男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2023/07/19 16:26:28|小説「漂流記」
漂流記−1−
 「ねえ、どうしてくれるの。私、こんなところに寝るなんて嫌よ。一体、あなたどう責任を取ってくれるの。」
 紗智子のかん高い声が聞こえている。俺は、黙って罵りの言葉を聞いているだけだった。
 今、俺達は無人島に二人きりである。
 紗智子は会社社長のお嬢さん、俺はヨットの操縦員である。紗智子がヨットで航海してみたいという希望があり、父親を通じてヨットのレンタル会社に連絡があり、お供役として会社が選んだのが俺だった。計画では、2週間ほど南方の海を航海する予定で、葉山のヨット・ハーバーを出航し、沖縄の南端から台湾近くまで行って帰って来る予定だった。
 紗智子には、金持ちの娘特有の我が儘があった。やや太めの眉毛に、切れ長の瞳、鼻筋の通った顔立ちはとても美しいのだが、目の奥にやや険があって人を寄せ付けないようなところがある。俺に対しても常に偉ぶっているところがあって、言葉使いも態度も尊大だった。俺は、あくまで使用人であることを自覚していたし、そのことにこだわりは持っていなかった。
 キャビンは2つあって、紗智子は奥の寝室のある部屋の部屋を使い、俺は入り口の狭い部屋を使っていた。最初に俺が、紗智子の部屋を掃除しようかと聞くと、紗智子は咎めるように、「私の部屋には決して入らないで。」と言った。俺は、紗智子が雇い主と使用人の立場をあくまで主張しているのだと思った。
 それでも最初の航海は順調で、初夏の温かい空気の中、本邦の近くを南下して行っていた。
 ところが出航して1週間、南シナ海に入ったところで台風が来るとの予報が入った。これから引き返すにしても、このまま進むにしても時間がかかる。俺は迷った末、そのまま近くの島に避難することに決めた。ところが台風の速度はこの時期にしては予想外に速く、あっと言う間に暴風圏に入ってしまった。
 帆は畳んでいたが、それでもヨットは大揺れに揺れている。夜が来るに従って、風や波が強くなり、今ではまるで木の葉のように揺れていて、船には強いと言っていた紗智子も、キャビンの中で吐いたりしているようである。
 最初、俺は、必死になってヨットの安全を保とうとしてデッキにいたが、大波を受けてキャビンに水が入って来るのを見ると、急いでキャビンに戻った。
 ところがその時には、エンジンや無線機が水を浴びて故障していた。エンジンが止まると、揺れはますます激しくなっていた。
                 ―続く―







2023/07/19 5:40:15|エッセイ
罪な泥棒
 宮崎市内に住むT子さんは、一人暮らしでリサイクル・ショップを経営していました。飲んでいるときに、彼女が言いました。
「わたし、泥棒に入られたの。二度も入られて、頭に来たわよ。」
 僕は、泥棒に入られて大変だったのだと思いました。すると彼女が続けました。
「古着なんかまた仕入れれば良いのだから盗られてもいいの。何が頭に来たって、泥棒は寝ているわたしには見向きもしないで枕を跨ぐようにして通り過ぎちゃったのよ。一人暮らしのこんないい女が寝ているのに、無視して通り過ぎるなんて冗談じゃないわよ。悔しいって、この上ないわ。」
 話しながら、真剣に怒っています。
 この泥棒は、商品である古着を盗んだうえに、彼女のプライドまで傷つけてしまったのです。本当に罪な泥棒です。







2023/07/18 3:57:14|エッセイ
別れ話も仕方がない
 KもYも、当時30代半ばで、高鍋の居酒屋「隼」の客でした。
 あるとき、Yが、奥さんと離婚の危機に瀕していると、涙ながらに僕に語りました。僕は、同情しながら黙って話を聞いていました。しばらく話をして、彼等は先に店を出て行きました。
 それから30分ほどして、僕も店を出ました。通りに出てみると、2人が次々と町を歩いている女の子達に声を掛けてナンパしているではありませんか。こんな調子では、奥さんと別れ話を持ち出されても仕方がありません。
 それ以降、何度か彼等に会いましたが、僕は彼等の話を真面目に聞かないことにしました。







2023/07/17 3:25:02|エッセイ
スピロス・ルイス
 1896年に、第1回の近代オリンピックがギリシャのアテネで行われました。このときのマラソン競技で優勝したのが、地元ギリシャの無名の青年スピロス・ルイスでした。
 彼は、貧しい水売りの青年でした。貧しさのために、恋人の親から結婚を反対され、「オリンピックで優勝したら娘をやる。」と無理難題を言われました。しかし、彼はその言葉に一念発起して練習に励み、その結果、見事にオリンピックで優勝したのです。
 純朴な彼は、その後も決して目立つようなことはありませんでしたが、晩年になって、ベルリン・オリンピックの際に、ヒトラーの宣伝に利用され、最後は必ずしも幸福ではありませんでした。
 軽い恋が横行している今の世の中、ルイスのような一途な恋ができたら、どんなに素晴らしいでしょう。
 







2023/07/16 4:24:54|エッセイ
恋心
 婦人自衛官で人妻のI2尉が、言いました。
「私には、おばあちゃんがいました。おばあちゃんは、数年前に亡くなりましたが、亡くなる1年ほど前に、一人のおじいさんが娘さんと一緒におばあちゃんを訪ねて来ました。わざわざ兵庫県から熊本県の人吉まで来たのだといいます。
 おばあちゃんは、まだ若くして夫を失いました。そのとき、一人の男の人が、まだ若かったおばあちゃんに、結婚を申し込みました。おばあちゃんは、子供のこともあったので、その申し出を断りました。
 それから50年後に、おばあちゃんを訪ねて来たのは、そのとき結婚を申し込んだ人だったのです。本当の恋なんて、そんなことを言うのかしら。」
 僕は、その話を聞いて深く感勤しました。軽い恋の横行する今の世の中、長い間自分の思いを貫いたおじいさんの恋に生きる姿に感勤したのです。
 恋心、幾つになっても失いたくないものです。