならないと思い続けていた。
 ある日、その機会がやって来た。ゆう子は、畑にでも出かけたのか、朝食を終えてしばらくしてから物音がしなくなった。光太は、リュックサックを背負うと、あたりの様子を見ながら木戸を出た。幸いゆう子のいる気配はしない。それを確認すると、小走りに森の小道の方に走って行った。その道は、ここに迷い込んだ道のはずだった。
 けもの道のような道を、藪をかき分けながら進んだ。森と藪で方角がよくわからなかったが、とにかくがむしゃらに進んで行った。1時間も歩いただろうか、すぐ先が明るく開けているのが見えた。村でもあるのだろうかと期待して進んでみると、そこには見慣れた光景があった。ゆう子の屋敷だった。森の中を一周しただけのことだったのである。
 愕然として立ち尽くしていると、すぐ目の前の森からゆう子が現れた。
「やっぱりあなたも逃げるのね。」
その声は、悲しみと憎しみを含んだものだった。
「今まで、いろいろな形で逃げられないと教えたはずなのに。」
「・・・・・」
「逃げたらどうなるか、あなたもわかっているでしょう。」
「・・・・・」
光太は、足が震えて歩くことさえできなかった。
                 ―続く―







2022/08/18 5:43:47|小説「食虫花」
食虫花−14−
食虫花−14−

 光太は思わず身体を引いたが、ゆう子はしがみつくように光太に抱き着いた。
「ねえ、昨日のように愛して!」
ゆう子が、光太の耳元でささやいた。
「・・・・・」
「私、あなたのことを好きなの。愛しているわ。」
「・・・・・」
「あなたは、まだ夢に怯えているのね。早く忘れることよ。」
そう言いながら、ゆう子は手を光太の物に伸ばした。恐怖心と体力の衰えで光太の物は縮こまっていた。
 しかしゆう子は諦めようとしなかった。ゆっくりと優しく光太の物を撫で続けた。光太も男である。そうされているうちに心に反して、彼の物が勃起の兆しを見せて来た。ゆう子は、身体を起こすと、光太の前を開き、光太の物を口に含んだ。手でしごきながら、先端を舌で包むようにして、光太の物に刺激を与えて行く。しばらくそうしていると、光太の物は意に反して固く大きくなっていった。
「あなたのこれが欲しいの。」
そう言うと、光太に跨り、彼の物に自分の部分をあてがってゆっくりと腰を沈めていった。彼女の部分が、光太の物を吸い取って行く。そして彼女は、腰を上下させながら声を出した。
「あゝ、いいわ、本当にいいわ。光太さん、逞しい。」
彼女から与えられる快感に、光太は恐怖心も忘れていた。
 終わった後で、ゆう子が言った。
「ねえ、ずっとここにいてくれるでしょう。私、あなたを本当に好きになったの。あなたを帰さないわ。」
 光太は、性の行為の熱情が冷めると、再び恐怖心が蘇って来た。今、身体を交えたゆう子と、昨日洞窟で見た女が、どうしても別人とは思えなかったのである。横に光太の手枕で寝ているゆう子の髪の毛の感触さえ不気味なものに思えていた。
                 ―続く―







2022/08/17 5:20:33|小説「食虫花」
食虫花−13−
食虫花−13−
 
 気が付いたときには、布団に寝かされていた。枕元には、ゆう子が座っていた。
「気が付いたのね。」
「ん?」
「随分、うなされていたけど、悪い夢でもみたのね?」
「裏の洞窟の骨は、あれは何なの?」
「それ、何のこと?」
「俺は見たんだ。菰に隠された人間の骨があった。」
「悪い夢をみたのね。そんなものはないわ。」
「いや、確かに見たんだ。」
「じゃあ、確認するといいわ。私も、一緒に行きましょうか。」
「う、うん、い、いや、行かなくてもいいよ。」
光太には、とてもあの光景を再び見る勇気はなかった。しかし、あれが夢だったとは思えなかった。
 それからの光太は、完全に恐怖心に捉われていた。食欲は無くなり、ゆう子の顔を見るのも怖かった。何とかここを逃げ出したいと思ったが、去年の男が逃げ出そうそして殺されたという言葉が気になった。洞窟であったことが、ゆう子の言うように夢だったとはとても思えなかった。それほど生々しく光太の脳裏に焼き付いていた。光太は、一日起き上がることができなかった。
 ゆう子は優しかった。甲斐甲斐しく光太の面倒を見、枕元に食事を持って来た。今朝ほど見た、女とはまるで違っている。しかし、光太はあの化け物のような女がゆう子の正体だと思っていた。出された食事も食べる気がしなかった。結局、その日は一日寝ていた。
 寝ていても、何とかしてここを逃げ出さなければという思いは次第に強くなって行った。しかしゆう子は、光太の近くから離れようとせず、逃げ出せる機会はなかった。
 夜になった。一日ほとんど食事も取らなかった光太は、元気が無く身体のだるさを覚えていた。
 そのとき、ゆう子がやって来て光太の布団に滑り込んだ。
                 ―続く―







2022/08/16 4:31:13|小説「食虫花」
食虫花−12−
食虫花−12−

 ここに来て3日目になった。昨夜の愛の行為で光太は疲れていて目覚めが遅かった。座敷に出て見ると、飯台に朝食の用意はしてあったが、ゆう子はいなかった。「ゆうこさ〜ん!」と呼んでみたが、返事はなかった。
 一人で食事を済ませると、裏庭に出てみた。そして、昨日見た洞窟に入って行った。異臭が漂っているので、ハンカチで鼻を覆って進んで行った。10メートルほど進むと、そこは広くなっていて、何かに菰(こも)のような物が被せてあった。思い切って菰をめくって驚いた。菰の下にあったのは白骨だった。まだ肉片がこびりついている。それは、明らかに人のものだった。仰天した光太は、そのまま入り口に向かって走った。そのとき、入り口に人影を見た。逆光でよく見えなかったが、白い着物を着た女だった。ここにはゆう子しかいないはずである。
女が言った。
「見たのね。」
その声は落ち着いていた。
「な、な、何だ、あの骨は?」
「見てしまったのね。あなたは、見てはいけないものを見てしまったのよ。」
「どうしてあんなところに人の骨があるんだ。」
「あなたは知らないかも知れないけど、去年、行方不明になった男の骨よ。」
「そ、それがなんでこんなところにあるんだ?」
「彼も、あなたと同じようにここに迷い込んで来たの。最初は、私と仲良くしていたわ。それなのに、彼は帰ると言い出した。私は、彼を帰したくなかったので、帰らないようにと懇願したわ。でも彼は言うことをきいてくれず、無理に帰ろうとした。だから私は、彼を後ろから鎌で切りつけて殺したの。」
「そんな恐ろしいことを・・・」
「あなたも、このまま帰すわけにはいかないわ。いい、同じ目に遭いたくなかったら、このままここにいることよ。」
 目が慣れて女の顔が見えた。目が吊り上がり、口は耳まで裂けていた。そして顔の皮膚は黒く爛れていた。
光太は、気を失って、地面に倒れた。
                 ―続く―







2022/08/15 5:17:52|小説「食虫花」
食虫花−11−
食虫花−11−
 
 光太は、お茶の後も屋敷の周りの草刈りを続けた。昼には屋敷に戻って、ゆう子の作ったご飯と鍋物だった。肉と野菜のたくさん入ったもので、疲れた体にはとても美味しかった。
 午後は休んでくださいと言うゆう子に、光太は「いえ、じっとしているのが嫌いなものですから」と言って作業を続けた。
 昼前までに庭の前面の半分の草刈りと庭木の剪定を終わっていたので、午後からは屋敷の裏側に回る。けっこう広い菜園になっていて、大根や胡瓜、茄子、白菜などの野菜が植えられていた。野菜の間に草が生えていたので手で抜かなければならずけっこう手間取った。
 畑の周りの草を取り終わったとき、裏に洞穴があることに気が付いた。入り口は人がやっと入れるくらいの大きさで、光太は、昔防空壕だと言って見せられた故郷の穴に似ていると思った。興味を引かれて中に入ってみた。中はかび臭いにおいがした。奥は深いようだったが、薄暗く臭いも酷かったので、とても奥まで入る気にはなれず、早々に戻って来た。
 屋敷に戻って来ても、そのことをゆう子に聴く気にはなれなかった。光太にも理由はわからなかったが、なぜかあの薄暗い洞窟については聴いてはいけないような気がしていた。
 ゆう子については不審なことが多かった。若い娘がなぜこんなところに住んでいるのかから始まって、どうやって生活しているのか、なぜ男物の衣類があるのか、なぜ女手でイノシシ肉が獲れるのかなど、冷静に考えればおかしなことばかりだったが、彼女の美しさと妖艶さが光太を虜にしていた。
 光太は、夜が来るとゆう子の身体に挑んで行った。
                 ―続く―