人妻−25−
祥とまたしばらく逢えないと思うと、やりきれないような気持ちになる。仕事中も、ぼんやりと考えていることが多かった。 祥と逢って1か月ほどが過ぎたとき、洋子からメールが入った。社長が工場を視察するとき、秘書の洋子が同行するのだという。今までは、秘書室長が同行していたのだが、今回は特に頼んで自分が来ることになったとあった。社長も、彼女が私の部にいたことを考慮して了承したのであろう。 社長が来た。玄関で社長を出迎えると、後ろには洋子が立っている。休憩の後、工場を視察するときも、洋子は社長の後ろを随行していた。 社長がトイレに行ったとき、洋子が私に言った。 「後で工場長にお話したいことがあるのですが・・・」 「わかった、夕食会が終ったらホテルのバーで会うことにしよう。」 それだけ言うと、何もなかったような態度に戻った。 夜は、食事会を兼ねた宴席である。社長は、ご機嫌だった。工場の運営に特に問題は無かったし、翌日は、市役所や世話になっている会社や商工会議所などに挨拶をするだけである。本社でのハードな仕事に比べてリラックスしている様子だった。 この間、洋子や私の秘書は、控室で食事をしながら待機していた。8時に宴席が終わり、社長は自分の部屋に戻って行った。 私は、運転手に「自分は用事があって残るから、部長達を送ってくれ。僕は、タクシーで帰るから。」と言って帰した。 その足でホテルのバーに向かった。 洋子は、バーのカウンターに座っていた。 「お疲れさま。社長のお供は気を遣うだろう。」 「いいえ、部長、いえ工場長に会えるのが楽しみでした。」 「そうか、ところで話と言うのは?」 「私、結婚することにしました。」 「そうか、それはおめでとう。相手は、どんな人?」 「父の会社の人で、課長をしています。」 「ふ〜ん、君のような素敵な人をお嫁さんにするなんて、幸せな男だね。」 「お願いと言うのは、結婚式に来ていただきたいのですが。」 「いつのことだろう?」 「まだ決めていませんが、1年後くらいになると思います。」 「わかった。日取りが決まったら、なるべく早く教えてくれないか。」 「ありがとうございます。よろしくお願いします。」 洋子は、大きくお辞儀をした。 それからしばらく本社の様子などを聞いて、私は家路についた。 ―続く− |