男と女

「男と女」について、本当にあったことをエッセイに、夢や希望を小説にしてみました。 そして趣味の花の写真なども載せています。 何でもありのブログですが、良かったら覗いて行ってください。
 
赤い糸・白い糸−35−
赤い糸・白い糸−35−

 二人は、ブログの投稿と併せて、メールの交換もするようになっていた。
 恭一から、「二人でオフ会をしたい。」というメールが届くようになったのは、メール交換を始めて1か月ほどしたときのことであった。淑子は、いくらブログやメールで親しくなったとはいえ、見ず知らずの男と二人きりで会うことに抵抗を感じていたので、しばらくそのことには触れないようにしていた。しかし恭一からの誘いのメールは続き、2週間ほどして淑子はとうとう会う約束をした。
 新宿の駅に行くと、恭一は先に来て待っていた。すぐに相手はわかった。それぞれの服装をお互いに連絡し合っていたからである。グレイのスーツに紺のネクタイをした恭一は髪を茶色に染めていた。背が高く、いかにもタレントか歌手を思わせるような甘い風貌である。
「初めまして・・・・・、と言ってよいのかな。椎名恭一です。」
「永瀬淑子です。」
 お互いに確認のような自己紹介をすると、すぐに恭一が行きましょうと行って歌舞伎町の方に向かって行った。淑子は、どこに連れて行かれるのだろうと思いながら後から着いて行った。恭一が入ったのは、狭い路地を入ったところの小さなバーだった。カウンターの中には同年輩の男が一人いて、他の客はいなかった。
「マスター、彼女にカクテルを作ってやってよ。」
そうオーダーしてから、淑子に言った。
「淑子さん、中沢さんがここのマスターなんだ。彼の作るカクテルはなかなかですよ。それにオリジナル作品もたくさんあるのです。そうだ、是非、ネオンの花がいいかな。淑子さんもきっと気に入ると思いますよ。テキーラをベースにしているけど、いろいろなリキュールやジュースが入っているからとても飲み易いです。その他にもいろいろありますから、順番に飲んでみてください。」
 そう言いながら、マスターに向かって目配せをしているのに、淑子は気が付かなかった。
 いろいろな種類のカクテルが出された。みんな口当たりの良いもので美味しかった。淑子は、お酒は比較的強い方であったが、飲むうちにだんだん身体がだるくなって来て、眠気さえ覚えて来る。いつしか眠ってしまったようだった。
 身体の異変に気がついて見ると、ベッドに横になっていた。上に男の顔があった。恭一である。部屋には、淡いピンクの照明が照らされていた。恭一が、手をブラウスのボタンにかけている。
「何をするのよ。」
淑子が大声をあげた。
「いいじゃないか、ここまで来たんだから楽しくやろうぜ。」
恭一がニヤニヤ笑いながらくちづけをしようとする。
「騙したのね!」
淑子は、思い切り恭一の頬を叩いた。
「この野郎!」
今度は恭一が淑子の頬を平手で叩いた。
「何をするのよ!」
のしかかる恭一を、淑子が引っ掻いた。暴れるのでスカートがめくれる。
 淑子はベッドの脇にあった灰皿で思い切り恭一の頭を叩いた。恭一はう〜んと唸って倒れた。その間にハンドバッグを掴むと急いで駆け出した。

 その頃、雲の上では・・・・・
「見ろよ、ITだ何だと言っているけど、あんな調子だぜ。」
 腹立たしそうに言っているのは、昼食のときに新宿の神様からさんざん馬鹿にされていた根津さんである。
「世の中、特に男と女の問題は、コンピューターやメールなんかで心までは通じないんだ。あれはきっと処罰ものだよ。いい気味だ。」
 根津さんは、飲みながらしばらくブツクサと喋り続けていた。
            −続く−







赤い糸・白い糸−34−
赤い糸・白い糸−34−

 「今はITの時代だよ。我々、神道の世界もITを取り入れなくちゃ駄目なんだよ。」
 昼食時、東京は新宿から来た神様が、根津神社の神様に一人で話し掛けていた。
「いつまでも旧式のやり方では駄目なんだ。だから最初に明治さんが言っていたように結婚率が低いんだよ。口ではハッパをかけても、やり方について工夫が無い。こんなんじゃあ、いつまでたっても進歩がないのさ。」
 延々と続く話を聞いていた根津さんが、とうとう堪忍袋の緒を切らして言った。
「そうは言っても、結婚は人と人の心の結びつき、心の部分は変らないさ。」
「そんなもんじゃあないよ。新しい時代に対応した方法が必要なんだ。だから年寄りは駄目なんだ。」
 口論になりかけたとき就業のベルが鳴って、二人ともテーブルを離れて持ち場に戻った。
 その頃、地上では・・・・・

 永瀬淑子は27歳、新宿の会社に勤めるOLで、山梨から出て来て立川で一人マンション暮しをしていた。
 特に趣味は無く、平日の夜や休日にはパソコンで2年前から始めたブログをして楽しんでいた。ニックネームは「花子」、載せる記事は日記が主で、その日に会社であった人間関係のことなどを書いていた。
 最近、淑子のブログに一人の男からの書き込みが多くなった。ニックネームは「太郎」、プロフィールにはサラリーマン30歳とある。
 淑子も、書き込みに対してこまめに返事を書き、また「太郎」のブログも見に行った。
「太郎」の記事は、趣味の旅行のことが多い。その他にもかなり多趣味のようで、釣りに行ったとか、テニスをしているというようなことも書いてあった。
 やがて二人は、ブログを通じて毎日のようにお互いに書き込みをするようになった。そして他の人にわからないようにお互いのメール・アドレスを教え合った。メールを交換するようになって、「太郎」の本名は椎名恭一で、東京都内の商事会社に勤めるサラリーマンだと自己紹介をした。
          −続く−







赤い糸・白い糸−33−
赤い糸・白い糸−33−

 ある日、口をきかなかった父親が由佳の部屋のドアをノックして、部屋に入るなり言った。
「お前、何と言ったっけ、あの外人のことを本当に好きなのかね。」
「はい。」
「本当に駆け落ちしてでも結婚したいのか?」
「はい。」
「その覚悟はあるのか?」
「はい。」
「それなら仕方がないか・・・・・」
「お父さん、結婚していいの?」
「駆け落ちされるよりはなあ。」
「駆け落ちって、誰が言ったの?」
「文夫から聞いたよ。駆け落ちしても結婚する気だって。」
「そう、文夫が言ったのね。」
「母さんとも相談したんだけど、金髪の孫も可愛いかも知れないってね。」
「ありがとう、絶対に親孝行するわ。」
 由佳が、ハワイの教会でジョージと結婚したのは、それから半年後のことであった。
 その頃、雲の上では・・・・・

「これでキリストに英語で電話をしなくても済みそうだね。」
「そうだねえ、国際結婚って、いろいろ面倒なことが多いよねえ。言葉にしても細かい気持ちを伝えるのも大変だろうし、生活習慣も違うので、当人達もしばらくは苦労するだろうね。」
「でも、それは日本人同士だって同じさ。言葉は理解できても、気持ちまで伝わっている夫婦なんて少ないんじゃないかなあ。」
「そりゃあ、そうだね。うちだって女房が何を考えているのかわからないもの。」
 神様達は、妙に納得した気持ちになっていた。
          −続く−







赤い糸・白い糸−32−
赤い糸・白い糸−32−

 雲の上では、神様達が腕を組んで話をしていた。
「どうしたものかねえ。これは日本だけの問題じゃないよねえ。」
「う〜ん、向こうはキリスト教だろうから、キリストにでも聞いてみるかねえ。」
「ところであんたは英語を喋れるの?」
「いや、全く駄目だ。」
「困ったねえ。」
 神様達は、腕を組んで考え込んでいた。

 しばらく由佳と両親の口をきかない日々が続いた。
 その間も、ジョージとのメールのやり取りは続けた。一度、結婚の意志を交し合ってからのジョージのメールは情熱的な表現になっていた。反対をされると、由佳の気持ちは益々ジョージに傾いて行く。ジョージは、すっかりその気になっていた。両親に挨拶に行かなければというのだが、由佳は今はその時期でないと思う。今、ジョージを連れて行ったのでは火に油を注ぐようなものである。ジョージの前では笑顔を保ちつつ、父親とは口をきかない日が続いた。
 そんな由佳の悩みを、弟の文夫は敏感に感じていた。
「姉さん、ジョージとのこと、どうするつもりなのさ?」
ある日、文夫が由佳に聞いた。
「どうするって、父さんがあんな調子じゃどうしようもないわ。」
「でも結婚したいんだろう。」
「そりゃそうよ。もう約束しちゃったんだもの。」
「方法はふたつだな。」
「ふたつって何よ?」
「うん、駆け落ちするか、先に子供を作っちゃうことだな。」
「それって、あなた・・・・・」
「だからさ、駆け落ちは家出、子供はできちゃったことにすればいいんだよ。」
「そんな・・・・・」
「他に方法はある?」
「・・・・・」
「俺、金髪の兄貴がいてもいいんだ。それに姉さんがアメリカに行けば、俺もちょくちょく行けるしな。」
「・・・・・」
「まあ、考えてみるんだな。俺、何でも協力するぜ。」
「ありがとう。」
 随分大胆なことを言う弟だとは思ったが、協力者がいることで由佳は随分気が楽になっていた。
            −続く−







赤い糸・白い糸−31−

赤い糸・白い糸−31−

 ジョージは、アメリカから中学校の英語教師として岐阜の学校に赴任していた。背が高く、ハンサムで、ユーモアたっぷりの授業は生徒の間でも人気だった。同じ英語教師の池島由佳は、教育のことでわからないことがあったりすると、よくジョージに質問をした。
 そんなことから、いつしかジョージに好意を持つようになり、ジョージの方にもその気持ちは伝わっていた。生徒の手前、公然とデートをするのは差し控えたが、インターネットのメールのやり取りなどで自分の気持ちを伝えるようになっていた。
 ある日、由佳はジョージを諏訪湖にドライブに誘った。遠くなら生徒達に見られることもないし、日本を案内するという大義名分も成り立つからである。そのとき自分の気持ちを打ち明け、ジョージも結婚を前提に付き合うことを約束した。
 家に帰ると、両親に話したが、父親は激怒した。
「俺は、お前を外人にやるために大学まで出したんじゃない。」
「だって、私、彼のことを好きだし、彼だって好きだと言ってくれているのよ。」
「でも、いずれはアメリカに帰って行くんだろう。」
「それは・・・・・」
「孫の顔を見るにも、アメリカまで行かなくちゃならないのか?」
「・・・・・」
「そうだろう。そんなの許せると思うのか。」
 結局、父親は譲らなかった。母親も黙ったままである。その日、口をきかないまま寝床に就いた。母親も、言葉は同情的だったが、二人の結婚には反対だった。理由は父親と同じである。

 その頃、雲の上では・・・・・
             −続く−