 陸上の男子マラソンで、井上大仁(25)=MHPS=が2時間18分22秒で日本男子32年ぶりの金メダルに輝いた。2位のエルアバシ(バーレーン)とは同タイム。競技場のラスト数十メートルのスパート勝負で、何とか振り切って両手を広げてゴールに駆け込んだ。「めっちゃヒヤヒヤした。いくら仕掛けても離れなかった。ダッシュを繰り返して、“泥仕合”でしたね。今日は勝たないといけなかったので、最後振り絞れた」。自己記録2時間6分54秒は出場21人中トップ。V候補大本命のプライドを示した。井上大仁 マラソン男子32年ぶり金! 同タイム決着の大接戦制す!。 ◆ジャカルタ・アジア大会 第8日 (25日)スタート時は気温約26度。ここ数日に比べると比較的涼しかったとはいえ、熱帯の当地で開催される今大会は、20年東京五輪に向けた試金石の意味合いを持つ。井上陣営も給水対策を万全に臨んだ。給水所にはドリンクに加え、手のひらを冷やして体温上昇を防ぐための保冷剤、30キロ過ぎからは帽子も用意して、いつでもかぶれるようにしておいた。ユニホームの前後面にも、ひし形の穴をいくつも開けて、風通りがよくなるように工夫。「(収穫は)準備から、何もかも。足りないところを探してできたことは、今後のプラスにしたい。概ね100%できた」と井上は胸を張った。 東京五輪へ、暑熱下での適性を示せたことは大きな一歩。次は、五輪代表選考のMGC(19年秋)で結果を出すことが求められる。暑熱下とはいえ、優勝タイムは自己記録よりも11分半ほど遅い。また、強豪のアフリカ勢や、後半に勝負強い欧米勢も不在だ。所属の黒木純監督(47)は「ラスト勝負だけだったので、今回の展開からすれば、そんなに(視界が)広がった感じはしない。前半がスローペースでリズム的にも乗らなかった。もっと思い切ってやりたい」。本来は37キロ過ぎにスパートし、勝負を決めるのがレースプランだった。次戦では自ら引っ張り、仕掛け、独走態勢に持ち込む強さも発揮したいところだ。 17年ロンドン世界陸上は、日本勢3人のうち最下位の26位に終わった。「緊張していることを受け入れたり、置かれている状況と向き合うのも平常心だと思った。(今大会で)できないと、今後はない」と反省と覚悟を持って臨んだ今大会で、86年ソウル大会の中山竹通氏以来の金メダルで結果を出した。国内には日本記録保持者の設楽悠太(ホンダ)、米国を拠点に力をつける大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)らライバルもいる。国際舞台で得た自信を糧に、成長を続ける。 |