男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2023/08/11 13:26:44|小説「学校の怪談」
学校の怪談−06−
学校の怪談−06−

 夏の夜明けは早い。4時を過ぎた頃には空が白み始める。東の空がそろそろ明るみ始めようとした頃、由美子が言った。
「先生、私、もう大丈夫です。帰ります。」
「えっ!まだ暗いよ。」
「いいえ、もう大丈夫です。母が帰って来る前に家に帰っておきたいんです。」
「そうか、じゃあ校門を開けてあげるよ。」
「いいえ、大丈夫です。ちゃんと出入りできるところを知っていますから。」
「そうか!」
 二人でいるところを見られたくないこともあって、光山は宿直室で由美子を見送った。
 完全に夜が明けて、由美子が何者か調べるために光山は職員室に入って生徒の名簿を開いてみた。しかし、そこに内藤由美子の名前はなかった。そして学校の周辺を調べてみたが、校門、裏門意外に人が出入りできるようなところはなく、校門にも裏門にも鍵がかかっていた。
 不審に思った光山は他のクラスや学年の名簿も調べたが、そこにも内藤由美子の名前はなかった。いずれに名簿にもないということは、在校生ではないのである。他の学校の生徒が、いたずらのためにやって来たのかも知れないと思った。それにしても何のためにわざわざ他の学校にやって来てまで悪戯をするのか、理解できなかった。そこで昼間、体育館に行って誰か生徒に聞いてみようと思ったが、お盆である。この日、体育館には誰も来ていなかった。昼間、午前、午後と2度見回りをしたが、校内に異常はなかった。
 また夜がやって来た。空はかなり厚い雲がかかっている。昨日のこともあって、ちょっと気味が悪かったが、校内の巡回に出掛けた。校庭からお墓のある裏庭の方に回るが、今日はやけに静かだった。静かなのは、これでまた気味の悪いものである。急ぎ足気味にそこを通過した。それから校舎内、体育館と回るがここでも何もない。ホッとして、宿直室に戻った。
 宿直室のドアを開けて中を見たとき、飛び上がるほど驚いた。由美子が中にいるのである。今日は、ミニスカートにTーシャツ姿で部屋の真ん中に座っている。
「巡回、お疲れさまでした。コーヒーを入れておきました。」
由美子が、笑顔で言いながらコーヒーを差し出した。宿直室にあったインスタントのコーヒーを淹れたものだった。
         ―続く―







2023/08/10 14:29:34|小説「学校の怪談」
学校の怪談−05−
学校の怪談−05−

 由美子が、おかしそうに笑いながら言った。
「先生の後ろの宿直割り当て表に書いてありますわ。」
 そう言えば、光山の後ろの黒板の予定表の宿直欄に私の名前が並んでいるはずだった。
 彼女は、再び「先生、お疲れでしょうから、お休みなってください。」と言った。
「うん、じゃあ、そうさせて貰うかな。君も眠くなったら、そこの毛布を使えばいいよ。僕がいびきをかくかも知れないけど・・・。」
「はい、おやすみなさい。」
 光山は、近くに女の子がいると思うとなかなか眠れなかったが、それでもしばらくするとウトウトし始めた。
 その時である。
由美子が静かに立ち上がると、光山の方に近づいて行った。そして毛布をめくると、そっとジャージー姿のまま、身体を光山の隣に滑り込ませて来たのである。光山が驚いて目を覚ますと、「すみません、先生、寒いんです。」と言った。彼女の額に手を当てると、氷のように冷たかった。
「大変だ、どうすればいいんだろう。救急車を呼ぼうか?」
「いいえ、大丈夫です。私、平熱が低いんです。」
「低いと言っても、君、これは低いどころじゃないよ。」
「いいえ、大丈夫です。先生、温めてください。先生に温めて貰えれば、すぐに元気になります。」
そう言うと、由美子はひしと光山に抱きついた。
 光山は逃げるわけにもいかず、そのまま布団に横になっていた。しかし眠れない。独身の光山にとって、若い女の子がいるだけでも眠れないのに、同じ布団で抱き合っているのである。眠れないどころか、むしろ胸が高鳴ってどうしようもなかった。
 それと別に心配もあった。こんなところを誰かに見られたら、学校がクビになるだけでなく、教員免許さえ剥奪されかねない。親が苦労して大学にやってくれてやっと取得した教員免許を剥奪されるわけにはいかない。それにしても由美子はどんな生徒なのだろうと思った。見た目には不良には見えない。先程からの態度を見ていても、そうは思えなかった。
         ―続く―







2023/08/09 12:33:08|小説「学校の怪談」
学校の怪談−04−
学校の怪談−04−

 泊めてくれという女生徒の頼みに、光山は戸惑った。光山だって男である。女性に興味がないわけではない、というか強い関心はある。しかし女生徒と問題を起こしたとなると学校を辞めざるを得ないだけでなく、教師の免許だって剥奪されるだろう。そこまで考えてやっと言った。
「でも、僕は男だし、それはまずいよ。」
「お願いです。部屋の端っこでいいですから、置いてください。私、これから行くところなんかないのです。朝まで起きていますから、どうかここに置いてください。」
「そうだなあ、こんな時間に行くところなんかないよなあ。よし、僕も起きているから朝までここにいなさい。」
「ありがとうございます。」
そう言うと、女生徒は光山に抱きついて頬にキスをした。
「やめなさい!」
光山は驚いて彼女を離した。時計を見ると夜中の2時だった。
 二人とも、しばらく黙ったままでいたが、光山が彼女のクラスも名前も聞いていないことに気がついた。赴任して来たばかりではあったが、彼女ほどの生徒なら一度見れば顔くらいは覚えている筈である。しかし、今までに見たことのない顔だった。
「君は、どこのクラス?そして名前は?」
「はい、2年B組、瀬戸山先生のクラスの、内藤由美子です。」
「瀬戸山先生のクラスにいたかなあ。僕の物理の授業には出たことないよね。」
「はい、まだ先生には教わっていません。」
「そうか、家には兄弟はいるの?」
「いいえ、いません。一人です。」
「お父さんは、海外に行って長いの?」
「はい、もう2年になります。去年のお正月に一度帰って来たきりでそれ以来、会っていません。」
「そうか、それでどこに住んでいるの?」
「鍛治町です。ここからだと、ちょうど町の反対側になります。」
「ところで体育館にいたけど、部活は何をしているの?」
「はい、体操部です。今は、床の競技を練習しています。」
「そうか、体操部はまだ人数が少なかったよね。」
「はい、3人しかいません。」
「そうか・・・。」
「先生、どうぞ休んでください。私は明日も休みだから平気ですけど、先生は明日も宿直でしょう。」
「明日も宿直だって、どうして知っているの?」
 光山は、いぶかしんで聞いた。
         ―続く―







2023/08/08 13:35:49|小説「学校の怪談」
学校の怪談−03−
学校の怪談−03−

 体育館の中は真っ暗だったが、電源は職員室の近くで切ってあるから、戻るのは面倒である。女生徒と一緒に懐中電灯を持って更衣室の入り口まで行くことにした。光山は女生徒に懐中電灯を渡すと自分で取って来るように言い、自分は入り口で待っていた。
 更衣室からは、若い女性特有のちょっと汗臭い匂いが漂ってきた。そこで女生徒は更衣室の中に入り、ロッカーの中から財布を見つけるとすぐに帰って来た。
「お陰様でありました。これで安心して眠れます。ありがとうございました。」
女生徒は、ペコリとお辞儀をした。
 二人は、そのまま体育館の出口に出た。
 光山が、鍵をかけて振り向いたとき、もう女生徒はいなかった。すぐに校舎の陰の方に行ってしまったのかと思いながら歩いていて、ふと思った。この時間、校門は閉まっているはずである。扉は高いし、学校全体が高い塀で囲まれている。彼女は一体どこから来たのだろう。それを考えた途端、急に背中に寒気を覚えた。
 その後足早に巡回を済ませて宿直室に戻って来ると、何となく落ち着かないまま布団に潜り込んだ。
 何時であろう、真っ暗な中で「先生!先生!」と呼ぶ声がした。
「ウ〜ム、一体誰だ。こんな時間に。」
 光山は寝ぼけ眼で半身起きあがった。
「先程は、ありがとうございました。」
「ウッ、なんだ、君か。帰ったんじゃなかったのか。」
「ごめんなさい。私、嘘を言いました。」
「嘘って?」
「実は、母親と喧嘩をしていて家出して来たのです。帰れなくて、こうして学校に残っていました。」
「そうか、それはいけないね。よし、僕からお母さんに電話してあげよう。電話番号を教えてくれないか。」
「でも、母は家にいないと思います。」
「君が家出をしているというのに、家を空けるなんて、君のことを心配していないのか?お父さんは?」
「父は、海外に単身赴任中です。母には、男がいます。それが元で喧嘩になりました。今頃、その男と家で逢っている筈です。とてもあの家には帰れません。」
「家に帰れないって、どうする気なんだね。」
「お願いです。ここに泊めてください。明日の朝には帰りますから。」
 女の子は、光山にすがるようにして、そう言った。
         ―続く―







2023/08/07 12:50:59|小説「学校の怪談」
学校の怪談−02ー
学校の怪談−02−

 お盆がやって来た。学校は夏休みで、閑散としている。当直に就いた光山は、昼間は教案作りや、生徒の記録などを整理して時間をつぶした。届けて貰った弁当の夕食を終え、夜に入り、早速、巡回に回る。昼間は、部活関係の生徒達がやって来て賑やかだった校内が、夜になると途端に静かになっていた。懐中電灯を持って、教室、職員室、校庭、体育館を点検しながら回ると1時間弱かかる。最初、校庭から回った。運動場は、静かで異常なく校舎の裏手に回る。町から離れたこの学校の裏側は墓地になっていた。
 光山は学生時代に空手をしていたから、変な男が入って来たとしてもそれに対処する自信はあったが、幽霊とかお化けなどには滅法弱かった。なるべくお墓の方には懐中電灯の灯りを向けないようにして、足早に通り過ぎようとした。そのとき、墓地の中で「ギャー!」という、すさまじい声がした。光山は、吃驚して飛び上がると、一目散に校舎の陰まで駆けて行った。そこから身を隠すようにして墓の方を見た。
「ニャ〜オ!フ〜ッ!」
「ニャアオ〜!」
どうやら猫が喧嘩をしているようであった。
「なんだ、猫か、驚かすなよ。それにしても、驚いたな。」
光山は、独り言を言いながら巡回を続けた。校舎に入って教室を見回ってから、体育館に向かう。体育館の入り口、一人の女生徒がいるのに気がついた。
「君、ここで何をしているのだね?」
光山が懐中電灯を差し向けながら声を掛けると、生徒が振り向いた。色の白い、美人系の顔をしている。
「はい、体育館にちょっと忘れ物をしまして。」
「何だね?」
「はい、更衣室のところに財布を忘れたのです。家で探したけどなくて、ここに忘れたことに気がついたのです。」
「そうか、じゃあ、ちょっと待ってなさい。鍵を開けてあげるから。」
光山は、持っていた鍵で体育館のドアを開けた。
         ―続く―