僕は、寝言をいう癖があって、特に日本酒を飲んだときがひどいようです。若い頃は、真面目な寝言が多く、号令をかけたり、仕事のことなどを言っていたようですが、これは飼い主さんの証言によるもので、一人暮らしのときは確認のしようがありません。 ある日、テレビのコマーシャルに釣られたのと、いつも飲み歩いている穴埋めにと、飼い主さんに指輪を買いました。そのことで夫婦の関係は、極めてうまく行っていました。 基地の盆踊り大会があった日のことです。この日、飼い主さんが単身赴任先の宮崎にやって来ました。僕は、お客さんを相手に午後からかなり飲んでいたし、飼い主さんもご機嫌でした。僕は、飼い主さんを連れて町に飲みに出掛け、二次会、三次会と飲み歩き、家に帰って来たときには、ヘベレケでした。それでも、その晩は静かに寝ました。 翌朝のことである。目が覚めると、飼い主さんが怒っています。僕は、なぜ怒っているのか訳がわかりません。聞いてみると、床に入ったらすぐに飼い主さんを捕まえて、「君、今日は泊まって行かないか。」と、しつこく口説いたというのです。「あんたは、いつもあんなことを言っているのか」と、取りつく島もありません。 お金と努力を注ぎ込んで作り上げた信頼関係も、たった一言の寝言で脆くも崩れ去ったのです。 信頼は、築くには長い歳月と努力が必要ですが、崩れるのは一瞬なのです。 |