食虫花−17−(最終回)
ゆう子は、話を続けた。 「大山では、ときどき遭難者が出ているでしょう。そのうちの若い男性のほとんどはここに来たのです。そうして私としばらくは暮らしていました。そのまま居着いた者もいれば、去年の男のように逃げ出そうとする者もいました。」 「居着いた男はどうなった?」 やっとのことで光太が言葉を口に出した。 「病気で死んだわ。元々身体が弱かったのね。」 光太は、そうでないと思った。ゆう子の荒淫に体力を消耗し尽くして死んだのだろうと思った。いずれにしても、何とかしてここから逃げ出さなければならなかった。それを見透かすようにゆう子が言った。 「逃げてもだめよ。どうなるかは、あなたが洞穴で見たとおりよ。」 ゆう子は、その夜も光太を求めて来た。元気が無いと、手を使い、唇を使うなどあらゆる技を駆使して光太を奮い立たせようとした。光太の物は、その技に屈した。いつしか、ゆう子に包み込まれる快感に我を忘れていた。 愛欲の日々が続いた。それは夜だけとは限らなかった。朝に、昼に、夜にとゆう子は光太を求め続けた。光太は、次第に弱って行った。 もう何日が過ぎたのかもわからなかった。今や、逃げ出そうとする気力さえ失っていた。光太は、自分がいつか死ぬだろうと思った。病気で死んだという男達は、こうして死んで行ったに違いないと。 その頃、新聞やテレビで次のようなニュースが流れていたが、光太は知る由もなかった。 「今年も、大山で青年が行方不明。山口県から来た三橋光太さん27歳が、大山に登ると言って出掛けたが1週間が過ぎても消息がわからない。地元に問い合わせても帰って来ていないという。警察などが捜索したが依然行方不明のままである。心当たりのある人は、警察に連絡して欲しい。」 ―完― |