学校の怪談−06−
夏の夜明けは早い。4時を過ぎた頃には空が白み始める。東の空がそろそろ明るみ始めようとした頃、由美子が言った。 「先生、私、もう大丈夫です。帰ります。」 「えっ!まだ暗いよ。」 「いいえ、もう大丈夫です。母が帰って来る前に家に帰っておきたいんです。」 「そうか、じゃあ校門を開けてあげるよ。」 「いいえ、大丈夫です。ちゃんと出入りできるところを知っていますから。」 「そうか!」 二人でいるところを見られたくないこともあって、光山は宿直室で由美子を見送った。 完全に夜が明けて、由美子が何者か調べるために光山は職員室に入って生徒の名簿を開いてみた。しかし、そこに内藤由美子の名前はなかった。そして学校の周辺を調べてみたが、校門、裏門意外に人が出入りできるようなところはなく、校門にも裏門にも鍵がかかっていた。 不審に思った光山は他のクラスや学年の名簿も調べたが、そこにも内藤由美子の名前はなかった。いずれに名簿にもないということは、在校生ではないのである。他の学校の生徒が、いたずらのためにやって来たのかも知れないと思った。それにしても何のためにわざわざ他の学校にやって来てまで悪戯をするのか、理解できなかった。そこで昼間、体育館に行って誰か生徒に聞いてみようと思ったが、お盆である。この日、体育館には誰も来ていなかった。昼間、午前、午後と2度見回りをしたが、校内に異常はなかった。 また夜がやって来た。空はかなり厚い雲がかかっている。昨日のこともあって、ちょっと気味が悪かったが、校内の巡回に出掛けた。校庭からお墓のある裏庭の方に回るが、今日はやけに静かだった。静かなのは、これでまた気味の悪いものである。急ぎ足気味にそこを通過した。それから校舎内、体育館と回るがここでも何もない。ホッとして、宿直室に戻った。 宿直室のドアを開けて中を見たとき、飛び上がるほど驚いた。由美子が中にいるのである。今日は、ミニスカートにTーシャツ姿で部屋の真ん中に座っている。 「巡回、お疲れさまでした。コーヒーを入れておきました。」 由美子が、笑顔で言いながらコーヒーを差し出した。宿直室にあったインスタントのコーヒーを淹れたものだった。 ―続く― |