映画俳優などが、お金を出して「釣りはいらん」と言うのを聞くと実に恰好良く見え、前から一度言ってみたいと思っていました。 宮崎は、物価の安いところです。全国を100としたときの、宮崎の物価指数は当時93くらいで、野菜などの農産物を入れるともっと低いでしょう。全般的に物価が安いのですが、特に安いのが家と、酒とゴルフです。単身赴任の僕にとって、酒とゴルフが安いのは、大変ありがたいことでした。なにしろ、東京の半分から、3分の1の値段なので、実質は小遣いが2〜3倍あるのと同じです。 居酒屋「隼」に行ったときです。 僕は、一人で飲んでいましたが、その日は女性客もいなかったので早々と帰ることにして、勘定を聞きました。 「艦長、いくらだ。」 「ヘイッ、300円です。」 僕は、高倉健にでもなったような気分になって、おもむろに5百円玉をカウンターに放り出して言いました。 「釣りは、いらん!」 ところが、僕が店を出ると、奥さんの順ちゃんがお釣りの2百円を持って追い掛けて来ました。どうやら、2百円で恩に着せられてはたまらないと思ったようです。 いずれにせよ、僕が行く店はそのくらい安いところでした。そんな宮崎での生活が、今本当に懐かしいです。 |