男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
赤い糸・白い糸−30−
赤い糸・白い糸−30−

 「熱田さん、どうしました?」
首を傾げている名古屋の熱田神宮から来た神様に、諏訪大社から来た神様が聞いた。
「いや〜、諏訪さん。このタグには吉沢瞳17歳 高校生とあるけど、どんなものでしょうね。まだ早くないでしょうか。」
「で、相手は?」
「それなんですよ。相手は同じ学校の教師です。」
「う〜ん、どんなものですかねえ。」
 二人は、腕を組んで考え込んだ。
 その頃、地上では・・・・・
 吉沢瞳は高校3年生、年が明ければ大学受験である。
 しかし3年になって、急に成績が落ち始めた。原因は英語教師の杉村博之に片思いの恋をしてしまったことにあった。勉強をしていても、すぐに頭は博之のことに行ってしまう。そんな想いを誰に打ち明けることもできずに悩んでいた。両親も担任も、瞳の成績が落ちたことを気にしていた。何度か話を聞くのだが、瞳は言葉を濁すだけである。友達も心配してくれたが、やはり打ち明けることはできなかった。
 しかし何とか自分の気持ちを博之にわかって欲しいと思った。それで勉強の合間に想いを訴えた手紙を書くのだが、渡す方法がない。何度か書いては、破って燃やした。
 あるとき、博之の帰りを待ち伏せして渡そうと思い帰り道で待っていたが、いざ博之が来ると言い出せずに挨拶をしただけで別れてしまった。そんなことが何度かあって、とうとう手紙を渡すことができた。
 しかし博之からの返事はなく、瞳の悩みは益々深まって行った。もう一度手紙を渡そうかと何度も書いたが、同じことを書いても仕方がなく、また焼き捨てることになった。
 瞳が睡眠薬を飲んだのは、夏休みが終って新学期が始まったときだった。眠れないと服用していた祖母の睡眠薬を一度に飲んでしまったのである。幸い祖母が薬がないことに気付いて騒ぎ、両親が瞳の勉強部屋に行って見付けたのである。救急車が呼ばれ、病院に運ばれた結果、命に別状はなかったが、数日間入院することになった。学校にも連絡が行き、翌日には担任も駆け付けて来た。
 博之が来たのは、その翌日だった。そのとき、両親はいなかった。博之は言った。
「大変だったね。原因は、僕なんだね。」
「・・・・・」
「君の気持ちは嬉しい。だけど君は受験を控えている。今は勉強に全てを注ぐべきときなんだ。しかも君と僕は生徒と教師という立場もあって敢えて返事をしなかったのだけど、それが君を苦しい立場に追い込んでしまったんだね。」
「・・・・・」
「退院したら、勉強をしてくれないか。そして大学に受かって、そのときまだ君の気持ちが変らなかったら改めて交際をしよう。どう、それでいいかな。」
「はい。」
瞳は頷きながら小さな声で返事をした。
 瞳は3日ほどで退院した。それから見違えるように元気になって勉強に励んだ。成績は、徐々に回復して、暮を迎える頃には、ほぼ元の成績に戻っていた。
 そして春には、志望校の短大に合格することができた。
 合格発表のあった翌日、博之がおめでとうと言いながら、瞳に一通の封筒を渡した。中には、「約束を忘れてはいない、もし君の気持ちが変らなければ、交際を始めたい。」という趣旨のことが書かれており、メールアドレスが添えてあった。
 その後2年間のメール交際の後、瞳の短大卒業に合わせて二人は結婚した。
          −続く−







赤い糸・白い糸−29−
赤い糸・白い糸−29−

 ゲームでは富士子は、チームの外の人達の足を引っ張る結果になった。そのことで、千代子は露骨に嫌な顔をした。
 ゲームの度に、千代子の富士子に対する嫌味や陰口が聞かれるようになった。千代子は、耕造が富士子に親切なのが気に入らないようであった。
 耕造は65歳、10年以上前に、奥さんを病気で亡くしていた。それ以来一人で暮らしていた。年金があるから働かなくても生活はできる。それでも何もしないのは体に良くないからと、僅かながら畑を耕していた。
千代子も、数年前に夫を亡くしていた。そしてゲートボールの場で耕造に会うのを楽しみにしていた。そこに突然富士子が現れたのである。しかも耕造は富士子の面倒ばかり見ている。これでは面白いはずがない。気の強い千代子は、それを露骨に態度や言葉に表していた。
 富士子は、おっとりとした性格である。千代子の嫌味な態度に気付かないではなかったが、敢えて気にしないようにしていた。それが余計に千代子の気持ちを刺激した。千代子は無視されていると思ったのである。
 そんな確執が爆発するときがきた。
「あんた、あんたの番だよ。何をモタモタしているのよ。早くしなよ!」
 順番が来てもボールを打とうとしない富士子に、千代子が噛み付いた。
「そこまで言うことはないじゃないか、あんた最近おかしいよ。」
 富士子の味方に立ったのは耕造である。これが千代子の怒りの火に油を注いだ。
「なによ、あんた!都会から来たからって、こんな女にチャラチャラして。今まで親切にしてやった恩も忘れてどういうつもりよ。」
千代子はスティックを投げつけると、その場を立ち去った。
 白けた雰囲気でゲームが続いたが、30分ほどするとみんなそそくさと帰って行った。
 耕造と富士子は、それをきっかけに急速に親しくなった。
「今日は、嫁が出掛けたから。」と言って、富士子は耕造を呼び、普段の日は耕造が富士子を家に呼んだ。富士子は、嫁と過ごす日々の辛さを訴え、耕造は一人暮らしの侘しさを訴えた。唯一の村人との付き合いはゲートボールであったが、それもこの間のことがあって以来何となく気まずい雰囲気である。
 富士子は、耕造の畑仕事を手伝うようになった。今まで町で暮らしていた富士子にとって、畑の作業は新鮮だった。茄子や胡瓜の花が咲いたと言っては喜び、実がなったと言っては喜んでいた。
 そんな日々の中で、いつしか二人の心はお互いに引き合うようになり、一緒に暮らしたいと思うようになっていた。そういう気持ちは一致していたが、しかし結婚しないで同居するには村の人々の手前問題があった。
 かといって、結婚するにも問題がある。お墓の問題である。耕造も富士子も、既に亡くなっている妻や夫がいた。ここで耕造と富士子が結婚したら、死んだときにそれぞれの子供達がお墓をどうするかで困るだろう。二人は話題には出さなかったが、同じようなことを考えていたのである。その間、千代子は二人のことが怪しいと村中に言いふらしていた。
 ある日、思い切って耕造が言った。
「うちも一人暮らしで、なかなか女手が足らんでのう。」
「わたしも、嫁と一緒だと住みづらいわ。」
「そんで、あんたが良けりゃあ、一緒に暮らしたらどうじゃろうと思うんじゃが。」
「いいですが、籍はどうしましょう。」
「籍は入れんと村で住みづろうなるで。そんで、死んだらそれぞれの昔の連れ合いと一緒に墓に入ると遺言しとくんじゃ。あんたが良けりゃあのう。」
「はい、わかりました。」
 二人が村の役場に行ったのは、それから1週間後のことだった。
 雲の上では、神様達が結んだ糸を感慨深そうに眺めていた。
           −続く−







赤い糸・白い糸−28−
赤い糸・白い糸−28−

 「あの〜、これ随分くたびれた糸で、しかもかなり前の結び目の後が残っているんだけど大丈夫だべか?」
 東北は青森から来た神様が不安そうに聞いた。
「だって、おめえはまだあまり業績が上がってないんだっぺ。ここに来てからいくつ結んだ?」
 茨城の水戸から来た神様が聞いた
「まだ25組だんべ。」
「そりゃあいかんな。早く結ばんと、故郷に帰るときみやげも買って行けなくなるっぺよ。」
「うんだ、じゃあ、やってみっか。そっちに似たようなのはないべか?」
「これが良かっぺ。同じようにくたびれているから。」
 青森から来た神様と水戸から来た神様は、不器用な手つきで糸を結び始めた。
 その頃、地上では・・・・・

 「1番ゲート、通過!」
 大きな声が聞こえている。おじいさんやおばあさん10人ほどが集まって、公園でゲートボールに興じている。そこに、ひとりの上品そうなおばあさんがやって来て、ゲーム待ちをしていたおじいさんに聞いた。
「あの〜、わしもゲートボールの仲間に入れて欲しいんじゃが。」
「どこから来なさったっぺ?」
「すぐ近くじゃが。亭主に死なれて、最近、息子夫婦のところに引き取られたんじゃが、嫁と一緒にいると堅苦しゅうて。そんで昼間はできるだけ外に出ていたいんじゃが。」
「ええけど、ゲートボールの経験はあるだか?」
「うんにゃ、ねえ。」
「道具はあるだか?」
「それもねえ。」
「それじゃあ、わしのを貸してやるべ。そんでちょっと練習してみるべ。」
 おじいさんは、自分のスティックをおばあさんに渡すと、持ち方から教え始めた。
「ちょっと打ってみねえ。」
 おばあさんは言われるままプラスチックのボールを打った。しかし力が弱かったため、2メートルも転がらずにボールが止まってしまった。
「だめだ、だめだ。もっと力を入れにゃあ。こうすんだ。」
おじいさんは、おばあさんの後ろに回ると、後ろから手を添えて教え始めた。
「耕介さ〜ん、終ったよ。今度は、あんたの番だべよ。」
ゲームが終って、仲間が教えているおじいさんに呼びかけた。しかし耕介おじいさんは言った。
「わしゃあ、ちょっとここでこの人に教えとるけん、誰か代わりにやっといてくれ。」
 結局、その日おじいさんはこの新入りのおばあさんに付きっ切りで基本から教えていた。そして夕方帰るときには、次の日に道具を買いに行くのを手伝う約束をしていた。
 翌日、おじいさんは農業用の軽トラックでおばあさんを迎えに行き、そのまま町のスポーツ用品店に行って、スティックや靴やジャージなどを買った。
 次の日から、おばあさんに対する特訓が始まった。公園のゲートボール場ではみんながゲームをしていてできないので、小学校の校庭に行く。おばあさんは決して運動神経も勘も良くなかったが、おじいさんは根気よく教えた。2週間もすると、何とかゲームに加わることができるようになった。
 おじいさんが、おばあさんをみんなに紹介した。
「こりゃあ、山本富士子さんだ。先月、八戸から息子さんのところに来なさった。まだゲートボールは始めたばかりだけんども、基本はわしが教えちょった。よろしう頼むだ。」
 みんなは手を叩いて迎えたが、その中で一人だけ不快そうな顔をして横を向いているおばあさんがいた。
 ゲームが始まった。本来は5人ずつのチームでやるのだが、ここでは人数の関係で変則ルールで6人である。
「山本さんは初めてだから、わしと同じ組に入れてやってくれねえか。」
 横内のおじいさんが言った。するとさっき横を向いていた千代子ばあさんが言った。
「そりゃあ、いけねえ。みんなルールどおりにやるべよ。例外を作ったらおかしゅうなる。」
 何人かがそれに同調したので、結局、いつもどおりにジャンケンで決めた組み合わせですることになり、富士子は耕造とは敵の関係、文句を言った千代子と組むことになった。
           −続く−







赤い糸・白い糸−27−
赤い糸・白い糸−27−

 雄太は、トイレに行ったとき、メモに自分のメール・アドレスに「良かったら、メールをください。」と書き添えて、みどりに渡した。みどりからメールが来たのは翌日だった。
「昨日はありがとう。お陰で楽しかったです。 みどり」と書かれていた。
 お盆の休みが終って、雄太は福岡に帰って行ったが、二人のメールの交換は続けられた。雄太はこまめにメールを送り、みどりも簡単ではあるが必ず返事を寄越した。
 メールを交換しているうちに、雄太はみどりの明るさに、みどりは雄太の知性の深さに惹かれるようになって行った。暮が近付いたある日、雄太はみどりにメールを送った。その最後にこう書いた。
「年末には帰郷します。そのとき会ってお話ししたいことがあります。  雄太」
 その年の仕事が終った日の夕方、雄太は福岡空港から飛行機に乗って宮崎に帰った。夕暮れの空港では、みどりが迎えに来ていた。空港からの車の中で雄太が言った。
「これから青島に寄ってみませんか。」
みどりは「はい。」と返事をして、車を南に向かって走らせた。
暮のしかも夜の青島には誰もいない。二人は車を降りると、青島に向かって歩いて行った。
 誰もいない海は、波音だけが聞こえている。二人は、シルエットになっている青島に、両脇が海になっている細い道を歩いて行った。島は暗く、遠くには漁火、空には満天の星が輝いていた。島に着くと、雄太が話を始めた。 
「僕は、小さい頃から背が低いことで悩んで来ました。あなたには理解できないでしょうけど、男で背が低いことは大きなコンプレックスなんだ。」
「あらっ、私も背が高いことで随分悩んだのよ。女の子って、小さい方が可愛いでしょう。こんなに背の高い女を好きになって結婚してくれる人がいるんだろうかって。」
「そんなことはないよ。背が高い方が格好が良いし、それにみどりさんはスポーツもできるし。」
「人間って、見掛けや背丈ではないわ。雄太さんだって、とても素敵だわ。」
「実は、お願いがあるんだ。」
「なに?」
「僕は、背が低いことで随分悩んだから、子供にはそんな思いをさせたくないんだ。背の高い女性と結婚して、背の高い子供を産んで欲しいと思っているんだ。」
 みどりは、次の言葉を聞くまで雄太が何を言っているのかわからなかった。
「僕と、結婚してくれないか。」
みどりは、少し間を置いて返事をした。
「はい、よろしくお願いします。」
 星明りに二人の影が重なった。彼らの頭上では、椰子の葉っぱが師走の風にサラサラと音を立てていた。
 雲の上で神様達は・・・・・
「何とか結べたよ。」
「太いのと長いの、ちょっと大変だったね。」
「逆に普通のよりしっかり結べたね。」
「夫婦は、お互いに自分にないものを持っている方が良いのかもしれないね。」            
           −続く−







赤い糸・白い糸−26−
赤い糸・白い糸−26−

 「おや、この糸はやけに細長いねえ。」
一人の神様が、赤い糸を手に持って不思議そうに眺めていた。
反対側では、白い糸を持った神様が言った。
「こっちのは、太くて短いんですよ。それとこれって、上手に結べますかねえ?」
「さあ、どうでしょうねえ。」
二人の神様は、糸を手に持ったまま首をかしげていた。
 その頃、地上では・・・・・

 望月雄太は、子供の頃から背が低いことが悩みの種だった。クラスの男の子では一番低かったし、かなりの女の子も雄太よりは背が高い。大人になっても150cmほどの身長だった。 一方、山内みどりは背が高く170cmを越えている。高校時代はバレー部に所属して、地区大会の選手に選ばれるなど、長身を生かして活躍していた。
 二人は、小中学校は別々であったが、同じ高校に進んだ。雄太は、勉強はよく出来た。背の低さが、彼を発奮させた。勉強が得意な雄太とスポーツが得意なみどりが話し合うようなことはなかった。
 高校を卒業すると、雄太は福岡の大学に行き、みどりは県内の短大に進んだ。それぞれ学校を卒業すると、雄太は福岡の会社に就職し、みどりは宮崎市内の会社に就職した。
 二人が再会したのは、30歳になったときのお盆の休みに行われた高校のクラス会である。幹事が、今日の席次はくじ引きで決めますと言って番号を書いた紙切れを出席者に渡した。雄太がその番号の席に座ったとき正面にいたのがみどりだった。最初は何を話して良いかわからず二人とも隣の者と喋っていたが、酒が入るに従って話をするようになった。
 宴会が終る頃には、すっかり打ち解けていた。何より二人を共感させたのは、二人とも独身だったことである。なぜか彼等のクラスの人間達は、結婚が早かった。早い者は3人の子供がいるなどと噂をしていたが、今日の出席者30人ほどの中でも独身は数人しかいない。そのことが二人を共通の立場に置いているように思えた。
 宴が終る頃、誰かが二次会に行こうと言い出して、数人の者が同調した。雄太は、みどりに一緒に二次会に行こうと目配せをした。雄太の合図に、みどりも頷いた。
 結局、独身の者ばかり7人が連れ立って駅前の居酒屋に入った。女性はみどりだけだった。それに気付いたみどりは最初躊躇っていたが、雄太がかなり強引に行こうと勧めたので結局同行することになった。7人の中で、みどりが一番背が高く、雄太が一番低かった。
 二次会での話題の中心は、紅一点のみどりだった。みんながみどりに話し掛けたし、みどりも楽しそうに話していた。その様子に、雄太は何となく落ち着かなかった。宴席では二人で盛り上がっていたのに、横取りされたような気分になっていた。
          −続く−