男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
2024/12/20 4:45:51|エッセイ
リリアンの爪の垢
 居酒屋「かぼちゃ」のママさんの友達に、リリアンがいました。ブラジル人で、色の白い鼻筋の通ったとても美人です。日本の漁師さんと結婚して、高鍋の町に住んでいます。漁で留守がちな家をよく守り、舅や姑によく仕え、よく働くそうです。夫が漁から疲れて帰って来たときには、7時間でも8時間でもマッサージをするそうで、海で働く夫にもしものことがあっても、7年間は婚家にとどまる覚悟だとも言います。今の日本女性に失われたものが、ブラジルの女性に残っていたと、ママさんが感心していました。
 一方、我が飼い主さんは、よく言っていました。
「おなじ亭主が死ぬんならさぁ、公務がいいね。保険金の上に、賠償金まで付くでしょう。基地の外で死んだら、トラックに乗っけて基地まで運んで塀の中に放り込めばいいんだ。あっはっは〜。」
亭主のいる目の前で平気で言います。
 僕は、ママさんに「リリアンの爪の垢を貰って来てくれ。」と頼みました。密かに、お茶かコーヒーに混ぜて、飼い主さんに飲ませるのです。薄めたのでは効かないだろうから、濃くして飲ませるのですが、多分、体に合わなくて、副作用で下痢を起こして、ほとんど効果はないかも知れません。しかし、何もしないで塀の中に投げ込まれるのを待っているよりは良いと思いました。
 しかし、結局爪の垢は貰えず、今日に至っています。







2024/12/19 7:21:09|エッセイ
客は人に集まる
 居酒屋「かぼちゃ」のママさんは、とても気風の良い人でした。話していても、お客さんをポンポンとやり込めています。
 ママさんは、若い頃、旦那さんが宮崎市内で経営するキャバレーのママとして店に出ていました。あるとき、拳銃を持った男が警察に追われて逃げて来て、ママさんに「預かってくれ。」と言って拳銃を渡しました。ママさんは、これをスカートの中に隠して、その男を逃がしました。その後、その男は「姉御、姉御」と言って慕って来たと言います。
 そんなママさんが体調を崩し、店を休むようになりました。店にはチイママがいるのですが、客は激減しました。料理は美味しいのですが、会話が面白くないのです。
 客は、店ではなく、人に集まって来るのですね。







2024/12/18 5:57:34|エッセイ
意見の一致
 高鍋町の居酒屋「かぼちゃ」のママさんは、若い頃、夫の浮気が原因で離婚しました。相手の女を見たとき、「亭主は、こんな女と浮気をしていたのか」とがく然として、離婚を決意したと言います。
 あるとき、飼い主さんを「かぼちゃ」に連れて行きました。そのとき、ママさんと飼い主さんの意見が、妙に一致しました。
「亭主が浮気をするのなら、自分よりいい女として欲しい」と言うのです。変な女と浮気をされたのでは、プライドが許さないのでしょう。彼女達は、自分よりいい女が相手なら亭主が浮気しても大丈夫なのです。
 ということで、僕も頑張りたいと思います。飼い主さんより悪い女性は、世の中にそんなにはいないでしょうからチャンスさえあればと思いました。







2024/12/17 5:34:32|エッセイ
飲み代が安いわけ
 居酒屋「かぼちゃ」では、カウンターの大皿に野菜や魚の煮つけ、芋の煮っころがしなどが並べてあって、僕は適当にそれをとって肴にしながら焼酎のお湯割りをチビリチビリと飲んでいました。月に1万円しか払っていないので、ビールなどは高くて気が引けるからです。
 ある日見ると、僕の前に立派な刺身が置かれていたので聞きました。
「どうしたの、こんな立派なものを。随分、高いだろうに。」
するとママさんが言いました。
「後ろの座敷を見な。今日は、10人ほどの宴会があって、その中から、みんな平等に一切れずつ取って来て盛ったらこうなったんだよ。」
見ると、彼等の皿の刺身より、僕に出されたものの方が、数も多いし立派です。
 そう言えば、刺身一人前が何切れとは書いてありません。煮物や汁物などは、こうして量を調整していたのです。僕が月に1万円で飲めるのには、このような理由があったのです。







2024/12/16 5:20:23|エッセイ
そんなことはできません!
 単身赴任して最初に連れて行かれた高鍋町の居酒屋「かぼちゃ」のママさんが、威勢よく言いました。
「半年1万円で良いから、うちに飲みに来い。」
僕は、言いました。
「俺だって面子がある。半年1万円なんてことはできないから、月1万円にしてくれ。」
これで契約成立です。
 翌日から、僕は毎日のようにバスで「かぼちゃ」に通いました。毎日のことなので、回数券を買いましたが、けっこうお金がかかります。そこで会計隊長に言いました。
「おい、俺は自衛隊への通勤手当はいらないから、高鍋の町までの通勤手当を支給してくれないか。」
 彼は、断固として言いました。
「そんなことはできません!」