春の行方−49−
暮も押し迫って、明日から年末の休みに入る日、年末最後の寮の仲間の飲み会があった。大室や久恵、陽子達はスキーの話に夢中である。最初は、光太郎のことを意識していたようであったが陽子が言い出して、光太郎が笑顔で聞いているのを知り、みんな遠慮が無くなったようである。 翌日、光太郎は朝早く新幹線に乗った。広島に行けば、佳津枝が待っている。そこで佳津枝と落ち合い、一夜を過ごして家に帰る予定である。寮の仲間は今頃スキーに向かっているだろうが、光太郎は気にならなかった。去年まで、スキーに行こうかどうかで悩んでいたことが、無駄な悩みだったような気さえしていた。 広島に着くと、佳津枝が待っていてくれた。佳津枝は、光太郎が元気を取り戻したことを、心から喜んでくれた。マンションに着くと、駅で買ってきた土産を渡しながら、抱き寄せてキスをした。光太郎は、本当に佳津枝を愛しいと思った。今までに、何回も身体を交えていたが、それ以上に身近な存在に感じていた。 人の心は通じる。ましてや幼い頃から親しみ、感の良い佳津枝であるから、そうした光太郎の気持ちはすぐに察していた。佳津枝もまた光太郎をしっかりと抱いてキスに応じていた。 夕食は水炊きだったが、その間も光太郎も佳津枝も、よく食べ、よくお喋りをした。光太郎が東京に出て以来、これほどまでに一体感を持つのは初めてだった。それはそのまま佳津枝に伝わり、その夜二人は深く愛し合った。 光太郎は、結婚するなら佳津枝しかいないと思っていた。 しかし、結婚となると、解決しなければならない問題があった。それぞれ東京と広島に仕事を持っていて、どっちかが仕事を辞めなければならない。そのことが、光太郎のプロポーズの障害になっていた。 翌日、二人は佳津枝の車で実家に向かった。 暮は大掃除、餅つきなどで忙しい。昔ながらの家なので、それなりにすることは多い。佳津枝も忙しい筈である。結局、元旦の朝に初詣に行こうという約束だけして、別れた。 正月、朝の食事を終えると、佳津枝が迎えに来た。二人は、例年通り神社にお参りした。参拝のとき、光太郎は例年になく長い時間祈っていた。 車に戻ったとき、佳津枝が聞いた。 「光太郎君、今年は何をお祈りしたの。随分、長くお祈りしていたみたいだけど。」 「うん、ちょっとね。佳津枝は何を祈っていたの?」 「光太郎君が、元気になったお礼よ。」 「そうか、ありがとう。僕は、佳津枝にお礼を言わなくちゃいけないね。スキーで怪我をして以来、随分心配をかけたし、世話になったからね。」 「あらっ、それはいいのよ。光太郎君も、ちゃんと神様にお礼を言った?」 「うん、でも、それよりもっと大事なお願いをしたんだ。」 「あらっ、何?」 「うん、佳津枝と結婚できますようにって、お祈りしたんだよ。神様は、願いを聞いてくれるだろうか?」 佳津枝は、黙ったまま光太郎の目を見詰めていた。 −続く− |