赤い糸・白い糸−20−
神様達が話をしていたとき、一人の神様が「ひゃ〜、こういうのはどうすれば良いんだ。」と頓狂な声をあげた。 「どうしました。住吉さん。」 「どうもこうもありませんや。これって赤なの、それとも白なの?」 手に1本の糸を持って考え込んでいる。寄り集まった神様達は、みんな首をかしげていた。見ると手にあったのは、ピンクの糸だった。 「とにかく監督に聞いてみよう。」 一人が現場監督の方に走って行って連れて来た。 「あっ、これは性同一性障害というんだ。身体は男なのに、心は女なんだよ。」 呼ばれた監督はその糸を見ながら、外の神様に説明を始めた。 「昔は変態のように言われていたけど、今ではそうではないとされている。妊娠初期の頃、お腹の赤ちゃんは最初はみんな女の脳をしているのだが、普通の男の子は脳にホルモンシャワーを浴びて男の脳に変化する。でも何かの拍子でこのホルモンのシャワーが出なかったり、不十分だったりすると脳だけ女のままで取り残されてしまうのだ。」 「で、我々はどうすりゃあよいのですか。」 「人間界でもかなり検討していたようだけど、最近になって女として扱って良いことになったんだ。ただ難しいのは相手の糸を見つけることだよ。身体は男だから、子供を産むことはできないしねえ。」 「とにかく良い相手が見つかるまでそのままにしておくしかなさそうだね。」 そう言うと、監督は監視所に戻って行った。 その頃地上では・・・・・
ここは世田谷の病院である。一人の青年が精神科医の診断を受けていた。 「どうしました?」 白衣の医者が聞いた。 「実は・・・・・」 青年は口ごもった。 「いいんだよ。慌てないでゆっくり話してごらん、僕は医者だから大丈夫だよ。」 「はい、実は、僕、女性に興味が湧きません。それよりも男の方に・・・・・」 「ふ〜ん、それはいつ頃から?」 「小学校の終り頃から、自分が変だということに気がつきました。外の男の子が女の子に興味を持つのに僕だけが少しも興味が湧かないのです。それよりも男の子の方に興味が行ってしまって。」 「それから?」 「高校時代になると、益々それが強くなりました。体操の時間など、男の子の半裸の姿などを見ると、やたらと胸がときめくのです。」 「女の子には興味がわかないのだね。」 「はい、そうです。」 それからしばらく問診をしていたが、医者はカルテに”性同一性障害”と書き込んで言った。 「君は、姿は男だけども、心は女です。多分、これを治すことはできないと思います。これからどう生きて行くかは自分で決める必要があります。相談があったら、またいつでも来てください。」 青年は、悩んだ。身体が男で心が女、自分はこれから男として生きて行けば良いのか、女として生きて行けば良いのか。 こんなことは両親にも言えない。言えば、父親は怒鳴るだろうし、母親は気も狂わんばかりになるだろう。勿論、会社にも相談する相手はいない。理解してくれる者がいるとは思えなかった。 −続く− |