男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
赤い糸・白い糸−25−
赤い糸・白い糸−25−

 その頃、神様達は・・・・・
「再婚して、相手にこんな女の子がいたのじゃ、うまく行くはずがないよ。結ぶのをやめた方がよいかね。」
「そうですねえ、過去にも解け易いのだから、今からうまく行くかどうかは怪しいですね。」
「でも、あなたまだノルマに足りないんじゃないですか。今日まで、いくつ糸を結びました?」
「そういえば、まだ20組ほどしか結んでいません。」
「そりゃあ、足りませんよ。多い人は100組くらい結んでいる人もいると言いますよ。贅沢を言っている場合じゃないんじゃないですか。」
「そうですね。結んじゃいましょう。とにかく数をこなさないと話になりませんからねえ。」
 その頃、地上では・・・・・
 思案の末、典子は結婚を承諾した。
圭介は、すぐに娘の久美子に典子を紹介した。案の定、久美子は拒否反応を示した。しかし典子は根気強く久美子の懐柔を図った。家に行く度に、手土産を持って行ったし、反抗的な久美子に対して笑顔を絶やさなかった。
 何より効果があったのは、久美子の話題に合わせたことである。圭介では女同士の話などはできないが、歌手のこと、ファッションのことなど、若い久美子の興味に合わせるように努力した。半年後には、まだ結婚もしていないのに、典子のことをお母さんと呼ぶようになった。
 そして更に半年後、二人は入籍した。そのとき、典子も友達を得たようで、本当に嬉しそうだった。
 その頃、神様達は・・・・・
「良かった、何とかうまく行きそうだね。」
「うん、今度も失敗したら始末書物だからね。」
「そうなんだ、ある女優の担当なんか、何度も離婚を繰り返すので始末書を何枚も書かされているのがいたよ。」
「やっぱり結び目の上から、更に外の糸で抑えるように結び付けておいたのが良かったんだろうね。」
「他の神様も、こうして結び目を抑えるように二重に結べば良いのに。」
「でもそんな面倒なことをしていたら、とてもノルマ達成などできないよ。」
「そうだねえ、それにしても化繊の糸は強いけど、解けやすくて困るよ。」
「全くだ。」
 二人の神様は、疲れたのかそそくさと休憩室に歩いて行った。
             −続く−







赤い糸・白い糸−24−
赤い糸・白い糸−24−

 さっきから、一人の神様が不器用な手つきで糸を結ぶのに苦労をしていた。
「う〜ん、最近は色々な素材が出来て丈夫なのはいいけど、滑りやすくて困るねえ。」
「そうですね、昔は、糸そのものはそんなに丈夫じゃなかったけど、結び目はしっかりしていました。」
「そうだよ、ビニールやナイロンなんてのが出来てからおかしくなったんだよ。これなんかも大丈夫だろうか?」
 神様は手に持っている赤い糸を隣の神様に見せながら、不器用な手つきで結んだ。
 その頃、地上では・・・・・

 高徳典子は、芯の強い性格で子供の頃から負けず嫌いだった。高校を卒業すると市内の会社に勤めたが、上司との不倫が公になり退社せざるを得ない状況になった。地元にも居辛くなり、東京の友達を頼って上京した。そこで会社の同僚の政男と1年の同棲の末に結婚した。しかし仲が良かったのは最初の2年だけだった。政男の女関係が発覚したのである。政男は土下座して謝ったが、典子は許そうとしなかった。半年後に、二人は離婚した。
 次の結婚は、それから1年後である。相手は会社の取引先の男で優作といい、彼も再婚だった。優作は、おとなしい性格で、典子に対しても優しかった。しかし結婚2年で夫は自らの命を絶った。会社の業績が上がらず、リストラを言い渡されていたのを典子に言うことができず、そのことを苦に鉄道自殺を図ったのであった。
 3度目の結婚は、年下の男だった。スナックで一人で飲んでいるときに声を掛けられ、そのまま付き合うようになって、2ヵ月後には同棲していた。最初は優しかった男も、だんだん酒に溺れるようになり、酔ったときには典子に暴力を振るった。気の強い典子は、すぐに離婚届に判を押させ、翌日には役場に行って提出した。
 神様が悩んでいたのは4度目の結婚をしようとしていたときのことである。
 今度の男は、職場の上司の岡村圭介で、数年前に奥さんを亡くしていた。圭介45歳、典子は33歳になっていた。
 ある日、圭介が典子に言った。
「高徳さん、明日の会議資料を作らなければならないのですが、今日ちょっと残業して手伝ってくれませんか。」
その言葉に典子は「はい。」と返事をした。
資料は3時間ほどで出来上がり、終った後で、圭介は典子を食事に誘った。
これが、二人が付き合い始めたきっかけだった。付き合うようになって半年後、圭介は、食事に誘った典子にプロポーズをした。
「典子さん、結婚して欲しいんだ。自分に18歳になる女の子がいるんで気が引けるのですが・・・・・。」
 典子は、プロポーズの予感は感じていたのだが、しばらく考えていた。過去の結婚の失敗のこともあるし、圭介は良い人であるが、娘とうまくやって行けるかどうかの自信がなかったのである。
            −続く−







赤い糸・白い糸−23−
赤い糸・白い糸−23−

 武雄は、上司に事情を話して、日本に戻してくれるよう頼んだ。中国での事業が成功すれば将来が約束されるくらいの大きな仕事だったが、それを諦めたのである。無論、そのことはいずみには話さず、ただこっちに戻って来ることになったとだけ伝えた。
 2回目の治療が始まった。抗がん剤で赤血球を殺し、がん細胞が死んだ時点で新しい骨髄を移植するのである。抗がん剤治療をしている間は無菌状態にしなければならないため、面会もできなかった。武雄は祈るような気持ちで日々を過ごした。
 手厚い治療と、武雄の祈りが通じたのか、2回目の治療は成功した。あとは再発しないことを祈るだけである。面会が許されるようになると、毎日のように病院に行った。いずみは相変わらず頭髪が抜け落ちた状態であったが、最近は慣れたのであろう、武雄が来たときには笑顔が見られるようになっていた。そんないずみの様子に、武雄は笑顔で応えていた。
 その後、ひと月ごとに検査が行われたが、再発の兆候は見られなかった。2回目の治療が終わってから半年後に武雄はいずみに正式にプロポーズをした。いずみは、自分の病気のこともあって返事を躊躇っていたが、強引な武雄の前に静かに頷いた。
 雲の上では・・・・・

「う〜ん、人間に教えられることもあるんだねえ。」
「そうだね、どうしようかと迷っていたら、糸の方で勝手に結ばれちゃったよ。」
「こうして苦しみの末に結婚したんだから、あの二人は固い絆で結ばれるのだろうね。」
「うん、きっとそう思うよ。」
 神様達は、しばらく感動しているようだった。
             −続く−







赤い糸・白い糸−22−
赤い糸・白い糸−22−

 10月も下旬になった。連日の忙しさで、神様達の間にも疲労感が漂うようになっていた。その中で、一人の神様が1本の糸を持って思案顔をしていた。
「どうしました、新潟の神様。」
「いえね、この今にも切れそうな細い糸、米倉いずみ26歳ってあるけど、危なっかしくて、結んで良いのやら悪いのやら、迷っているのです。」
「可哀想に、病気なんだね。」
「こういうのって、どうします。結婚しても幸せになれるのかどうか・・・・・」
「さあねえ?」
 神様達は、みんなで首を傾げて考え込んでいた。
 その頃、地上では・・・・・
 いずみは、小学校の頃から運動をよくする元気な女の子だった。高校時代は、剣道部にいてインターハイの選手として参加するなど、とても元気だった。
 そんないずみに恋人ができたのは、大学に通っているときのことであった。やはり剣道を続けていたのだが、同じ剣道部の先輩の宮口武雄と付き合うようになった。武雄は都内の商事会社に勤め、3年後にはいずみも卒業して、都内の電気関係の会社に就職した。交際は続き、二人ともいずれは結婚することを意識していた。
 1年ほど前のこと、いずみは突然身体に不調を覚えた。疲れが激しく、ひどい肩凝りを感じるようになったのである。しばらく我慢していたのだが、だんだんひどくなるので病院に行った。診断の結果は悪性リンパ腫だった。血液の病気である。すぐに入院することになった。
 病気はかなり進んでおり、抗がん剤と骨髄移植の治療がなされた。抗がん剤の投与により、いずみの髪の毛は抜け落ちた。鏡を見たいずみは、絶望の淵に立たされた。
 このとき、武雄は中国に長期の出張をしていた。武雄は、いずみの病気のことを彼女の母親からの手紙で知った。いずみは海外で忙しい仕事に従事している武雄に心配させまいと知らせなかったのである。
 いずみの病気を知った武雄は、急遽休暇をとって帰国し、そのまま病院に急いだ。ちょうどそのとき、1回目の治療が終ったときであった。抗がん剤の治療によって、いずみの顔色は悪く、頭髪は抜け落ちて頭に包帯を巻いていた。いずみもそんな自分を見られたくなくて、武雄の前でもおどおどしていた。
 仕事の忙しい武雄は、翌々日には中国に帰って行った。
 1回目の治療は失敗した。一旦は退院したのだが、半年後の検査のときに再発が確認されたのである。再度、治療が行われることになった。治療には骨髄移植が必要なのであるが、適合するのを探すのが難しい。血液の型と違って、いろいろな型があるため極めて少ないのである。中には数百人に一人とか数千人に一人といった割合でしかない。
 いずみは、気弱になっていた。その知らせを受けた武雄は再度帰国した。帰国した武雄は、適合する骨髄を持つ人を探すため、会社中を歩き回って骨髄の検査をしてくれるように頼んだ。多くの人が協力してくれて、やっと似た型を持つ人を見つけることができた。
 2回目の治療が始まる前、武雄はいずみの病室を訪れた。
「頑張るんだよ。僕がついている。病気が治ったら結婚しようね。」
「わたし、もう駄目かも知れない。一度目の治療だって失敗しているでしょう。そのときは武雄さん、わたしの分まで幸せになってくださいね。」
「バカなことを言うんじゃない。まずは気持ちをしっかりしなければ駄目だ。」
 そうは言ったものの、武雄も医者が言った「完治する確率は30%ほどだ。」という言葉が脳裏を離れなかった。
             −続く−







赤い糸・白い糸−21−
赤い糸・白い糸−21−

 ある日の夕方、仕事が終った青年は新宿に行き、一軒のバーの裏口のドアをノックした。中から女が出て来た。
「何か用?」
「ええ、僕、ここで働きたいのですが・・・」
「あらっ、いい男ね。でも、あなたも男でいることができないのね。」
「はい。」
「ちょっと待って。マスターに聞いてみるわ。」
 青年は更衣室の小さな部屋に通され、椅子に座らせられた。しばらく待っていると、女装はしているが腕には濃いすね毛の生えている男がやって来た。
「あらっ、あなたなの。なかなか良い男じゃないの。ここで働きたいって本当?」
「はい。」
「この道も華やかそうに見えるけど、芸も覚えなくちゃならないし、なかなか大変なのよ。大丈夫?」
「はい、何でもやります。是非、お願いしたのですが。」
「いいわ、では明日からいらっしゃい。今日は、店の様子を見て行きなさいよ。」
すぐに青年が働くことに決まった。
 青年はダンスのレッスンを受けたり、接客の勉強に励んだ。半年もすると、すっかり店の雰囲気に慣れた。
 こういう店で働く男(?)達には2通りの人間がいた。ひとつは女より女らしい人間であり、もうひとつはいかにも男が女装しているだけと感じの人間だった。女になった方にも苦労はある。力瘤がついてはいけないから、ビールのケースなど重い荷物は持てない。贅肉がついてはいけないから肉も食べることを控えなければならない。またそうでない男たちにも苦労がある。見掛けが良くないのだから、会話や話術で客の心を引き止めなければならない。一見華やかな中にも苦労があると言ったマスターの言葉は本当だったのである。
 そんな中で、青年は女になることに徹していた。
 青年が店で働くようになって半年ほどした頃からひとりの男が店に通うようになった。そして来る度に青年を指名した。男が閉店後青年を誘ったのは、通うようになって1と月ほどしたときだった。男はホテルに行き、青年は後ろから着いて行った。
 男が言った。
「わたし、見かけは男だけど本当は女なのよ。」
「そう・・・・・」
「子供の頃からお転婆だって言われたけど、小学校の頃から自分じゃ男だと思っていたわ。」
「そうか、僕と逆なんだね。」
「辛いわよね。」
「うん、わかる。」
「男にちっとも興味が湧かないのよ。その代わり、女の子を見ると胸がときめくの。」
 二人はベッドを共にした。それは見るからに普通の男と女のセックスだった。しかし二人の心の中は、全く逆だったのである。男は自分が女であると信じ、女は自分が男であると信じていた。
 その1週間後に男は家を出て、女と同棲を始めた。そして二人が籍を入れたのは1年後だった。結婚式もなく、店の数人だけを招いての簡単なパーティだけだったが、みんなが心から二人の結婚を祝福した。
 その頃、雲の上では・・・・・

「住吉さん、よくもピンクの糸同士を見付けたものだねえ。」
「世の中には、探せばあるものだね。」
「でもあのカップル、子供はできるのだろうか?」
「さあねえ・・・・・、でも心と逆でも、身体は男と女だから大丈夫なんじゃない?」
「そうかねえ。さて、我々も仕事に戻るか。」
               −続く−