夜の訪問者−19−
浴室から出て来た利之は、すぐにベッドに入った。幽子は、寝室の天井にいて、「うらめしや〜。」を繰り返す。しかし飲んでいた利之は、すぐにいびきをかいて寝てしまった。 幽子はしばらく「うらめしや〜。」を繰り返していたが、寝ている利之を見て、「ふん、馬鹿馬鹿しい。」と言って姿を消した。 そんな日を3日間続けたが、利之は一向に気にする様子がない。4日目には、光義のところにやって来た。 「首尾はどうだった。」と聞く光義に、幽子が言った。 「それが全然駄目なのよ。あいつ図太いから、あたしが恨めしいと言っても全然堪えないの。」 「そうか。それじゃあ、俺が脅かすかな。今度は、電話作戦だ。電話で強請ってやる。」 「そうね、いずれにしてもあいつを今のままにしておくことはできないわ。あたしだけじゃなくて、一緒に死んだお腹の子供のためにも復讐しなくちゃ。」 「そうだ、絶対に諦めないでやろうぜ。」 そう言うと、幽子が持って来た料理と酒で夕食を始めた。 翌日の昼、光義は会社にいる利之に電話をした。出て来た女の子に、黒岩部長を呼んでくれと言うと、すぐに利之が出た。 「もしもし、俺はこの間痛い目に遭った者だが、あの恨みも忘れていないぞ。それに優子殺しの件も知っている。警察に知らせられたくなかったら、金を寄越せ。いいな、少しでも変なことをしたらすぐに警察に駆け込むぞ。」 「いくら欲しいんだ。」 「そうだなあ、ひとまず1千万円かな。」 「なんだ、そのひとまずって言うのは。」 「それだけじゃ終らないってことさ。」 「いい加減にしないと、お前の命はないぞ。」 「そんな偉そうなことが言えるのか? 俺が死ぬのと、お前が刑務所に入るのとどっちが先か、よく考えて見ろ。」 「よし、わかった。金はどうすれば良いんだ。どこでどうやってお前に渡すんだ?」 「それは明日にでも指示するから、それまで待っていろ。」 そう言うと、光義は一方的に電話を切った。 −続く− |