夜の訪問者−24−
「いよいよ警察が動き始めたみたいだな。」 その夜やって来た幽子に、光義が言った。 「そうね、周囲から固めて利之のところに行くみたいね。」 「本物の警察が動き出したら、あいつも観念するだろうな。」 「そうね、問題は証拠が集まるかどうかだけど。」 「睡眠薬や、ロープを買った証拠が集まれば大丈夫だと思うわ。」 「その点は、俺達より警察の方がプロだからな。あいつが捕まれば、お前も恨みを晴らせて天国に行けるんだな。」 「そうなの、でも寂しいわ。」 「なんでだ。天国ってのは、何の苦しみもない幸せな世界なんだろう。」 「だって、あなたのところに来られなくなるんだもの。」 「よせよ、お前は天国で幸せに暮らした方が良いんだ。」 「でも、あなたって一人では生きて行けない人なんだもの。」 「俺は大丈夫さ。自分でも、これを機会に強くなったと思っているんだ。」 「あたしが必要じゃないって言うの?」 「い、いや、そうじゃなくてお前に幸せになって欲しいと思っているだけなんだ。」 「本当にそうかしら。幽霊のあたしを嫌いなんじゃない?」 「そんなことはないよ。毎晩、食べ物を持って来てくれたしとても感謝しているよ。」 「そう、それなら良いけど。」 幽子は、今ひとつ納得しない表情で、光義のグラスにビールを注いだ。 その後、何回か警察がやって来て、部屋の隅や押し入れの中などを徹底的に調べて行った。小さな埃や髪の毛なども拾ってビニール袋に入れていた。 新聞に利之が逮捕されたと報道されたのは、それから1カ月ほどしたときだった。「OLの自殺は上司の殺人」という見出しで、3面記事の一段に書かれていた。 −続く− |